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オークさんの料理二種:事後


「オーク肉で精のつく料理ねぇ……」

「精がつくんじゃなくて、精気を得られる料理、ね」


  獣人の大男に訂正を入れる。マリーさんに精がついても意味はない。精をつけるなら男の方だけど、それはマリーさんが食べたい料理ではない。

  精のつく料理ってもマリーさんは昔色々調べていたことがある。精がつくってぐらいだから、精気も得られるんじゃないかと単純に考えていたのだ。

  ミノタウルスのもも肉を食えば精がつくと聞けば、ミノタウルスを狩ってその腿を斧でぶった切ってやった。レバーを食べたら精がつくと聞けば、三日三晩レバーだけをひたすら食べた。飢えて死にそうになった。アスパラがいいと聞けば農家さんに分けてもらった。生だと美味しくなかった。食べる用と使う用の両方をもらった。

  精気と精のつくものとはあまり関係がなかった。それもそのはずで、人間がそれを食べると精がつくのだから、マリーさんにとっては材料をそのまま食べているというか、家畜の飼料を食べてるようなイメージかな。美味しいわけもない。

  まぁそんな生活をしていたものだから、もう何年も旅暮らしをしているし、斧を操る力も自然と身についた。街中ならともかく、そこら中に魔物がはびこる世の中だ。身を守る術はあったほうがいいのだ。


「だからって斧はどうなんだよ……いや、武器としてはいいんだけど、サキュバスのイメージって【魅了(チャーム)】とかそういう魔法を使うんじゃないのかよ……」


  なんだか大男さんが変な方向に落ち込んでる。


「うーん、使えるけど、マリーさん的には大斧で首をすぱーんっ!  ってやったほうが気持ちいいかなって」

「悪魔かよ……」

「悪魔なんだけどね」


  サキュバスは悪魔種のサキュバス目に属する魔族だ。だから広義の意味で言えば悪魔なのである。

  魔族といってもちょっとツノが生えてたり翼があったりする程度で、人属とそう変わらないのだけど、その中でもサキュバスは変わり者だったりする。精気を得られないと生きられないなんて、普通に考えれば相当変だよね。


「ってバカなこと言ってたらトーヤがいつの間にかいなくなってる!?」

「さりげなく俺のことバカにするのをやめてくれねぇかな……トーヤならさっさとオークの解体しに行ったぞ」


  置いていかれたことにプンスコしつつ、オークの方を振り返ってみる。

  トーヤの解体の腕がいいのか、すでに上半身は解体が終わっていた。肩肉、ロースなどの部位に切られ、手際も鮮やかだ。


「トーヤったら、手が早いのね」

「……なんでだろうか、褒められた気がしないな……」


  そんなに変なことを言っただろうか。ならもっとサキュバスらしく……。


「トーヤったらそうろ」

「お前もう黙っててくれない!?」


  むぅ。なぜか怒られてしまった。

 

「怒られてしまいましたよ。……えっと、大男さん」

「大男さんて……ってそう言えば名前名乗ってなかったか。アーノルドだ。ここにはたまに来るからよろしく頼むわ」

「マリーさんはマリーさんよ。こちらこそよろしくね」


  互いに自己紹介をし、握手を交わす。冒険者では馴染み深い挨拶だ。


「あー、盛り上がってるとこ悪いんだけどさ」


  トーヤがこちらに声をかける。


「アーノルド、そろそろこの場にはいないほうがいい。断言する。居たら後悔するぞ」

「おいおい何言ってんだよ!  こんな上等なオーク、せっかく狩ったってのによ!  解体ぐらい見てったってバチが当たることはねぇだろうがよぉ!」


  アーノルドはそう高らかに笑っている。それを見たトーヤは盛大にため息をついていた。

  まぁ確かにこのオークは立派だ。通常2mぐらいがオークの平均的な大きさだが、この個体は3m近くありそうに見える。

  こんな立派な個体を狩れるなんてアーノルドは結構できるやつなのかと思えばそうでもない。

  オークの足には執拗に傷が付いており、熟練の冒険者なら罠にはめて殺したであろうことは明白だ。


「オークを罠にハメハメして狩ったぐらいで威張るもんじゃないですよ。まぁ、気分が良くなるのは否定しないけどね」

「言葉の節々にネタを仕込んで来るのな……」


  別にマリーさんは変なことを言ったつもりはないぞ。


「まぁ、後悔しても知らないからな」


  トーヤはもう知らんとオークの方へと向き直ると、オークの下半身を解体し始めた。そう、下半身を解体しはじめたのだ!


「……マリーさん?  俺ちょっと嫌な予感してきたから席外すわ」

「奇遇ですね。マリーさんはいい予感がしてきたので一緒に見学しましょう」

「奇遇でもなんでもねぇ!」


  何てことを言ってると、トーヤが解体用のナイフを振り下ろした。おち◯ち◯がボロンと落ちた。

  アーノルドは少し内股になり自分のものをキュッと抑えている。

  マリーさんにはその男の気持ちはわからないので、理解をしようとペニパンを穿いて同じポーズをとってみた。ナイフが飛んできたので急いで脱いだ。


「だから後悔するって言っただろ……」


  アーノルドは股間を抑えながら頷いていた。

  私は頬を掠めたナイフの方を見ながら頷いた。

  下半身も各部位に分けられ、使いきれない分は薫製肉やミンチに加工していく。さすがに見ているだけというわけにもいかず、できる作業は手伝った。


「トーヤ、マリーさんは何をすればいい?」

「そうだな……そしたら、腸詰の方をしてもらおうかな」


  綺麗にした腸の中にミンチ肉を詰めてソーセージを作っていく作業を任された。やるからには精一杯やらないと。

  専用の機械でミンチ肉を腸へと挿れる。


(なか)にだしちゃらめぇぇぇぇ」

「遊んでるなら帰れよ?」

「気分を盛り上げようかと……」


  力一杯殴られた。頭にたんこぶができてしまう。

  その後は真面目に作業をした。そうしないとトーヤに怒られるし……。

  作業も終わりに近づき、アーノルドはもう終わってしまったのか水を飲み休憩していた。


「あー、つかれたー」

「お疲れさん、これトーヤからな」

「どもどもー」


  アーノルドからカップを受け取り、水をごくごくごっくんと飲んでいく。

  喉が潤ってきたところに、トーヤが皿を持ってやってきた。


「お疲れさん。これ、ご褒美な」


  皿の上には薄切りにした肉のようなものが乗っている。普通の肉のような血が通っていたような赤色ではなくて、なんというか、ほんのりとピンク色をしている。あと存在感がなんか違う。明らかに普通の肉じゃないと皿の上から主張してきている。

  トーヤの顔を見ると、なんだか疲れたような顔をしていた。この皿のものを作るのに一体何があったというのか。


「おい、トーヤ、一体こりゃあなんなんだよ」

「これは……はぁ……オークの睾丸」


  睾丸!?  それってつまり。


「オークのキンタマ!?」

「もうちょっと濁して言えや!  いや、濁し用もねぇか……」

「濁すのは女の子の方だってねぇ」

「やかましいわ!」


  いいからさっさと食えと言われ、私は喜んでフォークを伸ばし肉を口へと運ぶ。

  ちなみに、横には同じようにフォークを手にしたアーノルドがいたがついぞ肉には手を出さなかった。トーヤも、アーノルドの肩に手を置き首を横に振っていた。

  まぁいいやと肉を頬張り咀嚼する。


  んん!?

  プリプリだ!  お肉がプリプリとしている!

  肉は直接精がつくと聞いて、いろいろな部位を食べたことはあるけれど、キンタマは食べたことはなかった。食べたことがないというのは買う機会がなかったということで、私が躊躇って買っていなかったわけじゃない。私が躊躇うわけがない。

  そんなどこの部位とも違うプリプリの感触が私を魅了してやまないのだ。強いて言うならレバーに近いだろうか。内臓は流通が少ないからあまり食べたことはないけれど。

  もちろん精気もモリモリと摂取されていくのがわかる。なんというか、直接的だからか、今までの料理の中で1番精気を得られている気がする。


「いや、生のスライスだからそれを料理として扱われるとなんか複雑……」


  トーヤがなんでか落ち込んでいるけれど、そんなことは気にしていられるか。私は皿の上に並べられた肉を次々と口へと運び皿を空にした。

  これぞ食事だという満足感が身体全体に溢れるようだ。


「はぁ……おち◯ち◯おいしい……」

「全く嬉しくねぇなそのセリフ……」

「ほんとだな……少なくとも食事の席で言うことじゃねぇな……」


  なんでか男性陣がげんなりとしている。これを言うと男性は悦んでいたけれど何がダメだったんだろう。

  腕を組んでウンウンと考えていると、トーヤが次の皿を持ってきた。


「俺は食わねぇけどよ、次は何を出してきたんだよ……。いや、結構うまそう……見た目は普通だな……」


  皿の上には肉炒めが乗っている。味付けが濃い目ですごくいい匂いをしている。

  アーノルドはその匂いにつられて食欲が出てきたのか、いそいそとフォークを手に取った。


「……だ」

「え?」

「きんつる。竿、というか……ち◯こだ……」


  アーノルドが固まった。そしてそっとフォークを置いた。

  私はそんな彼らを尻目に (いやらしい意味ではない)、肉をフォークにぶっ刺した。男性陣からひぃっと悲鳴が聞こえた気がする。

  濃い色のタレが絡んだお肉は見るからに美味しそうだ。タレが滴れているのも食欲を誘ってくる。

  そしてそのお肉を口いっぱいに一気に頬張る。


「んん!?  これは、……まるでそそり立つような、立派なものをお持ちですね……」

「なんの評価!?  味!?  味なの!?」


  モツと同じようなプニプニとした弾力の中に、コリコリとした食感の楽しさもある。食べていて楽しいのだ。口の中がとっても楽しいぞ!

  横を見ればトーヤもお肉を食べていた。あれだけ嫌そうだったのに。


「あー、やっぱり豚のと同じ感じか……肉自体は対して味がないけど、濃いめのタレで味つけりゃあ食感と相まってまぁ、……美味いんだよなぁ……」


  美味しいって言ってるのになんでか落ち込んでるトーヤ。

  ここはこの、マリーさんが元気付けてあげなければ!


「トーヤ!  初めてのおちん◯ん、美味しかったよ!  童貞卒業だね!」

「言い方を改めて出直してこい」


  解せぬ。

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