スキル、剣神
「ドルファー!」
血まみれのドルファー、そこに走り出そうとミツキが動いた瞬間だった
ドルファーの胸から剣が生えた
「動かないで、いただけますか?ミツキ殿」
ドルファーの後ろから、すうっと横に一人の男が現れた
「がふっ」
ドルファーが吐血する。そして
「逃げ、ろ、ミツキ、マリー、グルが、ダグルが裏切った!」
「ドルファーさん!」
マリーが叫ぶ
「ダグル、あんたどういうつもりよ」
ミツキが、ダグルをにらみつけながら魔力を展開する
「ミツキ殿、永遠とも言える命がほしくはないか?人の命は短すぎるとは思わないか?」
そう、のたまうダグルの口元から牙が見える
「ダグル、あんた吸血鬼になったの?」
「ふん、この先におられる御方こそ新の主にふさわしいと思わないか?」
にやりと笑うダグル。だがその目は虚ろに蠢いている
「操られているようじゃの。どれ、助けてやろうか?」
ミオが魔法を放とうと手を前に出した瞬間
「無双結界」
ダグルが笑いながら魔力を行使した
ダグルの固有スキルが発動する
「なんじゃ・・・と・・・魔法がつかえんようじゃ・・・」
「あははははははは。これがあの御方からいただいた固有スキル、無双結界だ!」
「俺を中心に約100m、俺以外の魔法の行使を禁止させることができるのさ!」
がふっとドルファーが倒れるその瞬間
ダグルが消えた
ガィン!と凄まじい金属の衝突音
ガガガッと土ぼこりを巻き上げながら、ダグルとミツキが剣を交える
ちらり、とミツキがマリーにアイコンタクトを送る
呆けていたマリーが、ドルファーの元へと走っていき、刺さっていた剣を抜く
「すみません、シンタさん手を貸していただけませんか?」
「え?」
「ダグルさんのあの固有スキルの範囲がおよそ100mといってました!ドルファーさんに回復魔法をかけたいのですが、この場所では魔法が発動しません。今ミツキがダグルを引き離していますのでこの隙にドルファーさんを回復できる場所まで連れて行きたいのです!」
「わ、わかった!」
ドルファーの胸の周りに、布を巻きつけ止血する。そのまま俺はドルファーをおぶって走り始める
「おっも!重い!」
俺ははぁはぁと息を切らしながら馬車までドルファーをつれていき、馬車の荷台にのせる
馬車に俺とマリーが乗り込むと
「出しますっ!」
ソノが一気に馬をはしらせ、戦場から離脱する
「ははは、お仲間から見捨てられちゃったよ?大丈夫ですかミツキ殿」
ギィン
「ダグル!目を覚まして!」
ギィン
「私の目は、ようやく覚めたばかりですよ。あの御方によって、ね」
「吸血鬼化によって私のステータスは大幅に上がっているはずなのですが。。ミツキさん、これほどまでに強くなっていたとは」
ダグルとミツキの実力は拮抗している様だった
ミツキが振り上げた剣を一文字に切る。それをダグルは斜めにした剣で、上にすべらすように回避する、そのまま下に回し蹴りを放つ
だがミツキは思い切り剣を突き出す、ダグルは後ろへと飛んでかわした
「さすがミツキ殿ですね。吸血鬼化したのに、まだ分が悪い・・・魔法も封じているというのに」
「ダグル、あきらめてこの結界を解いて」
「もうひとつ、試しましょうかね」
「二重分身」
ダグルの姿がぶれる。そしてそのまま二人に分身する
「なっ!固有スキルが二つ同時にですって!?」
「「ふふ。。。これがあの御方の力ですよ。それではそろそろおしまいにしましょうか」」
ダグルが二人同時に、同じセリフを言った。
~~~~~~~~~~~~~~~~
「ヒール!」
ドルファーの肉体が優しい魔力に包まれて光る
その胸の剣傷は光とともに治癒が進んできえる。ほんの一瞬の間にドルファーの傷が癒えた
「すごいなミオ」
これがミオの回復魔法か。ほぼ瀕死になっていたドルファーの傷がすべて癒える
「すごいです。。ミオさん」
マリーが驚愕の表情で讃える
「じゃが、さきほどの「無双結界」とはなんなんじゃ。我の対魔法防御も一切きかなんだし」
「そうだよな・・・ミツキも魔法が使えない感じだったし」
マリーが口を開く
「あれは、「固有スキル」です。魔法ではありません。一人1つから3つほど習得ができるとされていますが、入手の方法を含め定かではありません」
「ミツキの「固有スキル」は、「七つ命」連続で七回殺されるまで、死が訪れません。私の固有スキルは「聖者の冠」回復や防御魔法などの聖属性の効果が高くなるスキルです」
「へぇ、ドルファーもあるの?」
「ええ、ドルファーさんの固有スキルは「万丈の壁」これは相手の攻撃をほぼすべて防御しきるというスキルですが、先程は展開する間もなくと言った感じでした」
「で、ダグルが魔法無効化の「無双結界」ということか」
「いえ、ダグルさんの固有スキルは「二重分身」で、ダグルさんそのもの、が一時的に2人になるという非常に攻撃的なスキルだったはずなのですが・・・・」
「さっき、あの御方からもらったって言ってたな・・・」
「はい。どうやら、固有スキルを覚えたようですね・・」
「ドルファー、大丈夫か?」
「ええ」
だがドルファーの目が覚めない。鼓動はしている、精神的にもダメージをうけているらしく、それは魔法では治せないということだった
「んじゃ、俺ミツキ助けに言ってくるわ」
「え、危ないです!彼女たちの戦いに追随できると思えません!」
「そもそもシンタさんはこの世界に来たばかりで固有スキルももっていないんじゃないですか!?」
ー「固有スキルプラグインを確認しました、インストール致します。」-
ー「インストールが終了しました。これより固有スキルの使用が可能になりました」-
「あー・・・・・それなら今手に入れた」
「はい?い、今?」
「ああ、とりあえずなんとかなりそうなスキルだから、ミツキんとこ行って来るわ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「くっ!」
ダグルの剣を凌ぐのが精一杯になってしまった。それどころか押されている
「ふふふ、ミツキ殿、斬り刻んで差し上げますよ。ははははははははは」
笑いながら2人のダグルがミツキを追い詰める
もはや勝敗は明らかだった
「きゃぁ!」
ざくり
ミツキの腕に剣がささる。両腕に
力が抜けてカランと剣を落とす
「ははは、ミツキ殿もう終わりですか。それでは死んでください」
くわぁと大きく口を開け、牙をむき出しにするダグル
血を吸われるー
その瞬間だった
「ほい、ちょっとまった、ダグルさん」
俺はダグルの横にいた
「何っ!?」
驚愕するダグル。今まで気配は感じなかった筈だ
ダグルは危険と判断し、一気に離れる
「ちょっと俺の相手もしてもらえんかな?」
俺はダグルの横に立つ
瞬間、ダグルの両腕が落ちた
「があああああああああっ!」
苦悶の表情で叫ぶダグル。ミツキの両腕から剣を抜き、その剣を掴んでいるダグルの腕がついたままぽいっと捨てた
「おーよく切れたわ」
「キサマッ何者だ!何をした!」
「あー質問は1個づつな?」
瞬間、ダグルの両足が斜めにズレた
「ぐぎゃっ」
ダグルが前のめりに倒れささえる手のないダグルは顔面を強打する
「シンタ・・・君?」
虚ろな目でシンタを見る
なぜ、ここにいるのか。そしてどうやってあのダグルの両手両足を切断してしまったのか
何が起きたのか分からない
「うへ、きもちわり」
うねうねと切断した手足から血管が伸び、胴体とくっつこうとしている
「き、キサマァ何をしたぁ!」
「何って、固有スキルだよ」
「固有スキルだと!?」
ぼーっとする・・・魔法が使えないのでミツキは回復ができず、血が回っていない
だがその鈍い頭で会話だけは聞こえている
「あぁ、ついさっき手に入れてな。使えそうだったんで使ってみたんだよ」
「固有スキル「剣神」ってやつ。なんでも切断できちゃうみたいだぜ?」
「そ、そんな固有スキルがあってたまるものか!そんなスキル、反則だろう!」
「そういわれてもなぁ。ダグル、アンタの固有スキルの「無双結界」も大概反則だろうよ」
「だから、このスキルで今からアンタを切り刻むけど、恨むなよ」
「ちぃ!「二重分身」」
ダグルは話している隙に回復していた。だがこのままではマズイ、体制を立て直さなければならない
正体不明のスキルと戦うのは危険すぎると思ったからだ
ミツキは追い詰めたが、いざとなれば撤退もやむを得ない
分身を残し、ダグルは後方に跳躍する
シンタの目には一人のダグルしか見えないように分身し、そのままいっきに後方へ飛んだのだ
「ほい、固有スキル「一つ前に・戻る」」
瞬間ダグルの固有スキルは解除され、跳躍する前にもどる
「なっ!」
ダグルの顔が恐怖に引きつった
「おかえり、んじゃ、さよならだ」
俺はもう一度、固有スキルを発動させた
ー「剣神」ー
ー敵の撃破を確認ー
ーよりバージョンの高いシステムファームウェアを確認しました。-
ーインストールしますか?-
ーはいーーーいいえーーー
ーはいーー
ーインストールしました。再起動します。-
ーようこそ、エデンへ。システムウェアのバージョンが更新されました。-
ー変更点は以下の通りです。-
ー肉体にLvシステムが適用されました。-
ー「固有スキル」プラグインの、3つまでしか使えないバグを修正ー
ーいままで獲得した経験値の反映ができます。-
ー以下、修正点をまとめたものになります・・・・・・・・・・・・・・・・
頭の中に、声が響いた
~~~~~~~~~~~~~~
「あ、ありがとうシンタ君」
先ほどの戦いでミオは両手が剣で貫かれていた
それをミオが回復させたのだ
「治したのは我じゃぞ?」
「ごめん、ミオさん、ありがとう」
「うむ、かまわんのじゃ」
くねくねと身をよじりながら耳を真っ赤にするミオ
ミツキの傷は、傷跡すら残さずにミオが治した
「で、ドルファーは大丈夫か?」
俺はミオを抱っこしながら話しかける
「ええ、おかげさまで今はまだ眠っています」
「それにしても、ダグルを一瞬で倒していたね、シンタ君」
「ん、ああ、ちょうど使えそうな固有スキルを覚えたから」
「ちょうどで覚えられるものじゃなかったんだけど?私は」
ミツキはあの苦労はなんだったのかと思った。あの、死にそうになりながら手に入れた固有スキル
「ソノさんもありがとう、ドルファー、運んでくれて」
「あああ、いえいえいえいえいえ。お馬さんががんばってくれたんです。お、お礼ならお馬さんにお願いします」
「お馬さん、ありがとう」
ヒィンと馬が鳴いた
「じゃが。我の魔法は使えぬとか言うことはあるとはのう。この世界は侮れぬわ」
「そうだなぁ・・・魔法が使えなくなるとか想定外だったよ」
「すまぬ主殿・・我は役に立たんかった」
「いいさ、俺はもなんか強くなったみたいだし」
「次こそは役に立ってみせるのじゃ!」
その瞬間
景色がぐらりと変わり
大きな砦の前に、転移した
北の砦の前に