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幻想時そば

作者: 溜せうゆ
掲載日:2026/05/26

 青年が営んでいる花屋に、宿屋の女将さんが花を買い付けに来たところ。


「やあ、女将さん。今日も花をお求めですか?」


「ええ。客室に飾る花を十六本くださいな」


「毎度、いつも通り一本につき銅貨一枚です。――確かに。じゃあ花を渡すから受け取ってください。一本、二本――」


 花屋が花を一本ずつ数えながら女将さんに渡していく。


 けれど途中で花屋が妙なことを尋ねた。


「――九本、十本、十一本。ところで女将さん、あなたのとこの娘さんはいくつになったんでしたっけ」


「この前、九になったところですよ」


「そうでしたそうでした。じゃあ続きを。十本、十一本、十二本、十三本、十四本、十五本、十六本っと。これで丁度ですね」


「あら、花屋さん。これじゃあ二本多いようだけど……」


「それはあなたと娘さんに」


 花屋がウインクをぱちんとひとつやると、女将さんは乙女のようにぽっと頬を染めた。


 そのやり取りを見ていた向かいの酒屋の親父は、これは使えると思い、前から狙っていた酒場の女給に試してみようと考える。


 そこへ折よくその酒場の女給がやってきた。


「やあ、こんにちは。今日も酒をお求めかい?」


「ええ、今日は葡萄酒を十六本くださいな」


「はいよ、いつも通り一本につき銀貨一枚だ。――確かに。じゃあ葡萄酒を渡すから受け取ってくれよ。一本、二本」


「え、重いから後で届けてくれたら――」


「いいからいいから。三本、四本、五本――、十本、十一本。ところでお嬢さん、あんたのとこの娘さんはいくつになったんだっけか」


 それを聞いた酒場の女給は、顔を真っ赤にして怒り出した。


「は? わたしに娘なんていませんけど!? あなたにはわたしが一体いくつに見えるっていうんですか!」

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