幻想時そば
青年が営んでいる花屋に、宿屋の女将さんが花を買い付けに来たところ。
「やあ、女将さん。今日も花をお求めですか?」
「ええ。客室に飾る花を十六本くださいな」
「毎度、いつも通り一本につき銅貨一枚です。――確かに。じゃあ花を渡すから受け取ってください。一本、二本――」
花屋が花を一本ずつ数えながら女将さんに渡していく。
けれど途中で花屋が妙なことを尋ねた。
「――九本、十本、十一本。ところで女将さん、あなたのとこの娘さんはいくつになったんでしたっけ」
「この前、九になったところですよ」
「そうでしたそうでした。じゃあ続きを。十本、十一本、十二本、十三本、十四本、十五本、十六本っと。これで丁度ですね」
「あら、花屋さん。これじゃあ二本多いようだけど……」
「それはあなたと娘さんに」
花屋がウインクをぱちんとひとつやると、女将さんは乙女のようにぽっと頬を染めた。
そのやり取りを見ていた向かいの酒屋の親父は、これは使えると思い、前から狙っていた酒場の女給に試してみようと考える。
そこへ折よくその酒場の女給がやってきた。
「やあ、こんにちは。今日も酒をお求めかい?」
「ええ、今日は葡萄酒を十六本くださいな」
「はいよ、いつも通り一本につき銀貨一枚だ。――確かに。じゃあ葡萄酒を渡すから受け取ってくれよ。一本、二本」
「え、重いから後で届けてくれたら――」
「いいからいいから。三本、四本、五本――、十本、十一本。ところでお嬢さん、あんたのとこの娘さんはいくつになったんだっけか」
それを聞いた酒場の女給は、顔を真っ赤にして怒り出した。
「は? わたしに娘なんていませんけど!? あなたにはわたしが一体いくつに見えるっていうんですか!」




