第3話:異世界のリスは斧を振り下ろす
俺は今、どこかの家に横たわっている。
……お世辞にも、居心地がいいとは言えなかった。
その理由は……。
「それで、不法侵入して寝るのが趣味っていうわけ?」
「不法侵入だなんて人聞きが悪い。私はただ、過酷な人生の安息の地を求めて、ここをお借りしているだけですよ」
はぁ……。どうしてこうなった。
今俺がいるのは、どこかのログハウス。木の香りが漂ってくる、そんな空間だった。
俺はその真ん中で、家主が敷いたであろう布団に横たわり、イラビとゴロゴロしていた。
目の前の机には家主が残したらしい本があり、その周辺には可愛い木彫りの模型と……それとは正反対の、恐ろしい武器の格納庫があった。
「で……あれは何なんだ?」
「あ、あれですね。たまに家主さんが帰ってきた時、クローゼットに隠れて寝ながらこっそり覗いてみたんですけど、どうやら狩人さんのようですよ」
「主人がいるのにそんなことしてんのかよ!?」
俺はこの魔導士の、小さな帽子が乗った金色の頭を指でグイグイと押した。
「あいたっ……」
「お前、いくつだ?」
俺は唐突に尋ねた。
『母親が礼儀作法を教えなかったのか?』という不敬な言葉を辛うじて飲み込みながら。
「今年で……15歳?」
「身分証を出せ。この豆粒みたいなガキめ」
「ま、豆粒……と言いましたか……!?」
俺は彼女が吐き出した髪をさらにかき乱しながら言った。
「嘘は通用しないぞ。さっさとミルクでも飲んでろ……」
「こ、これですよ!」
イラビは俺の言葉を遮り、自分の冒険者カードをポケットから取り出した。
ふむ……そのカードに記された内容は以下の通りだ。
名前: イラビ
職業: ウィザード
年齢: 15
魔法適性: 水
知性: 76
マナ応用力: 80
筋力: 3
スタミナ: 12
「マジか、本当だったのか。まあ、どうせ俺より二つ年下のロリなのは変わりないが。っていうか、スタミナが悲惨すぎないか? 筋力3ってなんだよ」
「ハヤヨムさん……いつかあなたの頭に私の魔法をぶち込んで差し上げます……今は人の家なのでこのくらいにしておいてあげますが。はぁっ!」
そう言ってイラビは、俺の胸板を肘で小突きながら抜け出した。
筋力3とはこういうことか。全く痛くなかった。
「ハヤヨムさんもカードを見せてください。私だけ見せるなんて不公平です」
「俺は持ってない」
……。
その言葉を聞いたイラビは、背を向けて呟いた。
「……パーティメンバーを間違えたかな? 詐欺師なのかな?」
「おい。違うって。話も聞いてないだろ」
俺は立ち上がった。くだらない会話に飽きたという風に……机へと向かった。本を確認するために。
「主人の本の趣味が気になるな」
そう独り言を言いながら、俺はしおりが挟まっているページから本を開いた。
「……」
即座に閉じた。
後ろにいたイラビが、怪しむような眼差しで言った。
「どうしたんですか……? 本が18禁だったりします?」
「……本じゃなくて、債務確認書だった」
「あ……あっ……。うむ……」
急にこの家に勝手に居座っていることへの申し訳なさが湧き上がってきた。
「血判まで押してある。主人はどれほど過酷な人生を……」
「どなたですか??」
俺が憐れみの視線を送っている刹那、誰かがドアを開けた。
「……おい」
俺の視線は主人ではなく、まずイラビに向かった。
ちくしょう、クローゼットに隠れやがった。あの野郎……俺を捨てて。
「そ、そ、そ、それは……ですねぇ……?」
「あ、ゆっくりで構いませんよ。ふふっ」
俺が言葉を詰まらせながら見つめた先には……一人の女性が立っていた。
リスのような耳と尻尾……そして茶色の髪と瞳。同い年くらいに見える適度な身長とボリューム。間違いなく癒やし系の美少女だった。
……背後に背負った巨大な斧を除けば。
「申し訳ありません!! 許してください! 私が悪かったです!!」
「あ、いえ、そんなに謝らなくても大丈夫ですよ。私は理由が知りたいだけですから」
女は斧を背後に隠し、微笑みながら近づいてきた。
余計に不気味だ。異世界転生初日……死亡、とリーディング・ナイトの伝記に記されることになるのか?
「その……私は今日初めてこの村に来た冒険者なのですが……泊まる場所もなくて、お金もなくて……」
「お金がなければ、人の家に勝手に侵入してもいいということだったんですね? あぁ〜、ようやく理解できました」
「面目ございません!!」
完全に詰んでいる。
何を答えても、俺はこの両刃斧でぶった斬られる運命だ。
『神速』を使って逃げようとした、その瞬間……。
「それなら、今日一日は泊まっていってください」
……。
「「え?」」
俺だけでなく、クローゼットに隠れている彼女まで驚きの声を上げ、家中に響き渡った。
泊まっていけだと? どういうことだ? 寝ている間に奇襲でもするつもりか?
「実は……以前から誰かが家に入っているのは知っていましたが、あえて気づかないふりをしていたんです。今日は別の方のようだったのでお聞きしたまでです。そちらの方も、聞いていらっしゃいますよね?」
「ギクッ……」
クローゼットの中のイラビが、肩をぶつける音がここまで聞こえてきた。
そうだ、一人で死ぬのは惜しい。あいつも道連れにして……。
「その……私はカネシロ・ハヤヨム……と言いまして、あちらはイラビです。ご迷惑をおかけして申し訳ありません……」
俺は言葉を引きずりながら、まずは謝罪した。
死ぬことを覚悟していたが、急に何だかやるせなくなった。謝って終わらせよう。
「私はスカルルです。見ての通り……この斧でモンスターをなぎ倒して回っている、ごく平凡で、貧しくて、か弱い淑女の狩人です。ふふ」
か、弱い……だと? 彼女の体を直接見たわけではないが、あの重そうな鉄の塊を片手で扱っている時点で尋常ではない。
あ、そうだ。これがチャンスだ! 俺が合法的に彼女の筋肉を見るフリをして、別の場所を……。
「あの……そんな風に見つめられたら、ハヤヨムさんが明日の夜に目を覚ませる保証はできませんよ?」
はい、承知いたしました。
「申し訳ありませんんん!!」
「リーディング・ナイトのリーディングって……体をなめるように見るという意味だったんですか?」
イラビは俺を軽蔑の眼差しで見つめながら独り言を抜かしやがった。
くそっ! 一日でイメージが良くなったり悪くなったり、忙しいな俺は。
そうして俺たちは三つの寝具を敷き、各自離れて横になった。いや、一体なぜ家を貸してくれたんだ?? 俺は到底眠れなかった。
そして……闇に包まれた時間を利用し、スカルルに向かってこっそりと近づいた。隣にいるイラビには興味もない。今見るとロリというよりはクソガキ……。
「リスみたいに丸まって寝てるのか……? 可愛いじゃないか」
独り言では可愛いと言ったが……俺の目は、彼女の寝着から覗く胸元を露骨にスキャンしていた。
「ヒヒヒ……」
俺がじわじわと近づき、スカルルを盗み見ようとしたその瞬間だった。彼女の目がカッと開いた。
「こうなると思っていました」
そう言うと同時に、俺の顔を目掛けて布団の中に隠されていた斧が突進してきた。
「うわあああ!!」
間一髪で避けた。
わずか1cmの間隔で顎を引いて回避することに成功した。
あまりの動揺に『神速』すら使わなかった。純粋な俺の反射神経だ。
「すみません! 寝付けなくて、つい!!」
「謝罪は死んでからにしてください」
「うーん……ムニャ……」
斧を振り回すスカルル、孤軍奮闘する俺、そしてベッドでむにゃむにゃと呑気に眠るイラビ。
三角関係……というのは、こういう関係を指すのか?
「し、『神速』! 『神速』! 『神速』!!」
「そんなゴミスキル、通用しません!」
魔王まで倒した俺のスキルをコケにするとは。事実だとしても心が痛い。
だが今はそんな場合じゃない。まずは生き残らなければ……!
「いや、本当に反省文100枚書きます! 二度とこの家には来ません!」
「信じられません!」
彼女は俺の上下体を分離させようとするかのように、腹を狙って斧を薙いだ。
「『神速』!!」
ゴミスキル……『神速』。こういう時はかなり役に立った。
俺の体が0.1秒の差で宙に浮き、その攻撃を回避した。
「ま、待ってください!!」
叫んだ。そして……ついに、斧が止まった。
もちろん、俺の首に突きつけられた状態で。
「何でしょうか? 遺言なら聞いて差し上げますよ。早くおっしゃってください」
「そ、そ……あちらにある武器もたくさんあって……狩りもすごくお上手なようですね……?」
「……おべっかは通用しませんよ?」
「単刀直入に言います。仲間になってください!!」
俺は両手を上げて降参のジェスチャーを示し、声を張り上げた。
「……死んでくださ……」
「それがですね! 私がさっき机に置いてあった、あの書類のようなものを見たのをご覧になりましたよね!?」
俺の言葉を聞いた彼女は眉をひそめた。まるで弱みを握られたかのように。
「俺はあそこで、あの債務(借金)を見てしまったんです……!」
「本当に死にたいのですか?」
首に斧の刃がわずかに食い込んだ。
このままではギロチンのように首が飛ぶ。この状況では『神速』も不可能だ。
「借金……多いんですね。正直、狩人生活をしながら……この家も手に入れようと苦労されたのが目に浮かびます」
俺はできる限り優しい口調で、震える指先を隠しながら言葉を継いだ。彼女に口を挟む隙を与えないために。
「だから……俺と一緒に冒険者になりませんか? 俺も実はまだ冒険者登録もしていないド素人なんです!」
本心からの提案だった。少々卑怯だが……。
元々、明日すぐにでも冒険者になるつもりだった。パーティメンバーを集めるのが大変なことは、薄々感づいていた。
『リーディング・ナイト』はまだ噂にもなっていないし、俺のアイデンティティ(正体)は他人にはゴミスキルにしか見えない。
それなら……この圧倒的に強い女を仲間にできれば!
「……私に利益はありますか? 『神速』しか持たないあなたとパーティを組んだとしても、すぐに全滅するのが目に見えています。それなら獣を狩る今の仕事の方が楽です」
「まだ俺が戦う姿を見ていないじゃないですか……!」
「……今もこんなに軟弱なのに……」
俺は頭脳をフル稼働させた。どんな言葉で彼女を説得すべきか……。そして、ついに結論が出た。
「スカルルさんが、俺たちのパーティが稼いだ金の90%を受け取るというのはどうですか?」
「……?」
彼女は耳を疑うように頭をかき、目を丸くした。
「もし……この条件でもダメなら、明日……冒険の中で決めてください。明日モンスターに遭遇した時……ただ後ろからいつでも逃げ出せるように見守っているだけでいいですから」
「何……を言っているんですか?」
「見守っている途中で、俺がモンスターに対して大した力を見せられず……あなたに信頼を与えられなかったら……! その時は俺を見捨てて逃げても構いません」
俺は悲壮な決意を込めて、一言一言に力を込めた。
こんな時に助けてくれないイラビという奴が憎かったが、顔には出さなかった。
「……約束してください。明日、俺が信頼を与えられたら……どうかパーティメンバーになってください!」
彼女はしばらく沈黙した。
そして……ついに開かれた口から出た言葉は、
「……今日は休戦にして差し上げます」
今回の話はAI翻訳の影響でかなり苦労しました… 不自然な部分があれば、いつでも教えてください! 本日もご覧いただき本当にありがとうございます。ブックマークと評価もぜひお願いします!




