L
「本日入学するパイロット科の皆さんには」
長い、校長の話が長い。
どの世界でもそれは変わらんらしいが、既に居眠りしているのが半分。
残り半分もどこか聞き流している様子だ。
「うむ、それではいい具合に温まってきたようなので担当の先生に変わろうと思います」
温まるというか緩んでるがな。
「諸君、俺は長い話は苦手だから単刀直入に言う! パイロットはエリートだなんだと言われているが非常に泥臭く面倒な事が多い! だからそれをねじ伏せるだけの腕前を期待している! この後のクラス分けテストでまた会おう!」
おぉう、30分話し続けた校長に対してこっちは1分だ。
それにしたって簡潔な内容だが……。
「ほっほっほっ、流石にパイロット科の担当教諭は違いますな。では、そういう事で各自解散とします。各課の人達はそれぞれ試験会場へ向かってください」
校長の締めと共に寝ていた奴らものっそりと起きて、そのままぞろぞろと歩き始めた。
えーと、俺と同じタイプの校章付けた奴についていけばいいかな。
科目ごとに試験内容が違うのは当然だが、一部重複しているものもあるとパンフレットには記載されている。
具体的に言うならメカニックとパイロットで簡単な操縦や整備のあたりだろう。
さっき機体を止めた際にもメカニックの人が位置調整のために動いてたし。
「あ、なぁそこの人。すまんが同行していいか? 道覚えてないんだ」
近くにいた人に声をかける。
首元の校章が見えたから同じパイロット科だと思ったんだが、振り返ったその目つきを見て一瞬拳を握りそうになった。
視線が鋭く冷たい、まさに軍人といった様子で圧倒されそうになったからだ。
よく見れば制服越しでも鍛えられているのが良くわかる。
「君は……」
「パイロット科一年の雨傘幸助だ」
「そうか、俺は坂月良平。よろしく頼む」
「あぁ、よろしく。しかし凄いな、良く鍛え上げられてる」
「うちはパイロットの家系だからな。そういう君もなかなか……」
じろじろと見られるのは気分が悪いが……うん、着替える時に見たら腹筋バキバキに割れてたし、筋肉質な身体だったんだよな。
まるでゲームのステータスを肉体に反映したような感じだった。
以前の俺はひょろがりもやしだったんだがなぁ。
「パイロット一家か。そりゃ強敵だな」
「なに、慌てる事は無い。Sクラスは10人という規定だから残りの席は9つもある」
「お、自分が入ること前提か? 自信家だな」
「残念ながら違う。あそこにいる女子生徒、クリス・L・メイラード。欧州のメイラード家といえば有名だろ?」
「え? あ、あぁそうだな」
よく知らんが適当に話を合わせておこう。
「特にLのミドルネーム、近接戦闘においては右に出る者無しと言われている家系だ。彼女はSクラス入り確定だろう」
「じゃあ坂月が入るの考えて残り8席、俺が入って残り7席か」
「なんだ、君の方が自信家じゃないか」
「自信というか……まぁ直感に近いか?」
少なくともこの場を見る限りじゃ凄腕といえる奴は片手の指で足りる。
あのクリスって女子もそのうちの一人だけど、同じ条件での戦いならそれなりに渡り合える自信がある。
とはいえゲーム内での動きを再現できるならってのが前提だけど、これは登校の時に使ったあれこれで大体把握できてるからな。
流石に関節が軋むような動きは控えたけど……イエローランプは点灯したとだけ言っておこう。
凛にもめっちゃ怒られたし。
「まぁ人は見かけによらないってのを教えてやるよ」
「それは楽しみだ」
うん、この坂月ってやつは見た目に反して仲良く慣れそうな雰囲気だ。
案外親しみやすいかもしれんな。




