第一話「思い出の店」Part.3
「あ・・・・・・あれ?」
視界が晴れると、カウンターが目に入った。
そこは、元いたBAR『 幸せ一丁目 』。
「どうしました?」
バーテンの声に、恭子はまだぼうっとしながら辺りを見回した。
(さっきまでのは、夢・・・・?)
夢にしては、あまりにリアルな。
まだ、あの懐かしい感触が残っているようで、恭子は唇にそっと指でなぞった。
いい、夢だった。
あの頃のままの優しい彼に会えた。
(幸せな、夢・・・・)
懐かしい感覚に浸りながら、グラスに残るカクテルをゆっくりと飲み干したその時だった。
-----キィ・・・・
静かにドアが開く音がして、恭子は思わずそちらを見た。
「--------!! 」
そこにいたのは、まぎれも無くあの彼だった!
あの頃より幾分落ち着いた雰囲気が、時が過ぎた事を感じさせる。
「待ったか?ごめんな」
まっすぐ恭子に向けられた瞳は、あの頃と変わらず優しくて・・・・・。
(まさか!あれは、夢のはずなのに!?)
「なんだよ、記念日にここで待ち合わせしようって言ったのに遅れたから怒ってるのか?」
瞬間、恭子は彼に抱きついていた。
「お、おい、は、恥ずかしいだろ!?こんなとこで・・・・・・・・ 」
慌てる彼の声を聞きながら、恭子は顔をあげてキスをした。
「愛してる・・・・」
カウンターの奥では、バーテンが静かに微笑んでいた。
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<次回予告>
女は悩んでいた。
己の愛に。愛するが故の葛藤に。
愛故の過ちに気付いた彼女を待っていたのは?
次回【ここは幸せ一丁目】
第二話「大切なもの」
☆お楽しみに☆
☆マスターのカクテル講座☆第一回「ピーチフィズ」
材料:ピーチ・リキュール (45ml)、レモン果汁(1/2)、グレナデン・シロップ(1tsp)、ソーダ水 (適量)、砂糖(少量)
作り方:ピーチ・リキュール、レモン・ジュース、砂糖をシェーカーに入れ、シェークする。タンブラーに注ぎ、氷を加え、ソーダ水で満たす。
特徴:ピーチ味の爽やかなカクテル。アルコール度は低めで女性にもオススメ。