歓迎会
「変な事言って、せっかくの才能のがすなよ」
「了解! ごはんにエール!」
「はあ、わかったよ。しかしね」
「いろいろ仕込めるからね。若いと」
「で、ゆくゆくはうちに引き込む訳?」
「まあな」
「では、リフくんの初ダンジョン探索生還を祝して、乾杯!」
僕は果実ジュースの入ったコップを、他のメンバーはそれぞれの飲み物が入ったコップを打ちつけあい乾杯した。
ここは、街中。ダンジョン探索者御用達の宿。その一階の食堂。夕方からは酒も出すため、僕の歓迎会の場所に選ばれた。で、寺院の司祭に外出許可をもらってここに来たのだ。
「しかし、助かる。僧侶が引き抜かれて困っていたんだ」
こう言ってくれたのは、リーダーのキースさん。まだ若いものの、戦士であり、また野伏としても優秀だ。イケメンなのが玉に瑕だけどね。
「そうね。ケイン、そんなに出世したかったのかなあ。だけど、優秀な盾役が加わってくれたから、いいわ。あ、おねえさん、エールお代わり」
こう喚くのは赤い髪のカレンさん。彼女は凄い。戦士に野伏、魔道士として高い技術を持つ。普通、ふたつでも習得するのは大変なのに…
「もう、カレン、あまりふざけないでね。世話するのは私なんだから」
ふわふわした感じの青い髪のこの人はクリアさん。魔力が強く魔力量もあるので、魔道士と僧侶の職能を持つ。
この三人は冒険者ギルドに、パーティー登録をしている。冒険者ギルドの会員は、色々な特典と義務を持つ。その中に、欠けたメンバーの斡旋なんかがある。
実は僕はギルドの会員ではない。寺院からの派遣社員と言ったところだ。資金を集める為、また、治癒魔法の実習も兼ねている。もちろん、それだけではなく、荒事に対する耐性を作るとか、社会勉強とかの理由もある。寺院にこもった頭でっかちの僧侶はいらねえ、と言うのがアマテラス教の教義だ。で、僕とハンスは彼らと面通ししたのだ。盾役が欲しいという彼らからしたら、魔力も体力もあり、武力も優れたハンスが選ばれると思ったのだが……
「ほら、たくさん食べないと大きくなれないよ」
「そうですね。でもカレン、たくさん頼みすぎですよ」
「いいじゃん、ぼくもたべるから。あ、エールお代わり」
「はあ、ばくばく食べて、どんどん呑んで。あたしがどれだけ食事に気をつけているかわかりますか? 水飲んでも太るのに」
「リフくん、彼女いる? と言っても無理か。僧侶は戒律厳しいんでしょ」
「アマテラス教だからそんなに厳しくないでしょ。でも、他神様によっては厳しいわよ」
「はあ、リフくんごめん、うちのガーガー鳥たちは、悪気がないから話しにつきあってくれ」
「なによ、キース、私たちの気遣いがわからないの? あ、エールお代わり」
「そうですよ、キースさん。私たちも馬鹿じゃありませんよ」
「はは、悪いね」
それからも、なんだかんだいいながら、楽しい時間を過ごした。しかし、僕も心のどこかに引っかかったいたのだろう。つい、口から出た。
「僕って、本当に必要ですか? 盾役なら、戦士系がいいんじゃないですか。例えばハンスとか。武術も優秀ですし、体力も魔力もある。彼のほうがふさわしいのでは」
三人は顔を見合わせると、こちらを向いて笑った。
「まず、リフくんは盾がつかえるし、治癒魔法も使える。俺達に必要なのは防御だから、条件は十分だ。更に攻撃手段に関しては、俺達は十分だ。むしろ、下手に攻撃されると連携がうまくいかなくなるからこれでいいんだ」
「そうね。あと、こちらに合わせてくれているからね。後半、ぼくたちに必死で付いてきたでしょ。それが必要だもの。あ、エールお代わり」
「カレン、飲みすぎ。わたしもキースと同じね。あと、リフくんはいろいろ丁寧にしているからのびると思うよ。わたしはそう思うね」
「だから、リフくん。心配しないで、俺達のパーティーを助けて欲しい。頼む」
「いろいろ厳しくおしえるよ。あ、エールお代わり」
「カレンのみすぎ! でも、無理な事はさせないから、大丈夫よ」
……なんか、必死な感じた。でも、悪くはなさそうだ。まあ、しばらく一緒に探索するのもいいだろう。
「……よろしくお願いします」
僕は明るい声でそう言ったのだ。
“うん、リフにとっても、彼らにとっても、プラスになるから、その判断は正しいよ。がんばれ~”
……アマテラス様……