初ダンジョン探索
リフくんは普通の僧侶です。
ここは、街から少し離れたダンジョン。一層程度のまだ若いダンジョンである。
ダンジョンとは、魔物の最終段階であり、魔物を生み出す存在である。基本的に地下にできる事が多く、また、年をとれば深く、強力な魔物が生まれてくる。そのため、ダンジョンは早期殲滅が推奨されている。
そのダンジョンの中で、僕ら四人のパーティーは探索しているのだ。
「はっ!」
戦士は、コボルトの攻撃を盾で受け止めた。そして剣を素早く繰り出してコボルトの頭を貫く。
「うあ!」
その隣で、僕はコボルトの攻撃を盾で受け止める。しかし、戦士みたいに反撃するところまではいかない。
コボルトは、犬みたいな顔をした人型の魔物だ。そして、魔物の特徴のコアが後頭部に付いている。赤黒いコアは、魔石を内包しており、傷がないと重宝される。
「ファイヤー」
炎の弾がコボルトに命中し、頭が吹き飛んだ。
「あ、ごめん。オーバーキルした!」
「だめだよ。あれじゃ、魔石も粉々だよ」
二人の女の子が黄色い声を張り上げる。一人は金褐色と言うには赤い髪にスレンダーな痩身の女の子。皮鎧に身を包んだ魔法戦士。
もう一人は青い髪の少しふくよかな少女。厚いマントを羽織った魔道士兼僧侶である。賢者とか司祭とかの職業名で呼ばれる人だ。
つまり、前衛が戦士キースと僧侶の僕。後衛が魔法戦士のカレンと司祭のクリア。僕らのパーティーはこんな感じだ。しかし、戦力的にはともかく、探索者、レンジャーとかいう役割がいない。のだが。
更にコボルトが二匹乱入。カインと僕は盾を構え、コボルトの攻撃を受け止める。ダンジョン内の通路は狭く、防御は盾で受けるか、武器で逸らす事になる。そして、後衛のクリアが攻撃魔法を唱えた。
「ファイヤーバラージ」
「ち、ちょっと!」
多数の炎弾がコボルトを襲い、焼き尽くした。もちろん、オーバーキル。コボルト達は灰と化した。
「……おまえら、もう少し自重しろ。いくら新人が入ってきたからって、はしゃぎすぎだ」
「……ごめんなさい」
女の子二人は謝る。流石にリーダーしているよな。キースさん。
「ま、魔力はまだもつか?」
「まだ余裕だよ」
「あたしも」
「……すいません、僕のほうが少ないです」
僕は、今日初めてのダンジョン探索。色々、治癒魔法や補助魔法を使い、体力や魔力の不足を感じた。それに対して他の三人。なんだかんだいいながらダンジョン経験者、ちゃんとペース配分を確実にしている。
「よし、じゃあ、地上まで戻ろう。隊列は現状のまま。リフくんは、体力が保たないようなら後衛に下がってくれ」
「いえ、大丈夫です。まだやれます」
そう、このくらいでへたばる訳にはいかない。
寺院の収入には、信者の寄進の他、寺院に隣接する畑の作物の収穫と、司祭の治療行為、僧侶の教育指導の代金やダンジョン探索による魔物討伐や魔石の確保による収入がある。つまり稼げば寺院の為になるのだ。
それに、たくさん稼げば立場も良くなり、試しも受けやすくなり、偉くなって、個室がもらえたりするのだ。うん。自分の為だよ。
“チートを使えばすぐじゃない”
笑い声でアマテラス様が神託を授けてきた。
「悪いけど、あまり目立ちたくないんですよ」
「なにぶつくさ言ってるの?」
「あ、いえ」
僕は他のメンバーをごまかしながら地上を目指すのであった。