終わりなき陰謀の始まり-フェル王国-
フェル王国の夜空は、いつもと変わらぬ静けさを保っていた。しかし、その静寂の裏では、王宮内の一部で異常な緊張感が漂っていた。
「――遺跡からの魔力の異常反応が、確認されました。」
報告を受けた一同は、言葉を失った。古代の魔法が再びその力を示したのだ。これまでの記録と照らし合わせても、その異常な魔力の発生源は、かつて時を止めた英雄が残した力に他ならない。
「まさか、時を止める目の力が……復活したというのか?」
誰かが声を震わせてつぶやく。フェル王国が一度裏切った英雄、その英雄が持っていた伝説の力が今、何者かの手に渡った可能性がある――。その事実に、集まった者たちの顔には明らかな動揺が走った。
「この事態を放っておくわけにはいかない。」
厳粛な声でその場をまとめたのは、王国の魔導士長だった。彼はすぐさま対応策を指示し始めた。まずは、英雄の力を持つ者の特定が最優先課題である。そして、その者が敵対する存在であれば、可能な限り早急に対処しなければならない。
「調査隊を編成せよ。全ての騎士団と魔導士に知らせ、すぐに動けるよう準備を整えろ。魔導士部隊は常に状況を監視し、異常があれば即座に報告するように。」
命令は迅速に下され、夜通しの緊急会議が始まった。会議では、魔法の使用痕跡や力の発動地点を洗い出し、フェル王国のどこで、どのようにして古代魔法が再び目覚めたのかを突き止めるための詳細な計画が立てられていった。
その計画の裏では、別の動きもあった。王宮の一部の高官たちは、この力を再びフェル王国の手中に収めることを望んでいた。かつてのように、この力を利用し、王国をさらに強大にするために――。だが、表向きには、それは「協力体制の確立」として発表されるに過ぎなかった。
「英雄の力を持つ者を見つけ出せ。そして……協力させるのだ。」
そう命じた者たちの目には、野心の光が宿っていた。フェル王国は、再び英雄の力を手に入れるための策謀を巡らせ始めたのである。
この力が、フェル王国に何をもたらすのか――それは、誰にもまだわからない。しかし、確実に言えることは、この力の目覚めが、王国の運命を大きく揺るがすであろうということだった。
そして、アレンが持つその力が、フェル王国の野望を打ち砕くのか、それとも彼らの手に落ちてしまうのか――物語の行方はまだ誰にもわからない。