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掌編小説集8 (351話~400話)

作者: 蹴沢缶九郎

地面にあいた、子供の腕がやっと通る程の大きさの穴に、少年が右の腕を深く突き刺し寝そべっている。そこへ、たまたま通りかかった老人が少年に尋ねた。


「君は一体何をしているのかね?」


「穴を塞いでいるのです」


「何故穴を塞いでいるんだい?」


「さあ、僕にもわかりません。ただ、そうしなければいけない気がするのです」


訳がわからない老人は続けて聞いてみた。


「いつ頃からそうしているんだい?」


「気が付いたらこうしていました」


「楽しいかい?」


「わかりません」


「飽きないかい?」


「わかりません」


「お腹は空かないのかい?」


「わかりません」


そこで老人は、「きっとこの少年は、通りかかる人を捕まえては、こうしてからかっているのだろう」と、質の悪いいたずらと結論付け、最後に少年に忠告した。


「私はもう行くが、君もそんなくだらない事はやめなさい…」


「…やめていいのですか?」


少年の返答に、溜め息混じりに老人は言う。


「…そんな事は君が考えなさい」


老人の言葉を聞いた少年は、しばらく沈黙した後、


「…わかりました」


と、穴から右腕を抜いた。


…次の瞬間、穴は凄まじい勢いで老人と少年を吸い込み、車や家を吸い込み、地面を吸い込み、空を、海を、地球を、月を、太陽を、果ては宇宙そのものを吸い込み、後にはなにもなく…。

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― 新着の感想 ―
[一言] 手を突っ込む少年、で、オランダのお話(堤防の穴に決壊を防ぐために突っ込む話)を想像しましたが、オチでやられた!ってなりました(笑) 少年は一体何を思って引き抜いたのか。やっぱり退屈だった?そ…
[一言] 読ませていただきました。 この少年は穴に手を突っ込む際によく吸い込まれませんでしたね。少年が穴に手を突っ込んだ時は、そこまで吸引力はなかったんですかね。
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