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放たれるサファイアの砲口

(私、死んだのかしら?)

 殴られた瞬間、死を悟る。

 そして脳裏に浮かぶ走馬灯。

 その殆どが悠星との思いで。

 静かに目を瞑る。

 地面に叩きつけられる痛みを覚悟して。

「・・・・・・??」

 だが、その痛みは一向にない。

「大丈夫か?サファイア。」

 耳元から聞こえる声は目を開ける。

「間に合ってよかった。」

 ダークダイヤが私をキャッチして助けてくれたのだ。




「間に合ってよかった。」

 困惑顔で赤らめて驚くサファイアを見て安堵する俺。

 彼女達が戦っている間、俺は領域展開して中で自身の治療を行っていた。

 凱修さんから学んだ滊の運用法の一つ、治癒の活性化。

 滊を負傷した所に送り、細胞を活性化させて治癒能力を高める。

 その方法を使い、怪我を治しながらビジュエール・セイント達の戦いを見守っていた。

 だからこそ、サファイアを助ける事ができたのだ。

「身体に異常はないか?」

「えっと・・・、装甲のお陰で怪我はないわ。」

 先程の一撃を受け、装甲は大破。

 ランジェリーモードが露わとなっている。

「ただエネルギーがもう殆どないわ。装甲も直せない程。」

 俺との戦いで大半のエネルギーを消費した影響もあるのだろう。

 故にあの巨体を押し破る力が残されていなかったのだ。

「サファイア、もう一度奴を狙え。」

「私の話を聞いていた?もうエネルギーがない―――」

「エネルギーの事ならアテが有る。ライフル銃に損傷は?」

「えっと・・・無いわ。でもアテが有るって一体・・・・・・、はっ!」

 嫌な予感が過ぎったサファイアは俺から離れようとするので腹部に腕を回して逃がさないようにする。

「また私を辱める気ね。エッチ、スケベ。ヘンタイ。」

「違う。そんな悠長な事をしてる暇はない。ルビー、聞こえるか?」

「ああ!またそうやって誤魔化した!」

「多少ノイズがあるけど聞こえてる。」

「ルビー、私の声はノイズじゃないわよ。」

「サファイア?!そう・・・・・・、ありがとうダークダイヤ。」

「いい雰囲気、醸し出さないで。今戦闘中よ。」

「サファイア、嫉妬?」

「ルビー!!」

「あの〜、二人共。話を続けるぞ。」

 二人の痴話喧嘩を中断させて指示を出す。

「ルビー、もう一度だ。敵の動きを止めてくれ。アメジスト、フォローが欲しい。頼めるか?」

「ええ?ボ、ボクが?!何をすればいいのですか?」

 俺は作戦を全員に伝える。

「わかった。」

「やってみます。」

 ルビーとアメジストが了承する中、サファイア一人だけが懐疑的な態度。

「で、どうやった私のエネルギーを回復するのかしら?」

「俺のエネルギーを直接ライフル銃に送る。サファイア、簡易装甲だ。」

 装甲を直すにはかなりの時間を要す。ならばエネルギーの消費を抑えてその分を攻撃に回す考えを伝える。

「でもそれだと私、攻撃の反動に耐えれなくなるわ。」

「俺が支える。安心しろ。サファイアは俺が守る。」

「ッ(そうやってまた私をドキドキさせて・・・バカぁ。)、分かったわ。」

 大きく頷き、簡易装甲へと切り替えてライフル銃を構えるサファイアの顔は心なしか少し赤い。 

 俺はサファイアの背中に密着。

 重心を低く落とし衝撃に耐えれる体勢になりつつ、サファイアの手に自身の手を重ねる。

 腕部にあるコネクターをライフル銃に連結、エネルギーを送る。

「え?え?嘘・・・、このエネルギー量は何?」

「よく狙って。堪えて。」

 膨大なエネルギーが銃先に集まり、射線軸がブレる。

 それを必死に定めようとするサファイアを手助け。

「こっちの準備はできた。ルビー、アメジスト、頼むぞ。」



「任せて。シールダー、いって!!」

 意気揚々とシールダーに命令を下すルビー。

「頼りにしているよ、ルリ。」

 個人通話からエールにルビーのテンションは爆上がり。

 今の彼女に不可能という文字は存在しない。

 6基のシールダーは複雑な動きで相手を翻弄。

 身体のあちこちに浅い切り傷を幾つも生成する。

「無駄だぁ。こんな傷、痛くも痒くもないわ。」

 眷属の血を吸ってすぐさま回復。

 目の前で無防備な1基のシールダーに反撃の拳を大きく振り翳した。

「それを待っていた!」

 残り4基のシールダーが左右に分かれ、極太ワイヤーを発射、両腕を拘束。

 横に広げた状態で動きを封じる。

「アメジスト!」

「はい、行きます!」

 合図を受け駆けて大きくジャンプ。

 中継点のシールダーを踏み台に宙を駆け上がる。

斬蹴(ざんきゃく)!十文字蹴り!!」

 両脚から放たれた刃はバケモノの胸部に大きな十文字の切り傷を作る。

「今です!お姉ちゃん!あっ!」

 バケモノの超音波(反撃)が無防備のアメジストに直撃。

「アメジスト!!」

「集中しろサファイア!」

「でもアメジストが―――」

「アメジストは無事だ。幼馴染(明日香)の事を信じろ!」

「ッ!」

 手に力が籠るのを肌で感じたサファイアは神経を極限まで集中。

「ターゲット、ロックオン!」

「撃てサファイア!」

「喰らいなさい!」

 撃たれた超エネルギー砲はアメジストが刻んだ、修復中の深い切り傷へ命中。

「こんな攻撃、すぐに回復―――――、嘘だ!回復が間に合わないだと!!」

 分厚い肉片を抉るように貫き、そのまま吸血鬼へと迫り襲う。

「ウオオオオオオ!!!!」

 吸血鬼の断末魔はエネルギー砲に全身飲み込まれた事で消え去った。

「やった、わ・・・。」

 巨体の人形が塵となり、消え去っていく。

 吸血鬼を倒したのだ。

 俺はサファイアの頭をそっと撫でる。

「よくやったなサファイア。」

 安堵感に包まれた事で今まで張り詰めていた糸が切れた。

 限界だった。傷口が開いた感触。

 そのまま俺の意識が途切れる。

「え?ちょっと!?嘘でしょ!ねえ、目を開けて!・・・・目を開けて悠星!!い、いや・・・・、いやあああああああ!!!!」

 サファイアの叫び声が微かに聞こえた。

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