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第四章 〇〇になった〇〇〇

 半魚人忍者が放った巨大泥玉に当たって、アマゾン川に沈んだオレは、音速で水面の上を走っていた慣性が残っているせいで、ものすごい速さで水中を転がりながら、川底の泥を巻き上げる。


 その状況でオレは、なんとか水面に上がろうともがくものの、半魚人忍者の泥がまとわりついて、思うように身体を動かせない。


 そんな中で目をこらすと、川底から巻き上げた泥煙の向こうに、高速で泳ぎながら自分に近付いて来る影があるのが、うっすらと見える。


 魚のようなヒレが、身体のあちこちから突き出しているその影は、間違いなく半魚人忍者だ。


 そいつが近付くのをなんとか防ごうと、オレは川底を転がりながら、手に持った鎖ドクロを振ろうとするけれど、泥がまとわりついている上に水中なので、ぜんぜん勢いがつかず全く攻撃にならない。


 そんなオレに対して、半魚人忍者は、水中でさらに巨大泥玉を生成して、それを放ち、川底を転がるオレは避ける事もできずに、重ねてそれをくらう。


 このまま巨大泥玉をくらい続ければ、オレは完全に身動きが取れなくなって、この世界を救う事も、自分のチ○コを取り戻す事もできなくなる。


 それでオレは、まとわりつく泥を振りほどこうと、川底を転がりながら、ひたすらもがく。


 ところが、そんなオレの身体に、巨大なカギ爪が突き刺さって、それがあばら骨の間に食い込んだので、オレは激痛のあまり、水中で貴重な酸素を吐き出す。


「ぐごがが……ごぼごぼ……ぐがあ!」


 オレは、とっさに手で口をふさぐが、その時に嫌な考えが頭をよぎる。


 ひょっとして、自分から酸素を吐き出して窒息死した場合は、自分で自分を殺した事になるのだろうか?


 そうだとすると、オレは、このまま死ねば、自分に備わる忍法『死骨支配の術』によって、自分自身が鎖ドクロに取り込まれてしまって、身体が消滅してしまう。


 そうなったら全てが終わるので、オレは痛みをこらえながら、自分の身体に突き刺さったカギ爪を、必死に抜こうとするが、それはものすごい力で引っ張られ、ますます身体に食い込んでいく。


 けれどオレは、その時にふと、なにかが変だという事に気が付く。


 なぜなら、そのカギ爪は、オレの身体を、半魚人忍者とは反対方向へ引っ張っているからだ。


 そう気が付いたとたんに、オレの身体は水しぶきを上げて水面の上に引っ張り上げられ、それと同時に身体にまとわりついていた泥もはがれて飛び散る。


 それを見てアオ先輩は、水面を音速で走りながら、極太の釣り竿でカギ爪を引っ張ったまま叫ぶ。


「ユキ! お前は、巨大泥玉をくらう前に、何発かの『火炎竜巻』を放っただろう? それが、すでに半魚人忍者にダメージを与えていて、その分の力が、お前の身体に溜まっている! だから、鎖ドクロを『氷』に切り替えて、この付近一帯を凍らせるように念じながら、それを振るんだ!」


 それを聞いて、オレは一瞬で理解する。


 アオ先輩が言っているのは、アクションゲームにたとえれば、ゲージ技にあたるものだ。


 つまり、どうやらオレは、敵にダメージを与える事で、自分の身体に力が溜まっていって、それが一定以上になれば、広範囲に影響する忍術を発動できるようだ。


 自分を追って水面から飛び出した半魚人忍者の姿を確認しながら、オレは、アオ先輩の言ったとおりに、鎖ドクロを切り替えて、念じながらそれを振る。


 すると、上空で発生した冷気が猛吹雪となり、アオ先輩のカギ爪に引っ張られているオレの周辺の水面が一瞬で凍る。


 それで、水面を飛び出していた半魚人忍者は、水中に戻る事ができず、凍った水面の上を、あわててジャングルの方へ走るが、オレがそれを逃がす訳がない。


 まだ吹雪が残る中で、オレは、鎖ドクロを『炎』に切り替えながら振って、自分の身体に突き刺さったカギ爪から伸びるワイヤーを切断すると、凍った水面に降りて音速でそこを走る。


 そしてオレは、鎖ドクロを『雷』に切り替えてから、前後左右に連続で振って、攻撃範囲と威力を最大にしながら半魚人忍者を追い、そいつが攻撃範囲に入ると同時に、それをたたき込む。


「死ねえええええええええええええええ!」


 水棲生物である半魚人忍者は『雷』属性の鎖ドクロによって、濡れた身体をしびれさせ、そのまま死ぬまで連続でその攻撃をくらい続ける。


「グエエエエエエエエエエエエエエエエ!」


 やがて、半魚人忍者の全身の肉が黒焦げになってその灰が飛び散り、残った骨の頭の部分が、五つ目のドクロとしてオレの鎖ドクロに取り込まれて、それ以外の骨は粉々に砕けて消滅する。


 それからオレは、吹雪がやんで、普通の水面に戻ったアマゾン川の上を音速で走りながら、胸に刺さった巨大なカギ爪を引き抜くと、それをアオ先輩に向かって投げ、口から血を吐きながら先輩に頼む。


「先輩! ゴボッ……すぐにオレを殺してくれ! ……この傷はかなり深刻……」


 その言葉が終わらないうちに、アオ先輩に首を切断されて、オレの巨乳忍者の身体は水しぶきを上げて水面を転がって消滅し、すぐに新しい無傷の身体が、忍法『その場復活の術』で再生される。


 アオ先輩が、その新しい身体の横を並んで走りながら、風を切る音に負けないように大声を出す。


「ユキ! 今回は、ぼくがいて助かっただろう?」


「……オレは、先輩のために、自分には関係ないこの世界を救うのを手伝ってるんだから、礼など言わないぞ! それより、次からは、もっとやさしく助けてくれよ! 戦いのたびに、こんな痛い思いをするのは、もううんざりだよ!」


 しかし、アオ先輩は、全く悪びれる様子がない。


「すまん、すまん! その巨乳忍者の姿を見ていると、その中身が別の世界の住人だという事を、つい忘れてしまって…………」


 そう言いながら、先輩は何かを思い付く。


「そうだ、ユキ! お前も、海兵隊忍者のストーム大佐と、半魚人忍者の二人を倒したんだから、多少はお金が貯まっただろう? 今すぐ異世界商人を呼んでやるから、回復薬を買っておけ!」


 先輩は、それから、さらに説明を続ける。


「回復薬を使えば、お前は、いちいちぼくに殺されなくても、自分で傷を治せて一瞬で痛みも消えるから、そんなに苦しまなくてすむ! もちろん、さすがに手足を切断されたりなんかしたら、回復薬では復元できないから、死んで身体を再生するしかないが……」


 その言葉にオレは驚く。


「え? オレは、あいつらから、お金なんて取ってないぞ! それにオレたちは、爆発して粉々になった地球の破片の上を、三万倍に加速した状態で、さらに音速で走っているのに、どうやって商人を呼ぶんだよ!」


 アオ先輩は、それを聞いて笑う。


「お前の巨乳忍者の身体には、すでに忍法『お金吸収の術』がかけられている! だから、倒した相手が持っていたお金は、何もしなくてもお前の財布の中に入っているんだ! あと、異世界商人は、あらゆる世界から独立した異次元の存在だから、どんな状況の、どんな場所にでも、呼んだ瞬間に来る!」


 その先輩の言葉が終わると同時に、オレと先輩を含めた、この世界の全てから色が消え、時間が完全に停止して、あらゆるものの動きが止まる。


 そして気が付くと、いつの間にかオレの目の前に、大きな風呂敷包みを背負った、着物姿の少女が出現していて、くせの強い短い髪で、メガネをかけたその少女にだけ、色が付いている。


 その少女は、空中を漂いながらオレに近寄ると、口を動かさないのに、その声が周囲に響く。


「あんた、身体はコハクだけど、中身はこの世界の住人じゃないわね」


 それから少女は、自分の名前がヒスイ(翡翠)で、年令は十四才だと自己紹介してから、冷めた目でオレを見る。


「あんた、アオに心を入れ替えられて、コハクの身体に入ったみたいだけど、この世界は、あと一秒ほどで滅亡するかもしれないのよ。それは、忍術で三万倍に加速した体感時間でも、せいぜいあと六時間ほどだわ。さっさとアオに、元に戻してもらわないと、この世界といっしょに消滅するわよ」


 すると、時間が止まって口を動かす事もできない状態なのに、自分が話そうとした事が、巨乳忍者の声で周りに響く。


「オレだって、すぐにでも元の世界の自分の身体に戻りたいよ! でも、アオ先輩が戻してくれないから、オレは、南極にある『時間逆転装置』を動かすのを手伝うしかないんだ! それを動かせば、この世界の、爆発した地球が元に戻るのと同時に、オレとコハクの心も、入れ替わる前の状態に戻るからな!」


「ふうん。あんた、アオに完全にハメられたのね。…………まあ、私には関係ないから、いいわ……。そんな事より、あんたがいくら持ってるのか、財布を見せてもらうわよ。そのお金で買える、おすすめの商品を教えてあげるから」


 そう言ってヒスイは、オレの巨乳の身体の胸の谷間から財布を引き抜くと、その中身を数えてから風呂敷包みを開いて、それで買える商品を空中に浮かべる。


「ここから南極まで行くとなると、あんたは、その途中で、この世界でも十本の指に入る、最強レベルの忍者たちと戦う事になるわ。その十本の指には、あんたも入っているから、倒さなきゃいけないのは九人ね」


「オレは、海兵隊忍者のストーム大佐と、このアマゾン川にいた半魚人忍者を、すでに倒したよ!」


「あら、あんた、違う世界の住人のくせに、なかなかやるわね。じゃあ残りは七人よ……。とにかく耐久力を上げた方がいいから、この露出の多い忍びの服を買うといいわ」


「おい! なんで、耐久力が高い服の方が、露出が多いんだよ!」


「忍びの服の耐久力は、その服にかけられている防衛忍術のレベルで決まるから、露出は関係ないのよ。ただ、女の忍者が着る服は、お話が進んでいくほど露出が増えた方が読者もよろこぶはずだから、性能が高い服ほど露出を多くしてあるの。まあ、出版されてイラストが付くまで、ほとんど意味はないんだけどね」


「? ? 読者? 読者ってなんだ?」


「この世界を観測している異世界の住人たちの事よ。あんたは気にしなくていいわ」


「…………よく分からんが、まあいいや……。それより、敵に捕まった時に、それを抜け出せるアイテムとかないのか?」


「そんなものが普通に流通していたら、全ての犯罪者が野放しになって、社会が崩壊するじゃないの。あんた、ちょっとは考えてものを言いなさい」


 それでオレは、仕方なく、耐久力が高くて露出が多い忍びの服と、とにかくたくさんの回復薬を買う。


「新しい服は、今すぐ装備するでしょう? あと古い服は、どうせもう着ないでしょうから、こっちで引き取るわよ」


 そう言いながら、ヒスイが大きな鏡を向けると、オレの巨乳忍者の身体に着せられた服が、いつの間にか新しいものに変わっていて、お釣りを入れた財布をオレの胸の谷間に押し込んだヒスイは、風呂敷包みを背負う。


「じゃあ次は、もっと耐久力が高くて露出の多い服を仕入れて来るから、この後で最強レベルの忍者を二~三人倒したら、又、呼んでね」


 その次の瞬間、ヒスイが消えると同時に、世界に色が戻り、時間が動き出して、オレとアオ先輩は、再びアマゾン川を音速で走り出す。


「おい、ユキ! お前、ずいぶん過激な服を買ったな!」


「…………気持ち悪いから、こっち見るな!」


 そう言っているうちに、オレたちは、アマゾン川がある大地の破片の端まで来たので、三万倍のスローでゆっくりと吹き上がる溶岩を避けながら、砕けた小さな破片の上を跳び移って、次の巨大な大地の破片の上に乗る。


 そこには広大な砂漠が広がっていて、遠くにピラミッドらしき、巨大な三角形の物体が見えたので、オレはアオ先輩に怒鳴る。


「ちょっと待て、先輩! あんた、進む方向を間違えただろ! アマゾンから、エジプトに来ちまっているじゃないか! 南極はこっちじゃないだろ!」


「いや、ユキ、南極はこっちで合ってる! なぜなら、この世界の地球は、中心から外側に向けて普通に爆発したんじゃなくて、ねじれるように力を加えられて爆発したからだ! それで、砕けた大地の破片は、元の地形どおりに並んでいる訳じゃないから、アマゾンの次にエジプトの破片があっても、おかしくはないんだ!」


「ええ? ねじれるようにって、一体、この世界の地球に、なにがあったんだよ!」


「それは…………」


 ところが、その質問にアオ先輩が答える前に、音速で砂の上を走るオレたちの、前方の砂が盛り上がって、巨大な触手のような形になる。


「おい、おい! 今度はなんだよ!」


「これは、三千年の眠りから忍者としてよみがえったという噂の、ミイラ忍者の攻撃だ!」


「はあ? 半魚人はまだ生き物だったけど、ミイラなんて、生き物ですらないじゃないか! そんなものまで忍者かよ!」


「ユキ! ミイラ忍者の本体は、この砂の下を高速で移動しているはずだ! 『風』で砂を払いながら進んで、本体を探すんだ!」


 そう言われたオレは、音速で走りながら、何本もの巨大な砂の触手が襲って来るのを避けつつ、鎖ドクロを『風』に切り替えて振り回し、周囲の砂を払いのける。


 すると、そんなところに、再びコハクの声が、心の中に聞こえてくる。


「ユキ、聞こえる?」


 コハク! お前、ひょっとして、オレの心を消滅させようとして、わざと戦闘が始まってから話しかけてるだろ! そんなに、オレの身体がほしいのか!


「あら、このタイミングで話しかけたのは、わざとじゃないわよ。こっちの世界の、あなたの身体を気に入ったのは確かだけど、あなたの心に消滅してほしいとまでは思ってないもの」


 いいから、さっさと本題を話せ! こっちは今、ミイラ忍者と戦っている最中なんだ!


「ああ、あいつを倒すのは、ちょっと面倒ね。砂の下を高速で移動するから、本体がどこにいるのか見付けるだけでも大変だし…………」


 だから、本題はなんなんだよ!


「えーとね……実は淋病になっちゃって…………」


 はあ?


「どうやら、学校の保健室の先生から、もらっちゃったみたい……。それで、尿道が炎症を起こして狭くなっているから、おしっこも、ぽたぽたとしか出ない上に、ものすごい激痛で大変なの」


 ちょっと待て、コラ! オレのチ〇コは、どうなってしまうんだよ!


「大丈夫よ。ちゃんと病院に通って、抗生物質を注射してもらっているから、そのうちに治るわ。ただねえ……治るまで、尿道からドロドロのウミが出てねえ…………」


 うわああ! 説明するなあああ!


「でも、憶えておくと役立つ事を知ったから大丈夫よ。淋病になって尿道からウミが出ている時でも、女性用の生理用ナプキンをチ〇コに当てておけば、普段どおりの生活ができるの」


 そんな豆知識、知りたくなんかねえ!


「あら、これは、あなたのお母様から教えてもらったのよ」


 なんだとおおおおおおおおおおおおおおおお!


「若いころに、お父様に淋病をうつしちゃった時は、そうしてたって」


 うわああああああああああああああああ!


 そんなオレの様子に気が付いたアオ先輩が、巨大な砂の触手を避けつつ、音速で走りながら大声でたずねる。


「ユキ! もしかして、今、コハクと話しているのか!」


「ああ! だが、心配はいらない! いつもは、これで動揺して、敵の攻撃をくらってしまうんだけど、毎回そんなパターンでやられる訳が…………」


 ところが、そう言っている最中に、真下の砂の中からミイラ忍者が飛び出して、その両手の古代エジプトの二本ナイフで、オレは両腕を切断されてしまい、鎖ドクロが砂に落ちて吸い込まれる。


 それでオレは、両腕の切断面から大量の血をドクドク流しながら、ミイラ忍者に捕まらないように必死に走る。


 忍法『死骨支配の術』が備わっているこの巨乳忍者の身体は、自分で死んで新しい身体に再生させる事ができないので、両腕を切断された状態で敵に捕まってしまえば、逃れる手段がないからだ。


 だがオレは、両腕も武器もない、この状況でも、なんとかミイラ忍者を倒す方法がないかを一生懸命考える。


 今は最悪のピンチではあるが、同時に、オレの身体を捕まえようとして、砂の上を走っているミイラ忍者を攻撃できるチャンスでもあるからだ。


 そしてオレは、気合を入れるために叫ぶ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 オレは、なんとしてでも、この世界を救って、淋病になってしまった自分の大切なチ〇コを取り戻すのだ!

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