第三話「殺し屋」Part.5
気がつくとアカハチは、カウンターの椅子に座っていた。
手の中のグラスは、すっかり氷が溶けている。
(夢――‥‥‥?)
アカハチは自分の手を見た。
今の今、確かに抱き締めていたあの感触。
あれが夢なら、なんとリアルな夢だろう。
アカハチが夢の感触を惜しんでいたその時だった。
「どうしたの?」
隣から声がした。
「―――――っ!!!」
そこには、あの最愛の人が座っていた。
あの頃より確実に大人びた顔で、アカハチの顔を覗き込んでいる。
「ミアッ!!」
「ちょっ、どうしたのアカハチ、苦しいよ」
アカハチは抱き締めた。
今度こそ本当にそこにいる彼女を。
そんな様子を見ながら、バーテンはいつものように静かに微笑んでいた。
雨はもう、すっかりあがっていた。
ここは幸せ一丁目。
幸せになれるカクテルを出すお店。
今日も店には、幸せが溢れている‥‥‥。
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< 次回予告 >
人は失って初めて本当に大切なモノに気付く。
忘れ得ぬ恋に悩む彼女がたどり着いた結末は・・・・?
次回【ここは幸せ一丁目】第四話「トモダチ」
お楽しみに☆
<マスターのカクテル講座>第3回「ジャックダニエル・ソーダ割り」
材料:ジャックダニエル、ソーダ。(各適量)
作り方:オールドファッションド・グラスに氷を入れる。ジャックダニエルを注ぐ。ソーダを注ぐ。軽くステアする。
特徴:ジャックダニエルはテネシー州で造られたテネシー・ウイスキー。樽から引き出された美しい琥珀色と芳醇な味わいは目と舌を同時に楽しませてくれる逸品。アルコール度はかなり高め。酒に慣れた大人の男性にオススメ。