現実
「無いって、どういうことだ?」
「無いんだよ、僕らがいた日本という土地は…
この世界には」
「ええぇぇぇ!!!
海斗、マジなのか!?
ほら、もっとよく探そうぜ…
どっかにちっちゃく「無いよ」
必死に可能性にすがろうとした陸斗の言葉は
無残に、海斗に真っ二つにされた
大きなダメージを受けた陸斗は硬直した
「この世界には無いって、どういうことだ?」
一人取り残されたラルクが問う
「僕らがいたところの世界地図と全く違う
そして、日本が無い
つまり、僕たちが存在していた世界と
ココは、全くの別世界ということ」
表情を
変えずスラスラ答えていく海斗
その横で、暗いオーラを出して蹲る陸斗
「へぇ~、そんな旅人もいるのか」
「え?」
海斗は驚いた
こんなにアッサリ信じてもらえるとは思わなかったからだ
「だって、まだ分からねぇことが、この世界には一杯あるんだ
違う世界から来れるような道だってあるかもしれねぇだろ?」
ラルクの言葉に、海斗は一瞬ポカンとしたが
異世界の人間であることを考えると、ラルクの思考も納得できなくはない
(教育とかも違うんだろう
こういう発想が出てきて当然だな)
「なぁ…海斗、俺達これからどうしたら良いんだ?」
いつの間にかダメージがら復活した陸斗が海斗に訊ねた
「お前ら、アテねぇのか?」
ラルクの言葉に頷く2人
「なら、来いよ
オレの今泊ってる宿にさ」
「いや、でも僕らはお金持ってないし」
「んなの心配ねぇ~よ、オレが出してやるからさ♪」
「え、マジで!?
ラルク、お前ってなんて良い奴なんだ!!」
陸斗はあ嬉しさのあまり、ラルクに飛びつく
ラルクは、それを何とか受け止めた
宿屋に着いた3人
宿屋はさほど大きく無く
部屋も3人入ると少し狭さを感じる
「ほへぇ~…宿ってこんな感じなのかぁ~」
陸斗は部屋をキョロキョロ見まわす
窓ガラスは無く
ただ、木の窓枠があるだけだった
「この窓、閉めれないのか?」
陸斗がラルクに尋ねる
「ん?この辺りは気候が温暖なままでな、寒くなることが無いんだ」
「へぇ、1年中暖かいんだね」
「良いなぁ~、俺冬苦手だし~」
「陸斗は、冬だろうが夏だろうが、いつまでも布団から出てこないでしょ」
「うぐっ…」
「ハハハ…」
陸斗は、海斗のツッコミに反論できなかった
その様子を見て、ラルクは2人の力関係を見た気がした
「ねぇラルク
ラルクは何で宿に泊ってるの?」
海斗の問いに、ラルクはフッと笑った
「聞きたいのか?」
聞き返された海斗は、少し間を開けて頷いた
「そっか、まぁ、座われよ」
ラルクは、ベットに腰を降ろし、2人にイスに座るように促す
2人は言われるままに、イスに座った
元の世界とは違い、簡単に木を組んだだけで出来たイスだった
「オレはここの村の者じゃない
オレは、ココからもう少し北にあるルフィトって村から来たんだ」
ラルクは、先ほど2人に見せた地図を開き
ルフィトの位置を指で示した
「で、何で俺がココにいるかってのは
ただの、旅の途中ってだけだ
もう、目的地のリヴィトル村に行ってきた
その帰りだ」
ラルクは、だいぶ南にある位置を指さした
「ちょうど帰り道に、あの森を歩いてたら
人の声がしたから
少し探してみたら、お前らがいたんだよ」
「へぇ~」
陸斗は興味津津なようで、身を乗り出して聞いている
一方海斗は、静かに聞いていた