第二話「大切なもの」Part.2
「まこ、まこと!」
急に肩を揺すられ、女性は目を覚ました。
(あれ?ここは‥‥)
気が付くとそこはBARではなく、明るいカフェレストランだった。
「どうしたんだよまこ、こんなとこで寝ちゃって。疲れてんのか?」
まこと呼ぶその男性は、女性の付き合っている彼氏だった。
しかし何処かおかしい。
(なんか、微妙に若いような気がする‥‥)
女性、真はハッとして周りを見た。
(ここは、あのときの店‥‥‥)
それは、真の彼氏が初めて真にお金を出させたあのカフェだった。
(まさか‥‥‥)
携帯電話のディスプレイを見ると、『5月10日(日)PM1:15』と表示されていた。
(ウソッ!これ‥‥あの日だ!!じゃあ、まさかここ・・・・)
真は、自分があの日のあの場所にいる事が解り、信じられない思いだった。
「なあ、そろそろ出ないか」
彼が言った。
真には、この次彼が何を言うのかもうわかっている。
「あ、そうだ!悪い、今日じつはお金少なくてさ、まこ、俺の分も払ってくんないかな」
お願い!
と、彼は真の前で手を合わせる。
そんな彼に、真は静かに話し出した。
「ねぇ俊ちゃん、アタシね、俊ちゃんのこと大好きだよ」
真の言葉に、彼、俊一は顔をあげた。真は彼の目をまっすぐ見つめて続ける。
「だからね、お金は出せないよ。俊ちゃんのこと、嫌になりたくないから。ずっと素敵な自慢の彼氏でいて欲しいから」
「まこ‥‥‥?」
俊一は目を丸くして真を見た。
「ごめんね俊ちゃん、アタシ、本当に大切なものは何なのか気付いちゃったの。甘やかすだけが、愛じゃないんだよね。だから‥‥‥‥」
さよなら―――
真はその場から立ち去った。
後ろから俊一の叫ぶ声が聞こえても、構わずスタスタと歩いた。
出口に向かって。
カフェの扉に手を掛け、外に足を踏み出したそのときだった。
視界が真っ白になり、真は光に包まれた。
(なにこれ――!)
光の中、真の意識はすぅっと薄れていった・・・・。