第四話「友達」Part.3
(素敵なこと?)
メイが半信半疑で目を閉じたその時―――。
「メイ!おい、メイ!」
(この声は‥‥‥)
「マサル!?」
目を開けると、そこにはなんと、マサルが立っていた!
「え!?な、なんで?!」
訳が分からず、メイはマサルを呆然と見つめた。
「なんでって、お前さっき潰れただろ?大変だったんだぞ、ここまで運ぶの」
マサルの言葉に、メイは驚いて周りを見た。
そこは間違いなくメイのアパートのベッドの上だった。
(うそ‥‥‥!!)
メイは、部屋にある日めくりカレンダーをみて声を失った。
それは、間違いなくあの告白の日だった!!
どうしてか分からないが、これがあの日の自分の部屋だとすると、もうすぐあの忘れられない出来事が起こるはず。
メイはごくりと唾を飲んだ。
「大丈夫かよ、メイ?」
緊張のあまり額に汗を浮かべたメイを見て、マサルは心配そうに問い掛けた。
「まだ気分悪いのか?水持ってこようか?」
「だ、大丈夫!」
メイは慌てて答えた。
「ならいいけど‥‥」
マサルはじっとメイを見つめている。
緊張で胸が張り裂けそうになる。
メイは、思わず目を逸して口元に手をやった。
二人の間に重い沈黙が流れる。
「あのさ、メイ」
沈黙を打破り、マサルが口を開く。
「俺さ、俺‥‥」
言い淀むマサルに、メイは息を飲み、顔を上げた。
「お前が好きだ!」
「――――――!!!」
心臓が別の生き物のように脈打っているのがわかる。
わかっていたはずなのに、いざその言葉を聞くと、メイはやっぱり動揺を隠せなかった。
「メイ、お前は俺のこと、どう思ってるんだよ?」
「あ、あたしは‥‥」
言葉が出ない。
もし戻れたなら、絶対自分も好きだと言いたいと思っていたはずなのに。
メイは焦りながらマサルを見た。
「なんとか言ってくれよ!」
マサルの叫びに、メイは更に焦る。
必死で声を出そうとするのに、出て来るのは「あ‥‥」とかいう呻き声みたいなものばかり。
「自分も好きだ」という一言が出てこない。
そんなメイを見て、マサルはふぅーっと大きな溜息を吐いた。
「わかったよ、もういい」
突然悪かったな、と、優しく頭を撫で、ぎこちない笑みを浮かべた。
「帰るよ」
ごめんな。
消え入りそうな声で拳を握る。
泣きそうな時の、マサルの癖だと、ずっと前から知っていた。
ずっと前から、マサルを見てたから。
楽しい時も悲しい時も、いつだってマサルと一緒だった。
背を向け、歩きだすマサルが目に入る。
(行ってしまう!)
もう一緒にはいられない。
どんなに悔やんでも。
(そんな日々を、あたしはまた、繰り返すの?)
マサルがドアノブに手をかけた、その瞬間――
「行かないで!」
声が出た。ベッドから身を乗り出して叫ぶ。
「あたしもマサルが好きだから!!」
マサルが走って来る。
「メイ!!」
ぎゅっと抱き締める。
「メイ、ほんとか?!」
「うん!!ほんとはあたし、マサルのこと、めちゃめちゃ好き!!」
「メイ!!」
マサルの顔が近付く。
メイは、静かに目を閉じた・・・・。