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#だから僕は、ダークヒーローになった  作者: 木兎太郎
【第一部 #だから僕は】
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#019――便利屋2


 菅原から受け取った情報によると、待ち合わせの場所は、銀座のとある路地裏だった。

 着いてみると、人通りは一切ない。東京の下町感溢れる場所だ。

 集合時間は、二十二時とやけに遅い。ただ、この便利屋という商売では、珍しい話ではない。明るい時間が不都合である者も、顧客には大勢いるのだ。


(…来ないな。)

 ――影汰は腕時計を見た。相手は集合時間を、もう五分も過ぎている。


 なんとなく違和感のある依頼なので、来なきゃ来ないでいいとも考えていたが、来ないなら来ないで、ある程度不安もある。


 依頼内容は、とある物資の配達――物資の内容は不明――の護衛である。

 護衛依頼は、別段珍しい話ではない。但し、物資の配達の護衛ともなると、顧客側で時間が細かく設定されているはず。時間を守らないのは、正直あり得ない。


(…三十分以上待っても来ないなら、菅原さんに電話するか。)


 問題のある依頼の場合、菅原に許可さえ取れれば放棄することも可能だ。顧客側に問題があると判断された場合、キャンセル料も発生しない。


 やがて時刻は、二十二時二十五分を指した。

 丁度そのタイミングで、影汰の側に男が寄ってきた。


「――影狼カゲロウか?」

「はい。間違いありません。」


 【影狼】とは、影汰が便利屋として活動する為の偽名、またはコードネームである。

 男はパーカーにジーンズという、影汰に似た服装をしていた。フードを深くかぶっているせいで、詳細な容姿はわからない。運び屋に限っては、珍しい話ではないが。


 身長は185センチ以上あり、かなりでかい。肩幅もかなり広く、柔道選手のようなガタイをしている。戦闘の心得があることを想像するのは容易だ。

 右手には、ボストンバックを持っている。他に荷物を持っている様子はないので、恐らくはあれが「物資」だろう。


 そして、もちろん影汰も変装をしている。

 変装内容は、仮面にフード――という、圧倒的不審者感あふれるものだ。

 仮面に関しては、豪鬼に登録した際、菅原から贈られたものである。

 仮面にフード、一見目立つようにも思えるが、実はそうでもない。というのも、仮面にとある工夫が施されているからだ。


 根源には、あらゆる性質があり、とある覚醒者は物質にある一定の効果を付与することも可能である。

 今回影汰の仮面に施されているのは、精神操作系統の認識疎外だ。つまり、この仮面を装着しているだけで、影汰の詳細な容姿を認識することが困難になる。


 男が影汰を直ぐに見つけることが出来たのは、待ち合わせ場所に影汰が必ずいるという保証の元、更に認識し辛い相手がいると知っていたからである。

 集合時間といったある程度のルールがなければ、影汰を視認することすら困難であることは間違いない。


 但し、一度認識してしまえばその後は簡単に見つけることが出来るので、残念ながら欠点はある。その為、仮面は一か月に一度変更する義務があり、その為の資金をギルドへと収める必要があるのだ。

 影汰の装着する仮面は、黒い下地に、やけに血色のいい口の絵が描かれているデザインだ。口も口裂け女ほどに大きく、それが豪快に笑みを浮かべている。

 認識疎外がかかっているとはいえ、不気味で目立つデザインをしていた。


「【ホース】さんで間違いありませんか?」――影汰は相手の様子を窺う。

「あぁ、その通りだ。」――ホースは影汰の方を向いて、小さく頷いた。

「かなり遅れましたね。何かあったんですか?」

 ――影汰は、率直な疑問をぶつけた。

「あぁ…すまない、道中で問題があってな。」

 ――確かに男の呼吸は、少しだけ荒い。

「問題…ですか。大丈夫そうなんですか?」

 ――影汰は思わぬ事態に、少し驚いた。

「あぁ、取り合えずそっちの問題は解決済みだ。」

 

 影汰は冷静に男を観察しながら、脳内で現状を整理していた。


(う~ん、なんとなく信用しないほうがいい気がする。取り合えず依頼自体は続行するとしても、警戒はしておいた方がよさそうだ。)――以上の結論が、影汰の脳内にて弾き出されていた。


 そんな影汰をよそに、ホースは周囲を確認すると再度口を開いた。


「早速移動しよう。【ヒーロー】に見つかれば、厄介なことになる。」


 影汰たちにとって、ヒーローは天敵だ。影汰自身はグレーゾーンでも、依頼主がダークゾーンに足を踏み入れている可能性が高い。


 今回の場合、男の様子を見るに彼は、おそらくそちら側の住民だろう。

 その場合、ヒーローの撃退も影汰の仕事に含まれる。

 依頼主に降りかかる、全ての危険の排除が護衛依頼だからだ。

 

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