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ここは幸せ一丁目  作者: 七瀬 夏葵
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第四話「友達」Part.4

グレープフルーツの良い匂いがする。


(香水なんかつけてたっけ?)


ぼんやり思ったそのときだった。


「‥‥‥もしもし」


声がした。

ハッとなり目を開けると見知らぬ男がこちらを見つめていた。


「大丈夫ですか?」


「あれ?ここは‥‥」


辺りを見回すメイに、男は微笑んで答えた。


「気がつかれましたか?ここは私の店ですよ」


その言葉で、ようやく記憶が繋がった。


(ああ、ここはあの店か‥‥)


ぶつかったお詫びにカクテルをご馳走になって、その後潰れてしまったのだろう。

さきほどまでの事は夢だったのだとガッカリした。

それにしても、まさか知らない人の前で飲んで潰れてしまうとは。

メイは思わず顔を赤らめた。


「ごめんなさい、アタシ、寝ちゃったんですね」


すると男は申し訳なさそうに言った。


「すいません、まさかそんなに弱いとは思わなくて・・・」


アルコールもっと少なくすればよかったですね、と男は申し訳なさそうな顔をした。


「いえ、私が悪いんです。弱いくせにカクテルお願いしちゃったから。ご迷惑かけてごめんなさい」


メイは深々と頭を下げた。


Piririri‥‥‥


電話が鳴った。


「あ、ちょっとごめんなさい」


メイは慌てて電話を取った。


『もしもし!今どこ?』


マサルだった。


「え?その、歌舞伎町だけど‥‥‥」


メイが答えると、マサルは詳しい場所を聞いてきた。

どうやら近くにいるらしい。


『そこ、動くなよ!』


ツーツー‥‥‥


切れた。


(急にどうしたんだろう?)


これまでは連絡なんて全然してこなかったのに。

メイが首を傾げていると、ややしてバタンとドアが開く音がした。


「メイ!!」


マサルが立っていた。


「マサル!どうしたの?」


「メイの友達に聞いて歌舞伎町探してたんだよ!全く、いくら喧嘩したからって、一人でホストクラブに行こうとするなんて危ないだろ!?それに・・・・」


俺という彼氏がいるのにさ、と、すねたように呟くマサルに、メイは思わず耳を疑った。


「彼氏!?マサルが?」


思わず叫んだ。


「そりゃないだろ」


マサルはガックリ肩を落とした。


「もう俺、彼氏じゃなくなってるわけ?うっかり記念日忘れたからって、そりゃあんまりだろ」


訳が分からず、メイはマサルに尋ねる。


「あの‥‥記念日って‥‥?」


「俺たちの交際三か月記念日だろ?忘れて悪かったよ!ごめん!許して!」


(交際三か月?じゃあ、まさか‥‥‥)


「ねえマサル、あの新入生歓迎会の日、あたし、マサルに好きって言えなかったよね?」


「うわ!何それ!?ひどいなあ、もしかして言わなかったことにしたいの?やだよ、勘弁してよ!来月は絶対埋め合わせするから許して!ね!お願い!!」


焦って謝り倒すマサルに、メイは思わず呟いた。


「夢じゃ、なかったんだ‥‥‥」


「え、なに?」


マサルが顔を上げこちらを見た。


「マサル!!」


メイは、マサルの胸に飛び込んでいた。


「大好き!!」


背伸びしてキスした。

これからは友達じゃない二人の時間が待っている事だろう。


一部始終を見ていた店の男は、穏やかな笑みで二人を心から祝福した。

爽やかなキスシーンに、レモンのように甘酸っぱい初恋の味を思い出しながら・・・・。


********


< 次回予告 >


平凡な主婦の幸せは、ある光景を見た瞬間に砕け散った。

かつて自分が選んだ選択に思いを馳せる彼女に起こった不思議な出来事とは?

次回【ここは幸せ一丁目】第五話「夫婦」


幸せはいつも、あなたの心の中に・・・・。

☆マスターのカクテル講座☆第四回「ディタ・グレープ」


材料:ディタ・ライチ(30ml)、グレープフルーツジュース(適量)


作り方:氷を入れたタンブラーにディタ・ライチを注ぐ。グレープフルーツ・ジュースを注ぐ。軽くステアする。あればレモン・スライスを添えて。


特徴:ディタ・ライチはライチのリキュール。少量でも甘く深い香りが損なう事なく発揮される。グレープフルーツ・ジュースとの抜群の相性で、飽きのこない上品な味わいが楽しめる。甘く爽やかな口当たりは女性も飲みやすいが、美味しくて飲みすぎないように注意。

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