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ここは幸せ一丁目  作者: 七瀬 夏葵
15/21

第四話「友達」Part.3

(素敵なこと?)


メイが半信半疑で目を閉じたその時―――。


「メイ!おい、メイ!」


(この声は‥‥‥)


「マサル!?」


目を開けると、そこにはなんと、マサルが立っていた!


「え!?な、なんで?!」


訳が分からず、メイはマサルを呆然と見つめた。


「なんでって、お前さっき潰れただろ?大変だったんだぞ、ここまで運ぶの」


マサルの言葉に、メイは驚いて周りを見た。

そこは間違いなくメイのアパートのベッドの上だった。


(うそ‥‥‥!!)


メイは、部屋にある日めくりカレンダーをみて声を失った。

それは、間違いなくあの告白の日だった!!

どうしてか分からないが、これがあの日の自分の部屋だとすると、もうすぐあの忘れられない出来事が起こるはず。

メイはごくりと唾を飲んだ。


「大丈夫かよ、メイ?」


緊張のあまり額に汗を浮かべたメイを見て、マサルは心配そうに問い掛けた。


「まだ気分悪いのか?水持ってこようか?」


「だ、大丈夫!」


メイは慌てて答えた。


「ならいいけど‥‥」


マサルはじっとメイを見つめている。

緊張で胸が張り裂けそうになる。

メイは、思わず目を逸して口元に手をやった。

二人の間に重い沈黙が流れる。


「あのさ、メイ」


沈黙を打破り、マサルが口を開く。


「俺さ、俺‥‥」


言い淀むマサルに、メイは息を飲み、顔を上げた。


「お前が好きだ!」


「――――――!!!」


心臓が別の生き物のように脈打っているのがわかる。

わかっていたはずなのに、いざその言葉を聞くと、メイはやっぱり動揺を隠せなかった。


「メイ、お前は俺のこと、どう思ってるんだよ?」


「あ、あたしは‥‥」


言葉が出ない。

もし戻れたなら、絶対自分も好きだと言いたいと思っていたはずなのに。

メイは焦りながらマサルを見た。


「なんとか言ってくれよ!」


マサルの叫びに、メイは更に焦る。

必死で声を出そうとするのに、出て来るのは「あ‥‥」とかいう呻き声みたいなものばかり。

「自分も好きだ」という一言が出てこない。

そんなメイを見て、マサルはふぅーっと大きな溜息を吐いた。


「わかったよ、もういい」


突然悪かったな、と、優しく頭を撫で、ぎこちない笑みを浮かべた。


「帰るよ」


ごめんな。


消え入りそうな声で拳を握る。

泣きそうな時の、マサルの癖だと、ずっと前から知っていた。

ずっと前から、マサルを見てたから。

楽しい時も悲しい時も、いつだってマサルと一緒だった。


背を向け、歩きだすマサルが目に入る。


(行ってしまう!)


もう一緒にはいられない。

どんなに悔やんでも。


(そんな日々を、あたしはまた、繰り返すの?)


マサルがドアノブに手をかけた、その瞬間――


「行かないで!」


声が出た。ベッドから身を乗り出して叫ぶ。


「あたしもマサルが好きだから!!」


マサルが走って来る。


「メイ!!」


ぎゅっと抱き締める。


「メイ、ほんとか?!」


「うん!!ほんとはあたし、マサルのこと、めちゃめちゃ好き!!」


「メイ!!」


マサルの顔が近付く。

メイは、静かに目を閉じた・・・・。

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