吸血鬼イルミネ
「死になさい」
そういうと、その綺麗な吸血鬼は、紅い瞳を爛々と輝かせた
闇がその姿をかたどったような、そんな昏いオーラを纏わせる
右手の爪がギュっと伸び、そして俺を切り裂かんと右腕を振るう
俺は瞬間、後ろに飛び避ける
ザシュ
俺の着ていた服が・・・・切り裂かれる
「結構本気で避けたのにな・・切られるのか」
本気で避けて、切られる
アレだけのレベルアップがあったのにも関わらずにだ
結構吸血鬼、ガチで化け物だったか?
「避けれるハズはないのですけれど・・・」
吸血鬼は不思議そうに首をかしげる
そのまま、「左腕」を突き出すと
ッズ!
爪が一瞬にして伸び、俺の心臓を貫こうとする。
だがその気配を感じて、ミツキの持っていた盾で防ごうとするが
カン
と甲高い音を鳴らして盾は貫かれる。
俺は体を横にして、かわす。
「今のが見えるハズもないのですが」
冷徹に輝くその瞳から、困惑しているのを感じ取る
「切れないハズに見えないハズか・・・あんた調子に乗りすぎてんじゃねえのか?」
「どういう意味です?」
「俺がそんなに弱いと、見下しすぎてるんじゃないかってこと」
そういうと俺は床を蹴る。本気で
一瞬で吸血鬼の横へと駆け寄ると剣で一文字に一閃する
そして、殺気を感じて後ろに飛ぶ
俺のいた場所に、小さなクレーターができた
へこむ瞬間を、まるでスローのように見ていると
バゴン
音が遅れて聞こえる
ぶわっ
俺は冷や汗をかくが、それはクレーターが出来たことに対してではなく
「おかしいですね、あなた。なぜそんなに速く動けるのかしら?」
俺の真横に立つ吸血鬼からの殺気
「あんた、どんだけ強いんだ?」
俺は余裕で勝てると思っていた、だがこの吸血鬼はそれをさせてくれない
「それは私のセリフよ。あの女勇者は、予定通りの強さだった。でもあなたはおかしいわ」
「どういう意味だよ」
「ここまで強くなれる人間は勇者以外にありえないからよ」
「そうか、それで俺が勇者じゃないのがおかしいと?」
「そうよ、勇者はあの女」
意味深な気がした
だが俺は深く考えることが出来ない
そのまま吸血鬼の攻撃を回避
そして、俺は剣を突き出す
どうも、調子がでないな・・・・・・
吸血鬼を貫く剣
「かふ」
吸血鬼が吐血する
「やっとダメージか」
「ふん、これっぽっち効かないわ」
「そうだろうねっと」
剣を再び、突き出す
そしてそのまままわし蹴りを同時に繰り出すと
バキィ
吸血鬼の足を叩き折る
「キャぁーーーーーー」
折れた足は引きちぎれ、吹っ飛んで壁にぶち当たって血糊を残して消える
「んじゃ、そのまま死んでくれよ!!」
俺は剣で粉微塵にするつもりで切る!
だが
一瞬で再生する足
そしてついに
バギィ!!
吸血鬼が俺の心臓を、その爪で突き刺した。
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「ふあ!」
「ん?」
なんか不吉な夢を見た
「あれ?主殿がおらんの」
横にはソノとドルファーが寝ている
「無防備じゃのう」
ソノとドルファーの額に、取り出した油性ペンで
「バカ」
と書く
さて、主殿を探すか
ふむ、砦に入ったか
魔法を発動する
瞬間移動
ズッ
移動すると、砦の大広間
目の前には紅い目をした吸血鬼
壁際にはミツキが倒れており、
足元にはマリーが倒れている
お、主殿おった♪
「主殿、何をしておるのじゃ。はよう倒してしまわぬか」
そう言うと
「無駄よ。あなたの主殿は今夢の中よ」
ふむ
「幻術か?」
「ええ。私のスキル「夢幻の王室」にうまくかかってくれているわ・・・」
「で、どうするつもりかの?」
「この男、なかなか強いみたいじゃない。私の幻術がかからなかったら危なかったかもしれないわね」
「だから、吸血鬼化して手ごまになってもらおうかしら」
くすくすと笑う
「それを我が許すとでも?」
腹が立つのう・・・スキルか
「あら、おじょうちゃん。私と戦う気なの?確かに魔力はそこそこあるみたいだけど」
吸血鬼の眼が、爛々と紅く輝く。
「ふむ、それがスキルの発動じゃな?」
「え・・・」
「我には効かぬよ、その程度の幻術などな」
魔法結界が13重。それを展開させている
「その程度のスキルにかかってしまうとは仕方ないのう。主殿も」
「お前は何者だ?」
吸血鬼の口調が変わる
「ふむ、その口調もまた、幻術のキーか」
言霊じゃな
「ヒィッ」
全てを見透かされた吸血鬼は・・・おびえ始める
「なぁ、我の主殿を幻術で弄んだ罪は重いぞ?」
「ちょ、ちょっと待ってくれないかしら?」
「待たぬよ」
そう言うと、
抑えていた魔力を開放させ始める。
徐々に、徐々に
「ねぇ、吸血鬼化はやめるわ、この男も返すし、勇者もそこの女も返すわ!」
「じゃから?」
「見逃してくれないかしら?」
「だめじゃな、我の気がすまん」
瞬間転移しようと、足掻く吸血鬼。だがミオの結界はそれを阻む
バリンっと大きな音を立てて阻害される
「ギヒィ」
ドシャァ
そのまま床に叩きつけられる吸血鬼
「逃げられんようにさせてもろうたよ」
「そそ、そんなことができる魔法使いなんて、まさかアリス!?」
「ふん、あの人間か。我の名はミオじゃ。覚えんでいい。すぐに殺してやるからの」
徐々に大きくなっていた魔力は全力に達する
主殿と、一緒に強くなった魔力が
「ヒィイイイイイ!な、なんなのそんな魔力!ありえないわ!」
ガクガクと、震える吸血鬼。
「じゃあ、あの世へ先に行っておれ」
魔力球を生み出し、放つその瞬間
「あれ?俺やられたんじゃ?ミオ?」
主殿が幻術から覚めたのじゃ