第15話 旅の風景
今回はちょっとした短話詰め合わせみたいな感じだと思ってください。
レッドウルフというパーティがある。
有名かと言われると、ある人に聞けばそうと言い。ある人に聞けばガキの集まりと言われる。
しかし、どちらの派閥でも無視できるだけの存在ではなかった。
まず個々が歳不相応な才能を持っていること。
魔法使いは、上位の魔法を取得しており特殊な才能がないと習得すら難しい光と闇の変格元素すらも扱う。
常にフードで顔は隠れているが、その顔は神から授かった天使の美貌であるとの噂も。
戦士は、類稀なる戦いの才能を持ちあらゆる脅威を払い除ける力を持つ。
その力はもはや最上位剣士すら圧倒するほどであり、弱腰には似合わぬ超一流の超戦士である。
そしてリーダーの剣士は、パーティ名の由来である『レッドウルフ』と呼ばれ絶対的な剣、魔法、頭脳でSランククラスの竜をも単騎で討伐してしまうほどの才の持ち主。
子供ながら弱点の見当たらない完璧超人という噂が四大陸全土に広がるほどである。
もはや冒険者としては無視できるパーティではない。
スーパールーキーでありながら、ぐんぐんと名をあげる集団だ。
でありながら、悪名のひとつもない。
有名パーティとなればいざこざなどの悪い噂が風に乗るもの。
『レッドウルフ』にはそんなものはなく、無償の人助けを率先してやる。
子供の集まりであるのはそうだろう。
だが『レッドウルフ』は誰からも認められるパーティであるだろう。
*
聖皇歴516年──秋季。
今日も今日とてお疲れ様の乾杯から始まった食事。
冒険者ギルドの2階に設営されている酒場で1杯……はやらないが、普通の食事をとる。
その日の依頼報酬によって豪華さは変わる。
今日の報酬は24000ゴル。まあまあ、普通の食事である。
「って感じで有名になりたいよね。子供ながらあのパーティはやべえぜ!特にリーダーの『レッドウルフ』はもう神位クラス、問答無用で英雄だってね」
ゴブリン討伐依頼より早3ヶ月。
『レッドウルフ』は今日も順調。有名……かと言われると、疑問符を立てられてしまう。
ローカルな冒険者ギルド内ならちょっとは語られる程度。
それでも『レッドウルフ』って何?と聞かれたら100人中100人がさあ?と曖昧な返事をする。
これは僕の調査によるものなのでほぼ確実だ。
だがまだ3ヶ月、そうたった3ヶ月なのだ。
まだまだこれから、さっきのような噂も絶対に広がるはず。
「ない」
「否定すんな!もしかしたら僕の嘘が本当の事として広がってるかもしれないじゃん。夢見ようよ、夢。夢は信じてそれを叶えるのが『レッドウルフ』の座右の銘でしょ!ランスさんは『レッドウルフ』脱退でよろしいでしょうか?」
「嘘は良くねえだろ。なあ、リーシア」
「……ムートが英雄になりたいのは知ってるけど、嘘はよくないと思うよ」
「だよねー!僕も思ってた。嘘は良くない!リーダーの『レッドウルフ』は弱虫で竜も倒せず完璧超人でもないけど、頑張っている!あと戦士の方は超一流から一流に変えとこう」
「……とばっちり。ま、いいけど」
まあ、こんな感じで楽しくやっています。
日々依頼をこなして報酬を貰い、ちょっとづつ街から街へと移動する。
現在はサラキア王国の最西側に位置する街に滞在している。
とはいえ数日で離れるだろう。
サミエント王国までの途次で確実に通ることになる国のひとつ、レルシアム王国。
国境を超え、サラキアからレルシアムへ、レルシアムから西方大陸に入る。
国が違えば法も違う。
レルシアム王国のルールは頭に入っている。とはいえ、言語も通貨も変わらないので早々困ることはない。
レルシアム王国を通らないルートもあるが、そちらは却下だ。
聖皇国アスタルティアの次に領土が大きいルッゾ王国から西方大陸のメルグ王国に入るのも良いが……オススメはされない。誰もが通りたがらない。
道中でユルトレス砂漠に入るからだ。
ユルトレス砂漠。
字面だけ見るとそこまでなその場所は北方大陸屈指の危険地帯。
砂漠と言うことから分かる、砂と熱そして魔物が集う地獄だ。
世界で行きたくない場所堂々のナンバー2だ。
ナンバー1は?そりゃまあ魔界とか言われてる大陸だよ。同じ世界にあるのに、魔界だよ魔界。世界が違うような言い方をしたくなるくらい嫌なとこ。
まあ今のところ行く気はないし僕には無関係……あ、なんか旗が建設された気がする。
いやいや、そんな急作業で旗が立つわけない。気の所為、だよね?
うん、ユルトレス砂漠とか僕には関係ないですし。大丈夫、大丈夫ー!
それにユルトレス砂漠行きだとランスの目的地までの道程が多くなるしね。
「しっかし案外遅いもんだよな。3ヶ月でやっと次の国ってとこだろ」
そこはまあ仕方ない。
移動だけを重要視するならもう西方大陸に入っていてもおかしくない頃だ。
しかしそれと同時に金を稼がなければならない。
依頼をしたあとは疲れて寝る。
街でゆっくりしながら装備品の点検等々を行っていれば自然と数週間の滞在になってしまう。
早く帰りたいのはそうだがそこまでスピード重視でもないので遅くなるのは普通だ。
「そういえばランスは南方大陸出身だったね。サラキアまではどうやって?」
「超特急で親父に運ばれた。多分1ヶ月くらい」
それは馬鹿体力の持ち主だったんだな。ランスを見てればよくわかる。
ランスは1週間働き続けても疲れた素振りひとつ見せない超人だ。
親父さんも昼夜寝ずにずっと移動していたに違いない。
ランス家の事情がもっと知りたくなってしまった。
*
馬車の揺れを感じながら目的地に向かう。
荷物車の護送依頼と平行したレルシアム王国への移動中だ。
移動しながら依頼もこなせる。護送依頼はこれだからいい。
左には天使のオマケ付き。
馬車移動の際は左に完全密着のリーシアは固定となっている。
ランス加入後、僕とランスの仲が良くなるにつれ危機感を覚えたらしい。
大丈夫、同性愛趣味はないから。
いやリーシアから見たら僕はそんな風に見えていたのだろうか……何かきっかけがあったかなあ。
節約のために同じ部屋に泊まってるのが許されないのか。
まあ左に居るのは、左眼に封印されし赤眼が疼き出さぬようにという配慮もある。
痛くなれば即座に治癒魔法を掛けてあげられる。
そんな配慮が1割、隣に居たいが9割と予想している。
ていうかそれであってほしいです男的には。
「ムートとリーシアって本当に仲良いよな」
ランスは向かいあわせの前側の席が固定となる。
余程の事がない限り僕の隣には座らせられない。
悪いなランス。君の肩身はこのパーティじゃ狭いんだ。
隣に座るとリーシアが嫉妬しちゃうからね。可愛い。
「まあ色々あったからね」
その色々は本当に波瀾万丈だ。
何回振り返ってもつい先日起きたことのように思い出せてしまう。
簡単に忘れられるわけがない。
しかしこの話はリーシアがいい顔をしない。
思い出したくないことはある。子供の頃の恐怖は大人になっても根付くと言う。
リーシアにとってあの牢屋は恐怖そのものなんだ。
「色々あったけど、まあなんやかんやあってその後に2年間一緒だったからね。互いの親交を深めるには十分すぎる時間だったよ」
「ぶっちゃけた話、どうなの?」
どう、とは?
「恋愛的なあれはさ」
何をぶっちゃけてるんですかこの人は。
考えないようにしていたことをこうも簡単にぶち込んできやがって。
そういう話は一旦置いておいて、ランスくんの話をしようじゃないか。
「そういうランスはどうなの。女の子にモテモテじゃないか」
「へえ……わたしよりランスの方が気になるんだ」
リーシアや。
最近面倒い可愛くなってきてるよ。
どんなリーシアでも可愛いから何でも許せるけどさ。
だから頭をぐりぐりと肩に擦り付けないで、可愛すぎるから。
「さっさと結婚しちまえばいいのに」
恋人でもないのに結婚は早くないか?
南方だとあったりするのそういうの。それともランスの価値観が狂ってるのか?
うちは西方家庭だからな。
過程は大事に、愛はガツンと、共になるには一生を込めて、なんですよ。
だから、なあ、リーシア……そんなにくっつかないでくれ。
分かってる、分かってるよ、君の気持ちは。
*
北方大陸の魔物はそこまで強くない。
四大陸では西方よりも安全ではある。とはいえ精霊山、白壁山、迷いの森、ユルトレス砂漠と危険地帯は多い。
普段冒険する分には苦労することは少ない。
まず馬車には基本魔物避けが使われているので護送依頼で魔物と対峙することは少ない。
護送依頼で本当に注意すべきは魔物ではなく人間だ。野党による襲撃。北方は治安悪いからなあ。
「暇だな」
ランスはこんなこと言うが暇な方がいいと思う。
盗賊に出くわすよりは全然いいと思う。
暇すぎてリーシアは眠ってるもん。馬車に乗ると高確率で眠るんだよな、リーシア。
眠ってくれると好き放題できるから、ずっとこのままでいいが。
何事もなく終わるならそれで十分。
暇ということは強くなる機会でもあるわけだし。
移動中は魔法の練習だ。
指先からの魔法発動、火の玉を作ってそれを自在に伸縮なりさせる操作性訓練。
魔法は大抵の事が出来る。
生命力は想像を具現として、あらゆる奇跡を起こしてくれる。
大抵の事ができると言ってもそれを成すためには相当の努力が必要だ。
例えば、重力魔法なるものの存在だ。
重力。
聞いた事はあるが、理論として説明できるかと言われると微妙だ。その理論を基にした脳内で重力を発生させるイメージが出来なくては駄目だ。
元素単位での細かな創意工夫を求められる。
基本4大属性である火、水、地、風は普及しすぎて魔術本に理論や想像の仕方が載りすぎていて簡単になりかけている。
例えば『着火』。火魔法の基礎中の基礎。僕は脳内で火打石で火種を生み出す想像をして扱っている。
まあリーシアは理論とかなしにぶっつけ本番の想像力だけで魔法を完成させる天才だけど。
「俺さ、実は魔法って結構憧れてるだよな」
「使えばいいじゃないか」
「でもなんか難しそうじゃね?」
「難しくはありますね。火1個でも、どうやって火をつけるかそれを考えて魔法に転じなければならない」
「それなら闘法の方が俺は便利だと思うな。『闘気』さえ覚えりゃ何ににでも使える」
闘法とは、『闘気』の応用である。
そんな言葉があるくらいには『闘気』があれば何でもできる。
魔法のように火をつけるということは無理だが、岩を斬るなんてことは当然できる。
実際ランスが言ったことは正しくはある。
魔法は難しいのだ。最上位レベルに到達するのは難しい。理論にもとずいた完璧なる構築をどれだけ脳内で叩き出せるかどうか。
闘法と魔法。難しさでは圧倒的に魔法だ。
闘法は『闘気』さえ覚えれば、全てに転用できる。
冒険者を見ればわかるが、魔法使いや魔術師が10とするなら剣士や戦士の数は40だ。
それほどまでに差がある。
「でも結局は努力ですよ。闘法も魔法も、慣れれば魔法も瞬時に発動できる。リーシアのように、上位魔法を感覚だけで使えれば剣士にすら勝てる能力はあると思うよ」
「そうか?俺たちは、な?アレがあるし」
「まあそれが圧倒的な差だよね。魔法使いは剣士には勝てない、この定石ができるくらいには」
この後も闘法、魔法トークは続いた。
ランスは、気安い友達のようで実に話しやすいし、話す内容も合う。
いい仲間に巡り会えたよ本当に。
*
「無理無理無理無理無理無理!!」
「逃げるな、ランス!お前は盾だ!」
移動中に夜になったので野宿をすることになった。
馬車はリーシアが警護して、僕たちは灯りになる焚き火の枝集め……なのだが。
運悪く暴猿に遭遇してしまい戦闘だ。
暴猿はEランクの魔物でゴブリン同様世界全土にいる。
生殖能力が高いのが理由のようだ。
人族も生殖能力が高いので現在世界一多い種族になっている、そして暴猿は生殖能力が高いので世界全土にいる。
人族とは親戚なのかもしれない。
何を言っているんだ僕は。
凶暴性はあるが強さはゴブリン以下だ。
群れで行動することが多いので危険度ではどちらが上かとは判断し難いが……冒険者ギルド的にはどっこいどっこい。
強さはないにも等しい……のだが、ランスはやはりビビる。
逃げ腰で震えながら、持っている剣が振動で残像ができるほどだ。逆にすごいのでは?
僕はランスを逃がしはしない。絶対に前線に置く。
そうすれば暴猿はランスの方に向いてランスしか攻撃しないからだ。人の盾、肉盾だな。
「痛い痛い痛い!!酷くねえか!?ムートだけで勝てるだろこんな雑魚!」
「雑魚と思うなら戦いましょうね」
亀のようにくるまったランスは暴猿に滅多打ちにされる。
だが、無傷だ。彼に傷はない。
ランスは鋼のような『闘気』を纏っている。
ランスは常に『闘気』を纏っている。それも全身に。
何故かと聞いても返答は分からん、との事。
なのでこれは推測だが、ランスの父親はことある事にランスを殴り飛ばしていたらしい。戦士になる修行ということで。
傍から見ればただの暴力だったそうなそれは、ランスを本当に鍛えていたのだろう。
才能ありのランスは無意識的に『闘気』を纏い身を守っていた。それが結果的に僕が行っていた闘気修行と同じ効果をもたらし、ランスに膨大な『闘気』を与えた。
才能があるランスが常に闘気修行をしているようなものだ、まあこういうことにもなる。
鋼の『闘気』はあらゆる攻撃を防ぎ、ランスの肉体に届かない。
「ランス頑張れ!強い戦士になれないと家に帰れないぞ!」
「わかってるよ、そんなこと!」
家に帰るという原動力はランスには大きいらしい。
これをダシに使えばある程度は頑張ってくれる。
立ち上がった衝撃で群がっていた暴猿が爆発したようにぶっ飛んだ。
剣を構える。黒が月光に照らされ輝く。
防御用としている『闘気』を、攻撃に扱うとすれば、その力は想像に難くない。
あのボスゴブリンを両断した一撃。
「『断斬・波』!」
多対一に対応した闘法。『闘気』の圧を放出することで本来出しえない範囲攻撃を生み出す。
それがランスほどの強者から放たれるのなら、前方にいる全てが切断される。
暴猿や木すら何の例外もない。
暴猿は本能のまま動く。
ランスの強さを目の当たりにした奴らはそそくさと逃げ出して行った。ここらの森で僕たちに襲いかかる暴猿はもう居ないだろう。
なんせあのランスさんが着いてるからな。
「よし、枝集めしようか」
「治癒魔法くらい掛けてくんないの?」
「いらないいらない」
ランスが怪我することなんて竜を相手するくらいのものでしょ。
竜にすら勝ててしまいそうな気がする。
今すぐ目的地を白壁山にしようかな。
白壁山は竜種が多いって話だ。ランスの実力を見定めるために……流石に行かないけど、そんな危険な場所には。
ランスの威圧感が森に広まったため何事もなく夜を明けることができた。
*
翌日には森を抜けることができた。
レルシアム王国に近づいていくにつれ景色は高原になる。
高原地帯から国境を分ける砦が見える。
澄み渡る青空の下、冷たくなった空気風が気持ち良い。
空気が新鮮な気がする。
心が晴れれば体も緩やかになるものだ。
なおここらの高原地帯はかつて龍人族と魔族の戦地跡でもあり、そのせいで高原地帯になったらしい。平和とは程遠いものだったんだとか。
龍人族。
神話や英雄譚にはよく登場するが実物を見たことはない。
『龍神』が生み出した種族であり、姿見は人族とそこまで変わりないという話だ。
しかしその力は全種族でも1、2を争うほどである。
人族の心、魔族の力、獣族の強靭さ、妖精族の魔法力、巨人族の腕力とか色々持っている最強種族。
『魔神』を打倒した七聖傑の内の1人、『天龍』グランダラサは龍人族だ。
空を司る魔法を扱い天変地異を起こし魔族の軍隊を殲滅したとか。
天位魔法をポンポン撃っていたと考えられる。
この高原地帯も『天龍』の伝説が残っている。
龍人族の里である龍都に進行してきた魔族を龍人族がこの地で迎撃戦を仕掛けた。
敵の将は『泥土の魔王』グロ・トゥトゥム。
字面は弱そう。昔の僕も弱いと思い込んでいたが、そこは魔王と言ったところか、英雄譚に書かれている内容は弱さとはかけ離れている。
まずグロ・トゥトゥムが使う魔法はお察しの通り泥に関するものだ。
しかしその範囲が馬鹿にならない。
時に街を呑み込み、この高原地帯の大地全てを泥沼に変えた。流石に嘘だとは思うんだが、天位や神位クラスを知らない僕ではあまり否定しようがない。
沼は底なし沼。
入ったら最後、大抵のものは窒息死。
グロ・トゥトゥムの恐ろしきところは自らが生成した泥沼に潜航し高速で移動できる点。
これには『天龍』も苦戦したようで、沼に足を取られて動きが鈍くなったところを高速で地中から攻撃される。
本当に馬鹿にならない。魔の王を名乗るだけはある。
そのグロ・トゥトゥムもこの地で『天龍』グランダラサに敗れ、高原地帯はこれほど美しい光景になっている。
グロ・トゥトゥムが生きていたら高原は未だ泥だらけだったかもしれない。
『天龍』グランダラサは苦戦しながらも自らが得意とする魔法で対抗、泥沼の全てを剥き出しにして『泥土の魔王』グロ・トゥトゥムを打倒した。
これが英雄譚に記されている内容。
英雄譚は誇張表現をされることがあるからすべてを信じているというわけではないが、英雄を目指すということはこれらの伝説を目指すのも同義だ。
いつしか魔王とも対峙するかもしれない。
全てを見渡せないほどの高原を泥沼に変える奴と、天変地異を起こした龍人族の英雄。
現実離れしすぎてなれると思えないな。ランガルさんくらいの実力者ならまだ想像できるんだけどなあ。
天位や神位の強者と1度相対してみれば、わかるんだろうが、今のところその兆しは全くない。
結局は目標の目処も立てようがないのでひたすら努力して今の自分の力を高めるしかない。
*
高原地帯は半日で抜けた。
疲れ知らずの一角馬は偉大だ。ずっと走り続けられるのだから。
その代わり尻は痛い。
ずっと同じ体勢なせいで痺れてヒリヒリする。こういう時に役立つのが治癒魔法。
まあ愚痴は言わないのが礼儀だ。
一角馬も頑張っている。ここまで走ってくれたことに感謝だ。
一角馬のような生物は魔物ではなく単なる動物に組せられる。
人間への敵意どうこうというよりも『魔神』によって生み出された存在かどうかで決まっているらしい。
判別方法は魔物避けに反応するかどうか。
魔物避けの魔法具。
臭いを発する芳香剤のようなものでその臭いが魔物にはキツイ。魔族にもちょっと効くという話だ。
なので、魔族入りのパーティは魔物避けを避ける傾向があるという。
ちょっと意識が朦朧として眠たくなるくらいで戦闘では使い物にならない程度なので、害はなくそのままつけるパーティの方が多いって話だけどね。
魔物避けがあるお陰でスムーズな旅ができる。
先陣の知恵様々だな。
*
こうして2年の年月を過したサラキア王国を後にした。
人生の5分の1を過した国ということになる。
国境を抜ける際はさようならの一言を言い、僕たちは新たな国……レルシアム王国に踏み入ったのだった。
次回はちょっと話が進んでいきます。