#012――墓石
一人の男が、崩壊の跡地を歩いていた。
この場所に来た者達が、この場所に元々あった施設を想像することは困難だろう。
しかし、彼は既にこの場所にあった施設を知っていた。
だからこそ、この惨状を見て、驚愕している。
「おいおい…こいつは凄いな…何があったっていうんだ?」
まず彼の目に入ったのは、大きなクレーターだった。
まるで月面かと見まがうほどの大きなクレーターである。
そこには、施設の面影など一切ない。
男の知識によると、ここは根源を覚醒させるメカニズムを解明する為の、研究所であったはずだった。裏では危険な人身売買取引に及んでいるという情報も掴んではいたが、今の時代そうした場所は少なくもない。
男は未だ瓦礫の残るクレーターの中を、中心へ向け慎重に下り始めた。
それぞれの瓦礫は、元々建物であった名残をほとんど残しておらず、圧倒的な衝撃がこの場所に放出されたのだと理解できる。
「…この場所的に考えて、大規模な爆発物を想像するのは困難だ。いや、他国から爆撃されたならまだ解るが…恐らくは根源の覚醒が原因だろう。ただ…ここまでの破壊…一体どんな根源が覚醒すれば、こんなことになるんだ。ちょっと想像できないな。」
そんな考えを巡らしつつ、やがて男は、クレーターの中心にまでたどり着いた。
「――こいつは…墓か?」
男はクレーターの中心部に、不自然な瓦礫が並んでいることに気付いた。
他の場所とは違い、少しだけ周囲が整えられている。人の手が加えらえているのは、間違いないだろう。
第一印象でそれを墓だと感じたのは、男の直感でしかない。本能的にそうした思いを、この簡素な瓦礫の積み上げから感じ取ったのかもしれない。
よくみれば、墓石には薄く文字が刻まれている。
本当に薄く、立ったままでは読むことはできなかった。
――男は、一度屈んだ。
そこには、「4902777026107」と表記されている。
「…こいつは、恐らく商品コード…だよな。それに、この番号…。」
男はポケットから携帯を取り出し、メモアプリを起動した。
そこには、墓石と全く同じ数字の配列が並んでいる。
「…おいおい。」――墓石と携帯を交互に確認するように見ると、男は項垂れた。
そして、その場所で数分間休むと、再び動き始めた。
「目的は達成できなかったが、新しい目的ができたな。これを作った人物を追おう。」
墓石へと向き直り、数分間手を合わせた。
それが終わると直ぐに身を翻し、男は夕暮れの中に消えていった。




