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僕の一日

 ある地方都市の寺院。その中に僕の部屋がある。と、言っても何人かで共同生活をしている大部屋だが。そこで僕は目覚めた。


 朝日はまだ見えていない。そのなかで、僕は寝間着から僧服に着替えた。その後、寝具をたたんでなおす。その間に部屋の中で寝ていた僧長が起きて僕に声をかける。


「おはよう、リフ」


「おはようございます。僧長」


 僕は僧長に朝の挨拶をする。普通は僕より早く起きる人なのに遅い。やはり、僧長も疲れているのだろう。若いダンジョンとはいえ、昨日一日中潜っていたのだから。


 僧長の号令の下、僕ら4人(ダンジョンに潜っている2人を除く)は、寺院の清掃と食事の用意をはじめる。


 食事の用意が終わると、司祭様がやってきた。司祭様はこの寺院の責任者だ。その為、食事の時は顔をだす。朝の講話と伝達事項で十五分くらい話し、そのあと皆でパンとスープと魚の燻製を食べる。


 食事が終わると、寺院に隣接した畑を耕し、昼からは司祭様に読み書きとアマテラス教の教義、身体の構造、治癒魔法の勉強、体術、棒術、盾術などの訓練を行う。


 そして寺院のみんなが揃って夕食となる。


 夕食の講話のあと、司祭様は僧長に話しかけた。


「君は、そろそろ副司祭の試しを受けてみないか?」


「司祭さま、私は未だ修業中の身。まだ試しは早いかと」


「うむ、本来ならばな」


 司祭様は笑う。


「だが、北の城塞都市でもわがアマテラス教の寺院を作るそうだ。そちらに人を送らなければならない」


「北の……ですか? しかし、あちらに行く者はすでに決まっていると聞きましたが」


「北のほうにもさらに若いダンジョンが生まれたそうだ。そのため、ここからも追加で人員を送ることになった」


「そうですか……しかし、私の試しは関係がないと思いますが」


「いや、比較的時間がある今のうちに、試しを受けておきなさい。でないと、この先試しを受ける時間がない。向こうはかなり忙しい事になりそうだからな」


「はあ」


「なので、リフとハンスにはダンジョンに入ってもらう」


「司祭様」


 え? 僕もハンスもまだ14だよ。あと一年はあると思っていたのに。


「リフとハンスですか。リフは治癒も体術もそつなくこなしますし、ハンスは体力も魔力もありますからね。行けますな」


 僧長~


「まあ、そう言う事でな。悪いが、リフ、ハンス、頼んだぞ」


「はい!」


 ハンスは元気よく返事した。まあ、こいつは僧兵から聖騎士になるのを希望している。良いことなんだよな。


「はい」


「リフも、迷ったり、腹壊したりしないようにな。おまえは、悪いところがないんだから」


「僧長~」


 皆が笑った。


 そして夜の自由時間、と言ってもたいしてする事もない。だから、魔物図鑑とか、魔法大全とか読みふけるだけだ。


 ハンスは、棒を振り回しているはずだ。


 まあ、ダンジョンに行くとしても今すぐというわけでもないし、のんびりやろう。


“ジャジャーン! リフくん!、お待ちかねの神託の時間だよ!”


 僕の頭の中にだけ響く声、アマテラス神の神託、まあ、念話だ。


「はあ、アマテラス様、いったいなんですか?」


 僕はアマテラス様に答える為、小さな声でぶつぶつ言う。思っただけでも伝わるらしいが、僕のほうがあまり慣れない。


“ごめんね~。早速わるいけど、その都市の近くのダンジョン、どれかひとつ潰してくれない”


 ……むちゃをいうな……


「あの、僕、今度ダンジョンにはいれるようになったばかりの僧兵ですよ。むちゃ言わないで下さい」


“え~ そのためのチートでしょう? 君の「力」を使えばダンジョンのひとつやふたつ”


「いつも使える訳ではないし、壊したり、殺したりとかには向かないでしょう」


“まあ、そうだけどね”


 ここで彼女は真面目な声に変わった。


“このままでは、この王国はダンジョンの対応に対処できなくなるの。その分岐点がこのひと月。それを過ぎると、十年以内にダンジョンが拡大し、王国に取って変わる。人類の生存圏は大幅に後退し、半分以下になるわ。その回復には百年単位の時間が必要よ”


「わかってますよ、アマテラス様。ま、できる範囲でやりますよ」


さあ、明日も早い。


 就寝の時刻を知らせる鐘が鳴った。僕は寝具に入り、眠りにつく。


 こうして、僕のいつもの一日が終わった。



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