北の砦の吸血姫
俺とミオは、森に潜む全てのモンスターを駆逐していた
その結果、有り得ない程レベルが上がった
ミツキとマリーに話したところ
「あ、有り得ないわ!肉体Lvなんて」
と、言われた挙句
「シンタくん、なんかもう化物みたいに強くなってるわよ?」
と、ドン引きされてしまった
ミツキは思う
この10ヶ月は何だったのかと
モンスターと戦うのは恐ろしかったし、楽しかった
少しづつ強くなるのも実感出来たし、わずかな期間で強くなったのも、なんだかチートぽい感じはしたが、嬉しかった
だが目の前のこの男。
シンタはまだ2週間も経っていないのに、こんな強さを手に入れて
しかも森に潜むモンスターを根こそぎかってしまった
元々、ミツキ四人はこの森を含むモンスターと戦うために、斥候として来ていた
報告をし、軍隊の応援をもって攻め込む予定だったのに
ミツキは今までこの世界で培った常識が根こそぎ崩れていった
それはもう、ガラガラと
「で、どうする?行くか?」
「え?」
「いや、まだラスボスが残ってんじゃん」
あ、ああ、とミツキ
太陽も登って来ているし、予定の時刻だ
ドルファーはまだ寝ているが、ソラと結界に残して置けば大丈夫だろ
そういや、このシステムがインストールされたのは俺だけか
ミツキやマリーにコピーできないのかな?
まて
そもそもこのシステムはダグルを倒して手に入れた
ならば、中のボスをミツキとマリーで倒せたなら
なんか違うな
固有スキルを手に入れたときどうした?
感知スキルだ!
そうか、感知スキルがアップデートを感知したから、それでアップデート出来たのかもしれない!
「ミツキ、感知スキルでアップデートを感知出来ないか?」
「感知で?」
「ああ、そのつもりで俺を感知してみてくれ」
「うん、よく分からないけどやってみる」
目をつぶり、集中するミツキ
「あ」
「出来た」
おお、やはり感知スキルか!
「で、どうだ?」
「うん、これは凄いね。・。ていうか、固有スキルが3つまでしか使用できないバグってなによ・・」
「まるでゲームのようだよな」
「そうね。この世界、なにかプログラムで動いているのかしら?」
「でもあれだ、俺たちがこの世界にいるのは事実だ」
ミツキは消えていたしな。あの学校の屋上で
存在が消えたというより、異世界移動していたしな
「そうね、それは確かよね」
「だからまぁ、使えるものは使っていこうぜ。でないと死んでしまうからな」
ミツキがあっとした感じになる
「ねぇ、私もちょっとレベル上げたいんだけど・・・」
「え」
「でももう、このあたりにモンスターはいないのよね?」
「ごめん・・・・」
なんか謝ってしまった
「仕方ない、ちょっとボス倒してみましょうよ」
「なんか急に積極的になったな」
「うん、シンタくんの急激な成長みちゃうとね。私もそうしてみたいじゃん」
キラキラした笑顔で、うらやましがられるとちょっとドキっとしちゃうな
「そういえばマリーさんはどう?アップデートできた?」
「ええ、私も出来ました。あっぷでーととは良く分からないのですが・・・・・・えっと。私には神の声で、「祈りは届いた」と聞こえまして、私自身にもLvが付与されました。」
「ふぅん・・・なんか俺たちとは違うんだな」
「そうみたいですね」
「とりあえず行こうか」
俺達は砦の入口へと進む
中は簡単な迷路状の作りをしている
入ろうとすると
「待って欲しいのじゃ主殿~」
寝ていたミオが目をこすりながらふよふよとやってきた
「大丈夫か?寝ててもいいんだぞ?」
「それはダメなのじゃー我も行くのじゃ」
ミオが魔法で扉をぶちやぶる
俺達は中に足を踏み入れた
螺旋状の階段を上っていくと、広い階に出た
その先には椅子がひとつ、座っている女が一人
「まったく、無茶をしてくれますね」
金髪のドレスを着た女が一人
「お前は誰だ」
ミツキが、ずいっと前にでる
「私の名前はイルミネ・ウル・ヴァーリ。吸血鬼よ」
綺麗な髪をかきあげながら、不適な笑みを浮かべる
「ダグルを・・・・ダグルをそそのかしたのはアンタ?」
「そうだけど?あの男、気味が悪かったわ。あなた方が掃除してくれて助かったわ」
「何を言ってる・・・お前が、ダグルを吸血鬼にしたんだろう!」
後姿だが、ミツキが怒っているのがピリピリと伝わってくる
「あはは、そうよぉ。力が欲しい。永遠の命がほしいですって、私の足を舐めるんだもの」
くすくす
「それに、そそのかしたりなんてしてないわ。あの男が、この部屋まで侵入してきて私を見るなり」
「お美しい」
「なんて、言ってたわよ」
・・・・・・
「ダグルさんならいいそうですね」
「マ、マリー・・・・」
ミツキがあきれた感じでマリーを見る
「それよりも、お姉さま・・・イルミネお姉さま、私も、お姉さまと同じ吸血鬼になりたいです」
「!?」
あ、これアレだ
「主殿」
「わかってる。ミツキ、魅了だ。魅了でやられているんだ」
はっとしてミツキは
「ごめん、マリー」
手にしていた剣の柄の部分でマリーの腹部に一撃入れる
「うぐっ」
ドサリとマリーは木を失った
「ふう、ちょっと吸血鬼」
「何かしら?」
「アンタがスキルでやってるんでしょうがぁ!」
ドン、と床を蹴り吸血鬼に切りかかるミツキ
それを吸血鬼イルミネは
「あらやだ、危ない」
そっと指で
剣を掴んだ
「くっ!嘘でしょ!?」
剣を引いても、押してもびくりともしない。
そのままひょい、っと指をふると
ドガァ!
壁までミツキが飛ばされた
「あら。。。まだ弱いのね、勇者って。なんでここに来たのかしら?」
くすくす
「もういいわ、あなた方。そこの偽勇者を拾って帰りなさい」
座ったままの吸血鬼イルミネはそう言う
「俺たちを見逃してくれるのか?」
「ええ、だってまだそんなに弱いなんて思ってなかったんですもの。もう少し鍛えてからいらっしゃいと、気がついたら伝えていただけるかしら?」
「俺は相手にもならないのか?」
「そういうわけじゃないわ・・・勇者は育ててから、頂かないと・・・・・・・・・美味しくないのよ」
ふうん。何か変な感じがするな
「ちょっと俺の相手もしてくれないか?」
「いやだわ、あなたみたいな勇者でもない唯の人間が相手になるわけないじゃない」
感知スキルで俺の強さがわからないのか?
何か変な違和感ばかりだ
だが、コイツはこのまま見逃したら後でミツキになんか言われそうだし、倒しておこうかな
スッ
床を蹴る。音がしないように。だが速く、速く、速く
フッと吸血鬼の後ろに立つと俺は剣を振る
ザシュ
座っていた椅子ごと、吸血鬼を両断する
が、
ざぁぁぁぁぁ
切れた場所が瞬時に修復されていく
ビクンと吸血鬼がしたかと思うと
ばっと立ち上がり後ろを振り向く。目が会う
「あなた何者ですか。今、何をしました」
キッと睨み付けてくる吸血鬼
「普通に、後ろをとって剣を振っただけだ」
嘘は言ってない。ただ、Lvアップによる大幅なステータス上昇があるけど。
ゴクリ
喉を鳴らす吸血鬼
「そんなハズはありません。それに、私を切れる剣ですか・・そんな物を何処で手に入れたの」
「や、アリスにもらった剣だけど」
「魔女アリス!あなたあの女の手先なの?」
「手先じゃないとおもうよ。いろいろ良くして貰ってるけど」
「・・・・・危険ね。死になさいな」
吸血鬼イルミネは俺を敵と認識したのか、そう言った