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第一章 少年は○○○のために世界を救う

 気が付くと、オレは、時間が止まっているように見える世界で、砕けた大地の破片の上を、あり得ない速さで走っていた。


 その世界では、大地の砕けた破片が、空中にも無数に浮かんだまま静止していて、その破片の間には、地球の中心からはじけた大量の溶岩が、上空に向かって噴き上がった状態で静止している。


 そして、この滅亡寸前に見える、静止した世界の中で動いているのは、オレと、オレの横を並んで走っている、忍者の格好をした怪しい少年の、二人だけだった。


 その少年は、走りながら、風を切る音に負けないように大声で、自分の名前はアオ(青)で、年令は十七才だと自己紹介してくる。


 高校一年生のオレにとって、その相手は一つ年上の先輩だったし、相手が先に名乗ったんだから、いくら忍者の格好をした怪しい少年でも、無視するのは失礼だと思って、オレも、自分の名前がユキ(雪)で年令は十六才だと、相手と同じように風に負けない大声で答える。


 ところが、その時に出した自分の声が、なぜか女の声で、驚いて自分の身体を見ると、胸のところで巨乳が揺れていて、さらに驚く。


 どういう訳かオレは、巨乳の少女になっていて、しかも、横を並んで走っているアオという名前の少年と同じく、忍者の格好をしていたのだ。


 それでオレは、思わず顔が引きつって、半笑いになってしまう。


 すると、そんなオレに向かって、アオ先輩が再び大声を出す。


「ユキ! 違う世界から来て、いきなりこんな状況で驚いたと思うが、この世界の地球は、ついさっき爆発してしまったんだ! その瞬間に、ぼくたちは、忍法『加速の術』で、自分たちの動きを、およそ三万倍に加速したので、時間が止まっているように見えるだろうが、この世界は今も、三万倍のスローがかかった状態で、ゆっくりと崩壊している!」


 その言葉に対して、巨乳忍者の身体になったオレは、半笑いで走り続けながら、女の声で答える。


「……そうですか!」


「でも、ぼくたち忍者の一族は、こんな事もあろうかと、この世界の時間を巻き戻す事ができる、『時間逆転装置』を作っておいた! それを動かせば、この世界の地球を、爆発する前の状態に戻せるはずだ!」


「…………良かったじゃないですか!」


「けれど、その『時間逆転装置』は、誰かに間違って動かされると、大変な事になるので、南極の氷の下に隠してある!」


「……じゃあ、どうするんですか!」


「だから、ぼくたちは、このまま粉々になった地球の破片の上を走って、その『時間逆転装置』がある、南極の破片のところまで行くんだ!」


「…………ぼくたちって……ひょっとして、オレも行くんですか?」


「そうだ、ユキ! さっきぼくは、忍法『心移しの術』で、お前とその巨乳忍者の心を入れ替えた! なので、この世界が滅亡すれば、お前の心は、その巨乳忍者の身体といっしょに、ここで消滅してしまうだろう! それが嫌なら、お前は、この世界を救うのを手伝うしかないんだ!」


 ずっと半笑いだったオレは、あり得ない状況での、あり得ない話に、耐えられなくなって、ついに声を出して笑ってしまう。


「はははははははははははははははははは」


 すると、アオ先輩の抜いた刀がきらめくと同時に、巨乳忍者のオレの片方の腕が切断されて、オレは大量の血が噴き出すその切断面を、もう一方の手で押さえながら、それでも走り続けたまま絶叫する。


「がああああああああああああああああ!」


 それからアオ先輩は、そのままオレの反対側へまわって、もう片方の腕も切断したので、両腕の切断面から、さっきよりも大量の血を流して、それでも、なぜか走り続けたまま、オレは、さっきよりも激しく絶叫する。


「ぎええええええええええええええええ!」


 さらにアオ先輩は、オレの周囲をまわりながら、胴体の前後左右を、刀で無数に突き刺したので、両腕の切断面に加えて、胴体の無数の傷口から、さっきよりも、さらに大量の血を流して、それでも、まだ、なぜか走り続けたまま、オレは、さっきよりも、さらに激しく絶叫する。


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 そして、最後にアオ先輩は、オレの首を切断したので、両腕と頭のなくなった身体は、ついに走るのをやめて、切断された首とともに砕けた地球の破片の上を転がって、虚空へと消えていく…………。


 と思ったら、次の瞬間には、再び巨乳忍者の姿で、無傷のまま、アオ先輩の横を走っていたので、オレは怒りながら尋ねる。


「アオ先輩! あんた、さっき、オレを殺しただろ! あと、それなのに、なんでオレはまだ生きているんだ!」


「心配するな、ユキ! その巨乳忍者の身体には、忍法『その場復活の術』がかかっている。だから、その身体は、何度死んでも、その場で再生されるんだ! それは、お前の世界にあるゲームに例えれば、コンティニューしても、手前に戻されずに、死んだその場から続きが始まるヤツと同じだ!」


「死ぬほど痛かったぞ!」


「殺したんだから、死ぬほど痛いのは当たり前だ! だが、その痛みで、これが夢ではなくて現実だと、お前にも分かっただろう!」


「アオ先輩が時間をかけて、ていねいに説明してくれれば、オレだって、殺されなくても、これが現実だと分かったはずだ!」


「ぼくたちには時間がない! あと一秒もすれば、南極の氷の下に隠した『時間逆転装置』が、地球の爆発の衝撃によって壊れてしまう! そうなったら、この地球を、爆発する前の状態に戻す事ができなくなるんだ!」


「一秒って、もう過ぎてるだろ!」


「その一秒というのは、現実時間での一秒だ! ぼくたちは、およそ三万倍の速さまで加速しているから、今の体感時間に換算すれば、あと、およそ三万秒……つまり、あと、およそ八時間ある!」


「八時間で南極まで行くのかよ!」


「忍者であるぼくたちは、見てのとおり、音速で走る事ができる! ここから南極の破片のところまでは九千キロほどだから、この速さなら間に合うはずだ!」


 先輩はさらに続ける。


「あと、お前も気が付いていると思うが、忍法『加速の術』で加速している間のぼくたちは、脚が勝手に動いて、嫌でも全速で走り続けてしまう! だから、方向さえ間違えなければ、八時間後には、自然に南極に着いているだろう!」


「三万倍の速さまで加速した上に、さらに音速で走っているって事は、オレたちは、今、マッハ三万の速さで走っている事になるじゃないか! そんなの、あり得ないだろ!」


「ユキ! ここはお前の住んでいた世界とは違う! マッハ三万くらい、この世界の忍者なら、誰でも出せる!」


 その話には、まだ突っ込めるところがあったが、こんな異世界で、このままアオ先輩の話に突っ込み続けていても時間の無駄だと思ったオレは、音速で走りながら話題を変える。


「ところで、先輩! オレの心を、この巨乳忍者の心と入れ替えたのは、なぜなんだ! オレみたいな、違う世界の住人なんかと心を入れ替えなくても、もともとの巨乳忍者と南極まで行けば良かったんじゃないか!」


「…………面倒くさいと言ったんだ!」


「は?」


「面倒くさいから、南極まで行きたくないと言ったんだよ! その巨乳忍者は!」


「ええ? …………だって、このままじゃ、自分の住んでいる世界が滅亡して、自分の身体も消滅してしまうんだろ? それを防ぐのに、面倒くさいもなにも、ないじゃないか!」


「……ぼくに聞かないでくれ、ユキ! …………とにかく、そういう訳で、この世界で他に頼れそうな忍者は全員死んでしまったから、忍法『異世界人探しの術』で、こことは違う世界の、やる気を出してくれそうな人間を探して、最初に見つけたお前の心を、その巨乳忍者の心と入れ替えたんだ!」


 そう言われても、そんな面倒にかかわりたくないオレは、音速で走りながら、なんとか断る方法がないか考える。


「いや、オレだって、自分とは関係ない世界を救うのに、やる気なんて出ないよ! ……………………あっ、そうか! 説得すればいいのか!」


 オレは、そこで思い付いた事を先輩に提案する。


「アオ先輩! すぐに、この巨乳忍者の身体だったヤツと話をさせてくれ! そいつは、今、オレがいた世界で、オレの身体になっているんだろう? そいつを、オレが説得して、やる気を出させるから、そしたら先輩は、もう一度、オレたちの心を入れ替えてくれよ!」


「…………なるほど、いい考えだ! じゃあ、今から忍法『心つなぎの術』で、お前と巨乳忍者の心をつなぐから、説得してみてくれ!」


 すると、オレの頭の中に、巨乳忍者の心の声が聞こえてきて、その声が、自分の名前はコハク(琥珀)で、年令は十五才だと言う。


 という事は、まだ中学三年生か……。それで、この巨乳って、あり得ないだろ。


「あら、私は十二才の時から巨乳だったわよ」


 あっ、しまった。心がつながっているから、思った事が全て筒抜けだ。まあ、いいか。オレが思っている事が、そのまま伝わるんなら、話が早いだろう……。ええと、コハクさん、自分が住んでいる世界は自分で救ってくれよ。


「えー。そっちの世界は、もう、どうでもいいわ。私は、これから、こっちの世界で暮らすもの」


 おい、おい、ちょっと待てくれよ、コハクさん。オレの身体なんか嫌だろう? この巨乳に戻らなくてもいいのか?


「実は、私、男に生まれ変わったら、したいと思っていた事が、いっぱいあるんの。だから、その身体は、あなたにあげるわ」


 おい、おい、おい、おい。この身体を、オレなんかに渡してもいいのかよ。オレは、この身体になにするか分からんぞ。


「いいわよ。なにしても」


 なんだよ、ずいぶん簡単に言うな……。コハクさん、お願いだから、オレの身体を返してくれよ。


「ダメよ。この身体、気にいったもの。さっき射精もしたし」


 ちょっと待て! コハク! お前! なんで、勝手に、オレのチ○コに触ってるんだよ!


「あら、このチ○コは、もう私のものよ」


 ふざけんな! コラ! 二度とオレのチ○コに触るな!


「嫌よ。それに、もうすでに三回も射精したわ」


 はああ?


「三回目の時は、あなたのお母様が、部屋の扉を開けたけど、ちゃんと最後まで続けたし」


 なんだとおおおおおおおおおおおおおおお!


「お母様も、最後まで見ていたわ」


 うわあああああああああああああああ!


「男のくせに、母親に射精を見られたくらいで、うろたえないで」


 たまらずオレは、アオ先輩に言う。


「今すぐ、オレを元に戻せ!」


「断る! この世界を救うのを手伝ってくれる、唯一の者を、ぼくが手放す訳がないだろ!」


「この世界なんて、どうなったって知るか!」


「この世界が滅亡すれば、そのコハクの身体といっしょに、お前の心も消滅する! そうなったら、お前の身体は、完全にコハクのものになってしまうぞ!」


「オレが、この世界を救っても、あんたが、オレとコハクの心を、再び入れ替えてくれるっていう保証はないだろ!」


「『時間逆転装置』を動かせば、この世界の地球が、爆発する前の状態に戻るのと同時に、お前とコハクの心も、ちゃんと入れ替わる前の状態に戻る! だから、この世界を救えば、お前の心は、自動的に元の身体に戻るんだ!」


 それを聞いて、オレはアオ先輩に、完全にハメられた事に気が付く。


「クソ! ……あんた、コハクの心がオレの身体に入ったら、どんな事をするのかも計算した上で、オレたちの心を入れ替えたな! …………これじゃあ、オレは、この世界を救うのを手伝うしかないじゃないか!」


「どうだ、ユキ! やる気が出ただろう?」


「黙れ!」


 その時、粉々になった地球の破片の上を、オレたちと同じように音速で走りながら、こっちに近付いて来る、忍者の集団が見える。


「なんだよ! 生きている忍者が、あんなにいるじゃないか! あんた、あいつらといっしょに南極に行けよ!」


「違うぞ、ユキ! あいつらは敵だ! ぼくたちが南極に行くのを妨害しに来たんだ!」


「ええ? あいつらだって、この世界が滅亡したら、消滅してしまうんだろ? それなのに、なんでオレたちが世界を救うのを妨害するんだよ?」


「説明は後だ! ぼくは、戦闘が得意じゃないから、忍法『気配隠しの術』を使って、あいつらの気を引かないようにする! 後は頼んだぞ!」


「ちょっと待て! あんた、さっき、オレの両腕と首を切断して、胴体を穴だらけにしたじゃないか! それだけ刀が使えるんなら、ちゃんと戦えよ!」


「勘違いするな、ユキ! 今、お前の心が入っている、そのコハクの身体は、この世界でも十本の指に入る、最強レベルの忍術が使える! そのそばで、ぼくのような低レベルの者が戦っても、足手まといになるだけだから、お前の邪魔にならないようにするんだ!」


「本当かよ? コハクって、そんなに強いのか? だったら、なおさら、本人に戦わせろよ!」


「…………コハクが、ぼくの言う事を聞いてくれるなら、そもそも、お前の心と入れ替えたりしなかった! ……だが、心配するな、ユキ! 今、近付いて来ているような、普通の忍者が相手ならば、それが何人だろうとも、お前は適当に動いているだけで勝てる!」


 そう言われたオレは、音速で走ったまま、近付いて来る忍者たちに意識を集中させると、手が無意識に動いて、背中の武器をつかむ。


 その武器は、輪になった長い鎖だが、その途中の三ヶ所に、三つのドクロがつながっていて、先輩が、それの説明をしてくれる。


「お前の身体に備わっている忍術は、死者の骨を支配する、忍法『死骨支配の術』だ! その術によって、お前に殺された者は、その骨を支配されて、たとえ忍法『その場復活の術』をかけていても、身体を再生する事ができずに消滅する!」


 先輩の説明はさらに続く。


「しかも、その鎖は、ある一定以上の力を持つ者を殺した時は、その骨を自動的に取り込む! そして、取り込んだ骨から、その者が生きていた時に持っていた力を発動させる事ができるのだ!」


「つまり、この鎖につながった三つのドクロは、コハクが過去に殺した中でも、最強だった三人の忍者のもので、これを使えば、その三人が使っていた忍術も発動させる事ができるんだな?」


「そのとおりだ! さらに、これから先も、その三人に匹敵する力を持っている者を殺せば、その骨も取り込んでいくから、発動できる忍術も、どんどん増えていくだろう!」


「なるほど……強いやつを殺すほど、相手の力を取り込んで、さらに強くなれる訳か! それじゃあオレは、南極に着く頃には、本当に世界最強になっているかもしれないな!」


 そう言いながらオレは、音速で走ったまま、その鎖ドクロをムチのように、軽く振りまわす。


 すると、それは、オレを中心に半径二十メートルの空気を切り裂き、素早くその範囲の外に離れたアオ先輩が、オレに忠告する。


「ユキ、お前の身体は、何度死んでも再生されるが、その間にも時間はどんどん過ぎていく! この世界が滅亡するまで、残り一秒だという事を忘れずに、最短の時間で敵を倒していくんだぞ!」


 しかし、近付いて来る忍者の集団に集中していたオレは返事もせず、そいつらが攻撃範囲に入ると同時に、その者たちを鎖ドクロでなぎ払って、刀を折り、手足を引きちぎり、胴体を引き裂き、頭を砕いて消滅させていく。


 そうやって戦いながら、巨乳忍者の身体になったオレは、自分自身の心に誓う。


 あと一秒で滅亡する、この世界を、オレは、なんとしてでも救ってみせる。


 そしてオレは、異世界の痴女にもてあそばれている、自分の大切なチ○コを取り戻すのだ!

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