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検査の結果

「異常はなかったわよ明日香。ええ、体調も問題ないわ。迎え?大丈夫?部活があるでしょう、無理に・・・、そう、向かっているのね。じゃあお願いするわ。ええ、じゃあ後でね。」

 検査の結果を伝え終えた沙織は通話を切る。

 朝から行われた検査はほぼ一日を費やした。

 時刻は午後5時。

 診断の受付は終わり、人はまばら。

 エレベーターに乗り、個室の病室へ戻り病衣から明日香が持ってきてくれた私服へと着替える。

コンコン。

 その最中、突然病室の扉からノック音。

 入ってきたのは勤務5年目の女性看護師。

 仕事ができるオーラが常にでている女性だ。

「冴園さん、朝からずっと検査で疲れたでしょう。これ、どうぞ。」と渡されたのは小袋に入ったチョコレート。

「ありがとうございます。」

 沙織は素直に受け取りポケットの中へ。

「あら食べないの?」

 今すぐに食べて欲しそうな口ぶり。

 その様子に沙織は確信を得る。

「中に何か混入されていては困りますから。」

「な、何を言っているのかしら?私がそんな事―――。」

「今日の朝、後輩の看護師さんに注意していましたよね。『患者へ気軽にお菓子を与えるな。』と。」

「!!」

 その瞬間、表情は一変。

 仕事ができる優しい看護師から嫉妬深い変質者に。

 沙織は身の危険を感じ、窓際まで後退。

「本当に嫌になる程、勘が鋭いわね。マスターの言う通りだわ。」

 赤く光る瞳と『マスター』の単語に戦慄を覚えた沙織はシーツを投げつける。

「っ!!」

 視界を奪った隙をついて外へと逃げ出す――が、「逃がさないよ!沙織ちゃん〜!」

 窓ガラスが割れ、中へと侵入していた吸血鬼が沙織の企みを邪魔。

 布で口を塞ぎ、薬を嗅がす事で昏睡状態にさせた。

「上手くいきましたねマスター。」

「ああ、お前が用意してくれた薬のおかげだ。」

 倒れた沙織を抱き抱えて匂いを楽しむ吸血鬼。

「嗚呼、チンポに響くいい匂い。今すぐここで犯して俺様のモノにしたいぐらいだ。」

「マスターがそうされたいのであれば手伝いますが。」

「いや、どうせ邪魔が入るだろう。俺様の隠れ家に連れて行く。そこでじっくりたっぷり楽しむさ。」

 勝ち誇る吸血鬼の耳に届く廊下をかける音。

「お姉ちゃん!」

「おい、智子。」

「はいマスター、ここはお任せを。」

「待ちなさい!」

 行手を阻まれた明日香を嘲笑いながら割れた窓から飛び降りる吸血鬼。

 地上に着地し、5歩ほど駆けたと同時に病室から紫の光が放たれ、窓から飛び降りてきたのはアメジスト。

「逃しません!」

「無駄だ。俺様の勝ちだ。沙織ちゃんを貰っていくぜ!」

 空へと飛びたつ吸血鬼

「絶対に逃がさな―――え?」の後を追いかけようとする彼女の足が止まる。

 若い女性看護師や女医、女性患者達の人垣がアメジストの行く手を阻むのだ。

 そう、吸血鬼はこの病院にいた若い女性を全て眷属に変えていたのだ。

「ちょっ!え?ど、退いてください!」

ーマスターの邪魔はさせないー

ーマスターの邪魔はさせないー

 赤い瞳を輝かせ呪文のように呟きアメジストに迫る眷属達。

 彼女達の妨害で足止めされたアメジスト。

 その間にどんどんと小さくなる吸血鬼の姿。

「邪魔しないで!!お姉ちゃん!!お姉ちゃんを返してよ!!!!」

 アメジストの遺憾の叫び声が夕暮れの空に響いた。


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