大木の上の住処にて
今日はこれで終わりです
葉っぱの上にある家なんていうメルヘンチックな家に遭遇してすこしトリップしてた蓮也。意識を取り戻し一応確認する。
「あの家…入ったら落ちるとか…」
「そんなのないよ」
笑われてしまった。いまだにフォンさんは笑っている。こうなるとわかってて言わなかったのだろうからなかなかいい性格をしているようだ。
「そんなに笑わないでくださいよ…。で、どうやっていくんですかこれ?」
至極まっとうなことを聞いてみる。それに対してどこか試すように言われてしまう。
「君の魔法でなら行けるのではないか?私は魔法で行くから魔法の練習も兼ねて飛んできてくれ。無理そうなら言ってくれれば私が連れて行くよ」
そう言って本当に呪文のようなものを唱えて行ってしまった。
「そんなこと言われてもなぁ…あぁ、ワープでいいや」
とりあえず浮かんだのでワープで行こうと思ったのだが俺だけが踏める空間を階段のように作れば上にいけるんじゃないかと思いたち、失敗したらワープで行くことにして、人には見えない俺だけが踏める空間を作り出す。
「なんか空間掌握魔法がとんでもないくらい便利になってきたな…」
1段目に足をかけながらそう呟く。流石神様がくれた魔法。とんでもないね。フォンさんを見てると魔法には詠唱が必要そうなのにそれもないし…ほんとにイメージするだけでできるからすごいね…でも、よく使う奴には名前をつけておこうかな…。そんなことを考えながら階段を上っていく蓮也。何もないところを踏みしめて上ってくる蓮也に言い出したはずのフォンさんもびっくりしたようで上で驚いている。その顔を見て蓮也はすこしやり返してやったと満足していた。
「いやすごいね、長年生きてきたけどそんな魔法は見たことないよどんな魔法か聞いてもいいかな?」
それを聞いてすこし迷う俺。たしかにフォンさんはいい人だがそこまで教えていいものかと。それを見てなんとなく察したらしいフォンさんは苦笑を浮かべ
「いや、言いづらいなら構わないよ」
と言ってくれた。すこし申し訳なかったが御言葉に甘えることにしよう。
「すみません助けてもらってるのに…」
「いや、普通は人に魔法の概要など明かさないよ。私が不躾だっただけだ。忘れてくれ」
やはりこの人はいい人なんだろうと思う。だが目的を果たすまでリスクは減らさないとな…。そう思っているとあのメルヘンチックな家に入る時が来た。フォンさんが先に開けて入ってきていいと言われて普通に入って行ったのを見ているがやはり入る時すこし緊張してしまう。
ゆっくりと家の中の玄関らしきところに足を踏み入れる。奥でフォンさんが俺の様子を見て苦笑しているが慎重にならざるをえないのだ。見逃してほしい。
「そんなにきになるものなのか…やはり転移前の世界にはこんなのはないのか…」
とフォンさんは呟いている。勿論こんな家ありませんとも。とりあえず問題なさそうなので玄関で靴を脱ごうと思ってみると靴がボロボロなのに気づく。これは街まで歩くのに耐えられるだろうか…。
そんな様子を察したらしい気の効く男ことフォンさんは笑って言ってくれた。
「服など一式もあげるよとりあえずそのまま中に入ってくれ。」
申し訳なさでいっぱいだがいづれ恩を返そうと思って中に入る。リビングのようなそこは外観よりだいぶ広いように見えたが魔法なのだろうと割り切ってそのセンスのいい映画にでてくる中世の貴族の部屋のような部屋を座っててくれと言われたソファに座りながら眺める。フォンさんはどこか別の部屋にいってしまいだいぶ手持ち無沙汰だ。机の上にはよくわからない本などが置かれている。その机の真ん中にやたら古そうな本が置いてあった。すこし気になったので読んでみる。
精霊契約
どうやら精霊契約とやらについての本らしい。読んでみると話は簡単だった。世界にはたくさんの自然がありその自然と共存している精霊たちがたくさんいるらしい。そしてそんな精霊を呼ぶための方法が書いてあった。専用の魔方陣を用意し、頭の中で自分が最も美しいと感じた自然の情景を頭に浮かべて精霊に呼びかけて、現れてくれれば契約が可能な中でもっとも格の高い精霊が出てくるらしい。どうしてそうなるのかとか格の高い精霊を呼ぶにはどうするのかとかは諸説あるが本人の資質が一番大事というのがもっとも有力らしい。後でやってみよ。と思って本を置くと丁度フォンさんが服を持って戻ってきた。
「私の昔のしかないがこれで我慢してくれ。」
「とんでもないですありがとうございます!」
ボロボロの制服をぬいで持ってきてくれた服に袖を通す。サイズはすこし大きいくらいだった。
「問題ないですありがとうございます」
「ならよかった…ところで蓮也くん、君、これからクヴェルに行くんだよね?
なら、僕が昔報酬で貰った武器防具を一式持っていかないかい?」
ととんでもなく有難い提案をしてきた。
「ここの近くの魔物は強い。ここの魔物を簡単に蹴散らせるなら大体の魔物には勝てるだろう。魔物にも人にもランク分けがあってね、人は冒険者限定なんだがE〜Sまで、魔物も同様だ。そしてここら辺はBクラスの魔物がポンポン出てくるようなところだ。正直その装備では心もとない」
そこまで心配してくれる上に装備までもらえるなら願っても無い話ではあるがあいにくそんな報酬で貰えるような凄そうな装備に払える対価がないそのことを伝えると、
「神に愛されている君のような人から対価なんてもらえないさ。今も使ってるものとかなら困るけど私自身は使ってないものばかりだしね。遠慮なく持って行ってくれ」
そう言われ、着てみるとやたら軽いのにとんでもなく頑丈なローブや綺麗な短剣を何本かとなんか不思議な靴にマジックアイテムの指輪を二つほどもらいすべて装備してみた。
ローブの名前は邪神竜のローブといい、この世界最高峰の防御性能を誇るとんでもローブで、短剣は飛翔の短剣という魔力を通せば自在に操れる短剣で、靴はスレイプニルの靴といい、魔力と風の魔法の適正次第で飛べるらしい。ただよっぽど風の魔法に適性があって魔力がないとできないので普通は5歩くらい空中を飛べる靴みたいになるらしい。それとそれぞれの指輪は氷の指輪と風の指輪で、それぞれの魔法の威力とMPに補正がすこしつくらしい。なぜ氷と風なのかというとその二つが俺には適性があるらしい。詳しくは街で専門の計測器で測るなりしてくれと言われたけど。
それと新しくスキルを覚えられるスクロールを渡されてそのスキルのおかげで鑑定というスキルをおぼえた。これで魔物に遭遇した時もどんな敵かとかがわかるようになるらしい。物も鑑定すれば使用用途などがわかるらしい。ここまでしてもらって要求は一つだけだった。
「答えられないなら構わないのだが…君が出会った神様の名前を教えてもらえないか…?」
と、それだけしか言わなかった。彼に言われせれば神様の御使いと変わらない俺にそんな頼みをすることすら気がひけるらしいのだが。
「俺があったのはフレイヤ様って言ってましたよ」
そう告げると彼は破顔しそうか、と幸せそうな笑顔で答えてくれた。
そして魔物についての基礎知識と魔法の基礎知識とこの世界の常識を教えてもらったのだが基本的には地球と変わらないが、いまだに奴隷制度があることと、亜人、所謂獣人魔人などがいる、それと各国で信仰する神が違ったりなどという話を聞いた。魔物は魔石と言われる人間で言うところの心臓のようなものがあり、それを壊すか首を落とすなどすれば殺せるとのことだった。魔物によっては売れる素材があったり、魔石は生活する上での基本エネルギーとなっているのでどんなにしょぼくても大体のところが買い取ってくれるとのことだった。
ついでにさっき呼んだ精霊のことを聞いてみると、
「なら今ちょっとやってみようか、そんな大変なことじゃないしね、エルフなんてみんな5歳でやってしまうようなことだ。」
といって召喚の準備をしに行った。
なのでその間にいままで見た中で一番美しい自然の情景を思い浮かべてみようと思い立ち、思い浮かんだ場所が宇宙から見た地球と、山の頂上にホテルがあるところに泊まりに行ったときに夜こっそり抜け出して森の中からみた夜空だった。
一つ目はどうなんだろうなと思いながら両方を浮かべることにして俺はフォンさんを待った。
明日も同じくらい出せたらいいなと思ってます