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拘束の果てに

「う・・・、ここはどこ?」

 微睡から覚める沙織。

 まだ視界はぼやけててよく見えない。

 薬を嗅がされた影響か、頭を動かそうとすると激しい頭痛が。

 頭を抑えようにも磔状態にされている為、両腕両足は自由に動かせないでいた。

 時間が経ち、ようやく視界が良好に。

 薄暗い地下。

 生活感は一切ない。

 人を閉じ込める為に作られた広い空間。

 そして沙織は目にする。

 目の前で全裸で息を切らしている女性と上半身裸で立ち尽くす男性の姿を。

「・・・・、どうして?」

 辛うじて出た言葉。

 何故なら沙織はその二人を知っているから。

 女性は襲われていると嘘をつき、沙織を陥れた――木ノ本蒼衣。

 そして男は・・・。

「なんで、牧崎さんが?」

「あ、目が覚めた沙織ちゃん~。待っていたよ目が覚めるのを。寝ている間に終わらせても良かったけど、折角だから沙織ちゃんの反応を楽しみながらしたいからね。」

(何を言っているのこの人は?それよりもどうして?私は確か吸血鬼に薬を嗅がされて・・・。)

「状況を飲み込んでいないみたいだね。なら、これならどうかな?」

 牧崎の額が縦に割れ、中にあるラピスラズリが輝き、吸血鬼へと変貌していく様に沙織は目を見開く。

「―――と言う事だよ沙織ちゃん。この俺様が吸血鬼なのさ!」

「ッ!」

 沙織は変身を試みる。が指輪がしていない事に気付く。

「駄目だよ沙織ちゃん。指輪はここさ。」

 サファイアの指輪は吸血鬼の手の中に。

「どうして貴方がこんな姿に?」

「どうして?それはお前のせいだ!!」

 怒りの咆哮に怯む沙織。

「ああ、違うな。君のお陰だよ沙織ちゃん。君のお陰でこの力を手に入れたのさ。」

「意味が分からない―――きゃあ!」

 背後から胸を揉まれる。

「ほっんとうに大きいおっぱい。憎たらしいぐらい。」

「Oh、(メル)よりも大きいですね~。こんなの見た事がありません。」

 漆黒のボンテージを着衣したヨーコとメルが羨ましそうに沙織のおっぱいを吟味。

「やめて!いやっ!」

 手足が拘束されているのでされるがまま。

「二人が病みつきになるのは分かるよ。俺様も一目惚れだった。あの夏、海水浴場で一際輝いていた沙織ちゃんに。どうにかして俺の元に来ないか、ずっと探り続けていた。時間を見つけては沙織ちゃんを観察し続けた程にね。」

「観察?もしかして時々感じていた視線はもしかして!!―――――っ!ああん。」

 木ノ本蒼衣が沙織のスカートの中に潜り込む。

「そうだよ、沙織ちゃんの全てを知りたくてね。そしてあの日の事だ。」


 そう、それは沙織達が買い物に出かけた日――リザードマンが襲来した日の事。

 沙織を尾行していた牧崎はリザードマンの襲来に巻き込まれ、攫われる。

 気がつけば手術台に寝かされ、強制的に受けさせられた改造手術。

 額に埋め込まれた瞬間、襲いかかる激痛。

 全身の毛穴から吹き出す血。

「失敗作だ。これは使えん。」

 虫の息となった彼に対して冷酷な一言を投げつけるマスクで顔を覆う男。

 意識が朦朧とする中、気が付けば山奥に捨てられていた。

 死に絶えの彼を救ったのは若い登山客であった。

「大丈夫ですか?」

 懸命に救助する女性に対して牧崎が抱いたのは欲望。

 喉の渇きと性的欲求に身を任せて女性を襲い掛かり、血を全て吸い尽くした。

 血を吸う毎に身体に力が漲り、怪我も治っていく。

 そして気づく。

 自分が吸血鬼の姿へ変わっている事に。

 そして理解する。

 自身の力を。最初から脳に刻まれていたかのように。

 その日から牧崎は人世に隠れ、女性を襲い、血を吸い続けてきた。

 そして自分の気に入った女性は自分の血を飲ませ眷属に変えた。


「だから感謝しているよ沙織ちゃん。君のお陰でこんな素晴らしい力を手に入れた。だからこの力でキミを手にする。俺の野望の為に。幼馴染という下らない幻想に囚われた君を救うためにね。」

「幻想とか意味が分かりません。私は・・・あん。い、いや、やめっ。いやん。」

 眷属である女子3人の攻めが激しくなる。

「さぁ今から沙織ちゃんのおマンコに精液を――――蒼衣、そこを退きなさい。」

「嫌です。私を痛めつけたお返しを今しているの。最低3回はイカせるまで無理です。」

「いいわね蒼っち、それオモシロソ~。」

 メルとヨーコが意地悪く笑みを見せる。

「さあ堕ちましょう。ヨーコ達みたいに。気持ちいいわよ。嫌な事も全て忘れられる。」

「そうダヨ~、吸血鬼の眷属になって面白おかしく暮らしましょう。」

 眷属達の声は直接脳に語り掛けて沙織を惑わし、抵抗する意識を刈り取っていく。

 耐え忍んでいた喘ぎ声が徐々に漏れ始める。

 そんな沙織の揺れ動く心を見透かしたのか、ヨーコが耳元で囁く。

「さあサオリン、牧崎マネージャー(マスター)に身を委ねなさい。」

 脳へと直接響く甘い言葉。

「大丈夫。マスターならちゃんと示してくれる。貴方の歩く道を。輝かしい栄光を。アナタをもっともっと輝かせてくれるわよ。」

「―――――のいら、ない。」

「え?」

「そんな栄光、私はいらない。」

 全てを拒絶する。

 ヨーコの言葉で迷いかけた道に一筋の光が正しき方へと照らしてくれたのだ。

「わ、私が、欲しいのはそんな栄光じゃない。私はただ、悠星と一緒にいたいだけ。悠星の傍にいたいだけ!」

 幼い頃に抱いた夢。

 それは悠星のお嫁さんになる事。

 彼と結婚して子供と共に幸せな家庭を築く。

 質素でもいい。

 贅沢でなくても構わない。

「私は彼と一緒ならどんな苦難だって乗り越えて見せるわ。私の願いはそれだけなの!」

 沙織の言葉に眷属達は驚き、動きが止まる。

 誰も沙織の思いに理解できなかったのだ。

「ふ、ふ、ふ、ふざけるな!!」

「うぐっ!!」

 怒りで顔を真っ赤ににした吸血鬼が沙織の首を絞める。

「あの娘と同じ事を言いやがって!内職とパートで手に擦り傷を作り、髪の手入れも出来ないそれが幸せだと。原石を燻む事が望んでいた事だと!認めない!絶対に認めない!」

 

 怒りに吠える吸血鬼。

 彼の脳裏に浮かぶのは初めて担当したアイドル。

 輝かしい原石だった。

 だが、その娘は陽の目を浴びる事はなかった。

 牧崎に内密に幼馴染と付き合い妊娠したのだ。

「私、アイドル辞めます。彼と結婚します。子供産みたいです。」

 どんなに説得を試みても彼女の意思は固く、そのまま彼女は芸能界から姿を消した。


「あんな事、二度とさせるか!!沙織ちゃん!キミは芸能界で輝くべき存在!それ以外の道などないのだ!!幼馴染だと!!ふざけるな!!!」

「うぐっ!うぅん!!う〜〜〜。」

 息継ぎが出来ず、酸欠状態に陥る沙織。 

 手足をジタバタして抵抗するも無力。

 口の中に指を突っ込まれる。

「そんな幻想、俺様が壊してやる。俺様の眷属(モノ)にしてあんな幼馴染、忘れさせてやる。俺様が正しい事を証明してやる!!」

(だ、駄目!このままじゃ私、吸血鬼に!眷属にさせられる!!そんなのイヤ!!!)

 助けて!とひたすら願う。

「忘れろ!そして俺様の為に生きろ!!」

(イヤイヤ、忘れたくない!悠星助けて!)

 だが沙織の願いは儚く散る。

 手の切り傷から流れた血が沙織の体内へ流し込まれた。

「あ、ああ、ああぁぁあ・・・。」

 脳が侵される痛覚が全身を駆け回る。

(変えられる。私が変えられる。)

 蝕む何かが悠星の事を忘れさせようとする。

「ああ・・・、た、助けて・・・。」

ドカーン!!!

 突如大きな爆発音と振動。

「何事だ!?」

 吸血鬼の疑問は颯爽と現れた人物によって答えが導かれる。

「そこまでだ!吸血鬼!」

 黒い装甲を身に纏った男―――ダークダイヤである。

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