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ここは幸せ一丁目  作者: 七瀬 夏葵
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第四話「友達」Part.2

(幸せになれるカクテルレシピ?)


その言葉に、メイの気持ちは引きつけられた。


「それって、どんなのですか?」


「飲んでみればわかりますよ」


男の優しい微笑みに、メイはなんだか心が和んだ。


「じゃあ、ディタグレープお願いします」


メイは、いちばん好きなカクテルを注文することにした。

というより、メイはカクテルといえばそれしか知らなかった。

メイが初めてそれを飲んだのは、大学の新入生歓迎会だった。

初めての宴、初めてのお酒。

メイはつい飲み過ぎてしまい、幼馴染みのマサルに介抱されるハメになった。

そしてそのあと‥‥。


(アイツに告白されたんだっけ‥‥)


思い出して、メイは少し切なくなった。

あの時、メイは思わずマサルから逃げてしまった。

怖くなったのだ。

ずっと知ってたはずのマサルが、突然別の、見知らぬ男みたいに思えて‥‥。


それから3ヵ月、メイはマサルの顔を見る度なんだか恥ずかしくて、避けてしまった。

そしてマサルは、メイから離れていった。

今はもう、マサルの隣りに自分はいない。

そこにいるのは、メイのクラスのユカ。


マサルの、彼女‥‥。


(あそこはずっと、私の場所だったのに‥‥)


メイは悔やんだ。

こうなって初めて、自分がマサルを好きだったことに気付いたのだった。


「お待たせしました」


男が、白いカクテルグラスをメイの前に差し出した。

メイは我に返り男を見た。


「ありがとうございます。それじゃ、頂きます‥‥」


見た目は普通のグレープフルーツジュースなのだけれど。

口をつけると、さっぱりとした何とも言えない爽やかな酸味と甘味が口いっぱいに広がった。


「うわぁ、なにこれ!?凄い美味しい!!」


それは、普通のグレープフルーツジュースとも、あのとき飲んだディタグレープとも違っていた。

口にする度、不思議な幸福感に満たされるような気さえする。

メイは、さっきまでの切ない気持ちも忘れ、ウキウキした気分でグラスを空けた。


「ご馳走さま。とっても美味しかったです」


メイは、ニコニコ笑顔で男に会釈した。


「確かに幸せになれる味でした」


すると男は微笑んでこう言った。


「ありがとうございます。でも、幸せになれるカクテルの効果は、もう一つあるんですよ。ちょっと目を瞑ってみて下さい」


「目を?」


「ええ。きっと素敵なことがありますよ」


そう言って、男はにっこりと笑った。

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