お小遣い稼ぎ
忙しくなってきたので2日に1回に頻度落ちるかもです…
アニータとの模擬戦が終わり、会話を終えてギルドへ戻る。試合が終わってから観客席は騒がしかったが、人数がそこまで多くはなかったので、そこまで酷くはなかった。ギルドマスターであるカイトさんは声をかけるまですっとぼけたような顔をしていて、声をかけられてからようやく我に帰ったようだ。
「まさか勝つとは….君も今後大変になるだろう…色々と。それとアニータ殿、彼と組むとは本当かね?」
意味わかんねえ。冒険者できるようになったんだから任務で大変になるってことか?と考えつつ、戦闘になっても起きないティタニアにあいつは寝すぎだろ…と独りごちる。
「ええ、臨時ですけど」
「そうか、まぁ君らなら魔物などには遅れをとらないだろうよっぽどのが出てこない限りはな。レンヤくん、ギルドカードを渡すのと簡単に冒険者ギルドについて説明するから、ついてきてくれ。」
ティタニアに声をかけていた俺はそう言われ、そのまま進んでいくカイトさんとお付きの人についていく。アニータさんは宿に帰るそうだ。
「アニータさん、ありがとうございました」
「いえ、今日でいくつか改善点も見つかりましたし、有意義な時間でした。お疲れ様でした。明日もギルドにいますので、その時に声をかけてください」
と行って彼女は訓練場から出て行った。
……かなり足早に。何故に?と考えながらギルドマスターの部屋まで歩く。ギルドマスターの部屋について開口一番カイトさんが言ったセリフは冒険者ギルドとか関係ないセリフだった。
「今日宿を取りに行くときは裏口から出してあげるからそこからでなさい。」
なんでやねん?と思ったが別に不都合があるわけではないので受け入れる。
「わかりました。それでギルドカードは?」
「ああ、これだ。名前くらいしか入れるものもないのでね。あとは君が魔力を通して、私がランクを入れれば終わりだ。すぐにすむ。ランクは魔力を通せば見れる」
魔力を通せばいいらしい。渡されたギルドカードに魔力を通す。実は少しランクが楽しみなのは内緒だ。
「それで君以外がそれを使おうとしてもそのカードは使えなくなる。使うと言っても、使い道などほとんどないがね。強いて言うならランクの高い冒険者のを使って高いランクの依頼を受けれるくらいか」
「わかりました。えーと、ランクはB…ですか」
「すまないね。彼女に勝てる人材なのでAくらいにはしたかったんだが、A以降はギルド本部に申請しなければいけないんだ。まぁ君ならAにはすぐなれるさ」
ということらしい。それとは別に注意されたルールとしては、基本的には人として常識的な範囲内だった。ここ特有のルールとしては、依頼は自分のランクの一個上まで受けれる。パーティの場合はパーティランクの一個上まで。パーティランクはパーティメンバーの平均がそうらしい。依頼に関しては依頼書を先に持っている人が受ける権利があるらしい。同時だったりした場合はじゃんけんでもして決めろとのことらしい。ギルドに入ることに関しては、そもそもギルドというものは冒険者個人が始めたことなので口出しはしないらしい。ただ、新人を入れて、とにかく働かせて金を奪う悪辣なギルドもあるようで、その辺は気をつけろと言われた。ギルドに入る気はないので興味ないが。
(おはようございます主さま…。お昼寝とはやはりいいものですね)
とそんなことを考えていたら頭に声が響く。ねぼすけが起きたようだ。
(ねぼすけじゃないですよ!そんなことより主様は街に入って数時間で女の子とフラグ立てるってどういうことですか)
と喚いているが心当たりがないので勤めて無視。絶対アニータさんのことを言ってるが、臨時でパーティを組むぐらいでフラグが立つわけがない。
(バカなこと言ってないで今日の宿探しに行くからもう寝ないでよ。今日は疲れたからさっさと寝たい)
(わかりました主様。私に任せてください
精霊の力で手頃なお値段で快適な宿を見つけてみせます!)
となんか変な意気込みをしているが、放置。カイトさんから魔石の代金金貨120枚を受け取って、裏口に案内してもらう。ちなみにこの国の貨幣としては、銅貨が一番下の貨幣で、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚だそうだ。白金貨という金貨1000枚分の価値のある金貨もあるそうだが、これはかさばらない資産として貴族や豪商が持っているだけで普通はないそうだ。これを聞いたときはどこからきたら貨幣の価値を知らないような存在ができるんだと言っていたが、実際はそんな田舎はないので安心してほしい。うん。ないと思う。
「魔石に関してはほんとはもう少し安いんだが明日から大変だろうから少し色をつけておいた。頑張れよ」
と裏口から出るときに言われて頭の中をはてなマークで埋めながら街へと進む。
ヴェリンの街は辺境の割には人も多く、屋台などもそれなりに出ていた。アイテムボックスに食べ物を突っ込んだらどうなるのかという実験も兼ねて美味しそうな匂いのする串焼きのようなものを売っている屋台へ歩いていく。
「おっちゃん、この串焼き5本ちょうだい」
「らっしゃい!毎度!5本で銅貨30枚だ」
この世界ではお釣りの70枚とか99枚とか数えるの面倒くさくないんだろうか。俺は面倒くさい。と思いながら金貨を一枚渡す。
「にいちゃんここで金貨とは…流石にお釣りがねえよ…すまんなにいちゃん」
なんとなくそんな気はしてたが、金貨はダメらしい。だが、ここで串焼きを諦めたくはなかった俺は、金貨を使って串焼きをなんとか買うことにする。
「じゃあ金貨を 一枚で帰るだけ串焼き売ってくれ。」
「そんなに売ってももてねえだろにいちゃん」
たしかに見た目はそんなに持てるようには見えないから正論だが、アイテムボックスがあるので問題はない。
「魔法で全部保存するから大丈夫だから頼む」
「なるほどねにいちゃんわけーのに魔法使いか!俺にはわかんねえがそんな魔法があるとは魔法ってのは便利だな」
といいながら串焼きを大量に焼いてくれる。本人は今日はこれで店じまいだなと嬉しそうに笑っていたが。
「ほい、焼けたぜにいちゃん。正直これでも金貨の方が価値が上なんだがいいのか?」
「構わないよ。ありがとう」
そういってアイテムボックスに大量の串焼きを突っ込む。
「うお…すげえな魔法ってのは。まぁいいや、にいちゃん毎度あり〜」
そういって店をたたむおっちゃん。そこでおっちゃんに宿を探していることを告げる。そうするとおっちゃんは。
「冒険者なら妖精の安らぎ亭ってとこがいいぜ。冒険者用みてーな宿がある。場所はここからそう遠くない。ここの道を真っ直ぐ歩けば5分くらいで見えてくると思うぜ」
と、親切に教えてくれた。これを聞いていたティタニアも妖精の安らぎ亭なんていい名前じゃないですか!と気に入っていたので、そこへ向かう。向かいながら串焼きを食べまくって腹を満たす。
そしておそらく妖精の安らぎ亭であろう宿っぽい建物を見つけ、中に入っていく。一階は酒場になっているようで、冒険者風の人たちが酒を飲んで騒いでいた。そんな中、端っこにカウンターを見つけてそこの受付の人へ泊まりたいことを告げる。
「とりあえず一週間ほど泊まりたいんだけど部屋空いてますか?」
「空いてますよ。一週間だと銀貨5枚ですね。朝夕のご飯付きだと銀貨8枚になります。両替も多少はできますよ」
とのことだったので、アイテムボックスから金貨を一枚出して銀貨92枚にしてもらう。
「部屋は二階の突き当たりの部屋を使ってください。体を洗うための桶と水は銅貨5枚で貸し出しています」
と言われたので、その他のサービスも全部受けるからとサービスの説明も聞かずに銀貨を一枚渡した。
「わかりました。あとで部屋にお持ちしますね」
そういって彼は鍵を渡して、どこかへ行ってしまった。俺は疲れていたのでさっさと部屋へいく。部屋はベッドが一つと机が置かれている以外は特に何もなかった。荷物があるわけでもないので、服を脱ぎ、部屋着のようなものに着替えて、桶と水を待つ。少しするとさっきの人が持ってきてくれたので、それを使って体を綺麗にした後はティタニアにおやすみを言ってすぐにベッドで寝てしまった。
そして朝。なんか体が重いことに気がつく。なにかがへばりついている様に重い。ただそのへばりついてる柔らかくてあったかい何かは恐ろしくスベスベで気持ちがよかった。ついつい撫で回していると明らかに自分の声ではない声が部屋に響く。
「んぅ…んんっ…」
一発で我に帰りました。はい。ガバッと布団をまくり、スベスベ物体の正体を確認する。案の定というかなんというか、そこには人型に戻ったティタニアが全裸で寝ていた。なんとか裸を見ないようにしながらティタニアを起こす。
「おい、起きろティタニア。そして頼むからなんかきてくれ」
「主様。私、寝るときは全裸派なんです」
違う、聞いてない。そう言いたかったが布団からティタニアがでてきていろんなところが見えそうになっていたので、布団を無理やりかぶせて逃走を図るレンヤ。
「俺は先に朝食食べに行ってるからお前は部屋で待ってろ!」
と言って返事を聞かずに1階へと逃げるレンヤ。
1階にはそれなりにもうひとがいて、それぞれ思い思いに朝食を食べていた。冒険者ギルドに行こうと思っていたが、アニータさんがいつギルドにくるかわからなかったので、早めに行くことを決め、パンとコンソメスープのようなものをはやめにたべる。ちなみにコンソメスープの方は肉も野菜もいいのを使ってるのかなかなかうまかった。細切れにされた肉が特に味がしみてていくらでも食べれそうな気がした。この時コンソメスープが美味しくて周りの視線にレンヤは気が付かなかった。
そして朝食を食べて部屋に戻り、服を着たティタニアを回収してギルドへ向かう。
(うーん、自分で歩けないのは退屈ですね主様)
(アニータさんには依頼にでたら説明して出してやるから我慢してくれ)
(我慢できません主様、あとでなでなでを要求します)
この女王様は何言ってるんだろうと思いながら冒険者ギルドへ向かう。そして冒険者ギルドにつき、中へ入る。そうするとなんだか人だかりができていた。どうせ俺には関係ないと思って適当な席に座って待とうとその集団を迂回しようとした時、聞いたことのある声が聞こえてきた。
「あなたたちとは組まない!他をあたってくれ!」
アニータさんの声だった。どうやら先に来ていたようで、パーティを組んでくれと頼まれているようだ。パーティを組む約束をしたのは俺なので、集団をかき分けてアニータさんの元へ向かう。
「アニータさん、お待たせしました。すみません待たせたみたいで」
声をかけられて気が付いたようで、アニータさんはこちらに向き直ると照れ臭そうに言った。
「パーティを組むのは初めてだから早く来過ぎてしまったんだ…気にしないでほしい。それと私のことはアニータで構わない」
「それなら俺もレンヤでいいですよ。今日はよろしくお願いしますね」
と2人で周りを無視して勝手にやり取りをしていると、わけのわからないやつにいきなり肩を掴まれて突き飛ばされた。
「うわっ、なにすんだ」
俺は突き飛ばした相手をみて文句を言う。そいつはでかい大剣をもち、体を魔物の素材でできているだろう鎧で身を包んでいた。アニータさんはその突き飛ばしたやつをみて、凄く嫌そうな顔をした。その顔でなんとなく察した俺は面倒事に巻き込まれたと確信した。
「うるせえよ、ガキは引っ込んでろ、アニータと組むのは俺だ、お前みてえな雑魚にアニータのパーティメンバーは務まられねえよ、おとなしく俺と変われ」
「ゼパル…」
本当にうんざりといった表情でアニータさんがつぶやく。この大馬鹿野郎はゼパルと言うらしい。なんとなくこんなバカはいるんだろうなと思っていたが本当にいるとは。周りにも似たようなことをアニータに行っていたらしく、急にアニータに同じようなことを言い出す。
「そうだ、俺の方が適任だ!」
「いや俺だね!とにかくこんなガキがアニータのパーティメンバーなんてありえない」
と好き放題言っている。とくに最初に突き飛ばしたやつなんかは酷かった。
「おいアニータ、まさかこいつがちょっと綺麗な顔してるからってパーティメンバーに選んだわけじゃねえよな?こんな雑魚はお前とは組まなくていいんだよ、俺が適任だ。勿論夜の方でも満足させてやるよ」
と、下卑た笑みで言い放っていた。本当に散々ないいようだ。当のアニータは
「私のパーティメンバーは私が決める。あなたがたにとやかく言われる筋合いはない。レンヤ、行こう」
と言って俺の方へ歩いてくる。俺も面倒ごとはごめんなのでさっさと出たい気分だ。だが、そんな言い分を認められたらこいつらは最初から引き下がっているので、とんでもないことを言い出す。
「お前は俺と組むのが一番いいんだよ!
俺はBランク冒険者様だぞ!お前が俺と組んだ方が成果も上がる。だからお前は俺と組むんだよ、そこのガキは俺の爪の垢でも煎じて飲んでろ」
と言って、いきなり近くにあった椅子を投げつけてきた。これには周りも驚いたようで、慌てて下がる。当の俺は椅子を投げるまでの体の使い方などを見て、雑魚だと判断。周りにいるやつはそれより弱いようだ。ゼパル自体もアニータよりもかなり弱いようで、適当にいなして依頼に行くことを決める。
「うるさい雑魚だな」
「俺が雑魚だとぉ?調子にのるなよガキ」
受け止めた椅子をその場に置き、Bランクとかかれている魔物の討伐依頼を適当に引っぺがしてくる。そしてそのままこちらを睨みつけているゼパルを無視して受付嬢に依頼表を渡そうとするが、依頼表をとったのをみたゼパルに依頼表をとられてしまう。それをみたゼパルが
「おいおい、お前みてえなガキがBランクの依頼だぁ?けっ、アニータに寄生しようってのか、いい根性してるじゃねーか」
と、騒ぎ出す。張本人が実力的に見てそうしようとしているのに随分と面の皮が厚いやつだなと冷めた目で見ていたのだが、当のアニータは怒りで顔が真っ赤になっており、頭の中ではティタニアがブチ切れていた。
(骨も残さずに燃やすか、水で窒息死させるか、雷で少しずつ体の中を焼き殺すか、風で体の先から五分刻みにするかいきたまま土に埋めるか…全部にしましょうかね)
ティタニアは本当に精霊の女王様なのか?と疑いたくなるような殺人計画を進めている。頭の中できれたティタニアの物騒な会話を、怯えて黙り込んだと勘違いしたのかゼパルは続ける。
「おいおい、怯えて声も出せねーのか?ガキはこれだからよお、おい、人のことを雑魚って言い放ったんだ、裏の訓練場で決闘しようやガキ。まさか逃げねーよな?ま、逃げたらアニータは俺のものだがな?」
これを好機だと思ったのか周りも騒ぎ出す。
「おいゼパル、そりゃずりーよそんなガキに勝つだけでいいなら俺でもできる」
「まったくだ。今すぐ始めたいくらいだぜ」
とバカが騒ぎ出す。昨日の俺とアニータの模擬戦を見ていたやつはいないのだろうかと思っていたが、いてもこんなのには関わりたくないだろうし、話しても信じないか….。と1人で納得し、面倒くさいのでさっさと依頼に行こうと思い、ゼパルから依頼表を奪って受付嬢に依頼表を出そうとする。
「おい、おいおいおいおい、人のこと無視してんじゃねーよガキ。なに依頼表出そうとしてんだああ?」
「受付嬢さん、このバカなんとかしてくれませんかね?」
そう言って話しかけた受付嬢は昨日話しかけた受付嬢と同じだったので、昨日のことを説明してくれるだろうと話しかける。
「ゼパルさん、レンヤさんは昨日アニータさんと模擬戦をして、アニータさんに勝ったからアニータさんにパーティに誘われたんですよ。というか他人が人のパーティに口を出す権利はないんですけれど…」
と言ってくれる。これで少しはマシになったかと思えば。
「おいおい、お前受付嬢とアニータに金でも払ってんのか?受付嬢も金貰ってるってギルマスにチクるぜ?」
とバカなことを言い出す。挙げ句の果てには周りにいたバカども全員が決闘をしろと言い出す始末。アニータがブチ切れ寸前になっているんだろう顔と頭の中で呪詛を唱えているティタニアの声を聞いて。
「はぁ…わかったわかった。決闘やってやるよ。ただし負けたらお前ら全員持ち金全部おいてけよ」
「あぁ?お前ふざけてんのか?なんで俺らが金を出さなきゃいけないんだよ」
「お前らこそふざけてんのか?なんで俺が何の利益もないのに決闘受けなきゃいけないんだよ。それに負けないと思ってるから決闘すんだろ。俺より強いならアニータのパーティには入れるんだから黙って有り金全部くらいはかけろよ。後ろのお前らもな」
アニータはこれを聞いて流石に全員はまずいんじゃ…って顔をしていたが、逆にティタニアは大喜びだった。
(やっと合法的にこいつらをブッ殺せますね!主様!しかもお金も稼げるなんて完璧です!)
まぁ正直ここで全員何とかしないとまた絡んできそうだからまとめて潰すだけなのだが。
「上等じゃねえか…てめえ決闘で覚えておけよ…」
とゼパル含めて他の奴らが似たようなことを言って訓練場へと向かっていく。俺も行こうと思ったのだが、一応の確認で受付嬢さんへ質問する。
「あの、決闘で相手殺したら罪に問われたりしますか?」
「いえ…今回はどうみても向こうが悪いのと、決闘は基本自己責任ですので…」
それだけ聞ければいいやと思いお礼を言って訓練場へと向かう。途中でアニータが
「流石に全員は厳しいのでは…?別の日にでも…」
と言ってくれたが、正直あんな雑魚集団が何人集まっても負ける気がしなかったので、問題ないよと言って訓練場へ入る。中では既にゼパルが待機して他の奴らは後ろで列を作っていた。ただ、レンヤとしてはこんな雑魚にいちいち1人ずつ相手するのも面倒なので。
「面倒くさいから全員纏めてこいよ。時間がもったいない」
と言い放つ。これにはゼパル以外も怒りを覚えたようで、口々に文句を言いだす。
「死んでも文句言うんじゃねーぞガキ!舐めやがって!」
「ガキのくせに生意気だな」
と言って、武器を抜く。騒動を聞きつけたギルド職員の偉い人たちと、野次馬の人たちによって訓練場はけっこうな人が見に来ていた。そしてギルド職員ぽい人が、はじめの合図で始めるように言う。何でも決闘には見届け人のようなものが必要なんだそうだ。誰でもいいらしいけどね。そんなことを考えていると始めの声が響く。
「はじめ!」
ゼパル含めて全員がこちらに武器を構えてよってくる。そして全員一斉に切りかかってきたり、後ろから中級魔法を何人かがうってきたりするのだが。
「あ、あたらねえ!」
「バカな、何人で攻撃してると思ってんだ!」
と口々に騒ぎ出す。そもそも空間魔法を使えるレンヤにとって、視界は360度のようなものだ。見えない攻撃はないし、ゼパル以外はランクで言うならDやC程度Bっぽいのも少しいるが、レンヤには遠く及ばなかった。剣を紙一重で避け続けながら飛んでくる魔法を全て相殺する。レンヤはすぐには反撃しないで一番心を折れる方法を模索し、一つの手段を選ぶ。
「貫け、 アイシクルランス」
一言呟くだけで、レンヤを中心に氷の槍が生成される。敵の数は30人ほど。人数の倍ほどのランスを作り上げ、それぞれに飛ばしていく。この攻撃だけで数人いたBランク以外は両足を貫から地面に縫い付けられていた。残っていたBランク3人ほども、ゼパルを含めて足に深い傷を負ったり、腕を貫かれたりして、既に傷だらけだった。
「ふざ、ふざけんな…!何てことしやがる!俺のパーティメンバーもいたんだぞ!」
とゼパルが叫ぶ。貫かれた奴らは呻き声を上げるだけで、言葉を発しない。これにはギルド職員や観客も度肝を抜かれたようで、彼らも一言も発さない。そんな中でレンヤは。
「馬鹿かお前は。決闘なんだから怪我くらいするだろうが。お前らはまだやれるんだろ?続きをしようぜ。ま、多対1が決闘と言うのかは知らないけどな」
そう言って俺は魔法を唱える。
「焼き尽くせ、フェニックス」
俺の背中に莫大な熱量をもった不死鳥をかたどった炎の鳥が現れる。そしてその鳥は容赦なくゼパル含む相手へと突っ込んでいく。
「やめ、やめろ!嫌だ!嫌だ嫌だ!死にたくねえ!やめろ!」
「うわぁぁぁぁ死にたくないいいい!」
「やめてください!殺さないで!」
と既に動けない奴らを含めて悲鳴が聞こえる。そんな奴らを見ながらレンヤは呟く。
「弾けろ」
そう呟いた瞬間に炎の不死鳥は爆発する。一番近くにいたゼパルがもろに炎を食らう。それ以外もある程度は炎にやられたようだ。前もって訓練場の端に武器防具以外はアニータに預けておいたからいいものの、武器防具もあとで売ろうと思っていたので、やらかしたと思いつつ、燃える訓練場の炎を消す。
誰も死んでいない上に致命的な攻撃を受けたものもいないが、重傷者は多く、全員が入院コースなのは一目瞭然だった。それを狙ってやったレンヤも大概だが。
そんな中でレンヤは言い放つ。
「決闘は俺の勝ちだな」
正直ボロクソに言われていたのでイライラしてやったのもあるので、武器防具くらいは奪わないでやろうと思い、アニータの元へいく。
「アニータ、依頼を受けに行こう」
「えっ、でもあんなに威力の高い魔法を使ったのに…大丈夫なの?」
あいつらの心配を少しもしないアニータもあれだが、いままでよっぽど辟易としていたのだろう。その顔は心なしかスッキリしたような顔をしていた。後ろではギルドメンバーやそいつらのパーティメンバーなどが大慌てでそれぞれのやつらを運び出していく。
「大丈夫だよ、魔力も大して使ってないしね依頼を受けるくらいはできるよ」
と言うと、後ろで聞いていた奴らが戦慄したような顔をしていたのだが、そんなのをみていないレンヤには知る由もなかった。
そしてアニータから決闘した奴らのお金を全部受け取ると結構な額になった。全部で金貨212枚と銀貨が237枚。銅貨はめんどくさいから数えていない。それを全部アイテムボックスもとい異空間に入れる。
(いいお小遣い稼ぎになりましたね主様!私とてもスッキリしました!)
最初は面倒見のいいポワポワ系お姉さんだと思ってたけど案外ティタニアはダメな子かもしれないと思いつつ、さっき出し損ねた依頼を出す。一応アニータにも確認するか聞いたけど、Bランクくらいならどうとでもなるからと言われたのでろくに確認せずに出す。依頼の詳細を書かれた紙を受付嬢から受け取って、レンヤは何事もなかったかのようにアニータと依頼へ向かう。
(人生初の依頼だ。実はちょっと楽しみ)
などと考えつつ、レンヤは人生初の依頼へ挑む。