血の法則
「さ~おりん!」と体操服の着替え途中の沙織に背後から抱き着いて巨乳をもみもみするのは小学の頃から学校が同じである女子生徒、北野澄玲。
可愛い女の子へ息をするようにセクハラする事で行内ではちょっとした有名人である。
「ひゃん!ちょっと澄玲。それは止めて!といつも言っているでしょ!」
「だってさおりん、ぼ~としていたから。ほら。」
澄玲の言葉で気付く。
他の人は既に着替え終え、グラウンドへ向かっている事に。
「大丈夫さおりん?今日朝からずっと心あらずだけど・・・。」
「大丈夫よ。」
気丈に振舞う沙織。
「・・・・そう?それならいいけど・・・。それじゃあ私先にグラウンドに行ってるから。」
更衣室から出ていく澄玲。
着替えを再開する手が再び止まる。
澄玲と入れ替わりに瑠璃子が入室してきたから。
既に体操服に着替え終わっている瑠璃子。
どうやら二人きりになる機会をうかがっていた模様。
「サオリ、調子はどう?」
「身体の方は悪くないわ。お陰様でね。」
昨夜ダークダイヤに犯された沙織は疲労困憊で立ち上がれず、そのままダークダイヤに家まで運んでもらう羽目に。
部屋のベッドに体を預けた瞬間、熟睡。
ここ最近類を見ない快適な朝を迎えることが出来た。
「それなら良かった。身体の調子もよさそう。」
と手渡したのはサファイアの指輪。
「徹夜で修復した。変身に支障はない。」
「ありがとう・・・。でも徹夜明けだからって種目を欠場するのはなしよ。」
沙織の忠告に不満げな態度を見せる瑠璃子。
「けち。」
親しい間柄にしか見せない人間味がある表情だ。
「ねえ瑠璃子・・・・、貴方に話したい事があるの。放課後、時間を作ってくれる?」
「構わない。」
一つ頷き、更衣室を出ていく瑠璃子。
一人残された沙織は大きく息を落とし気持ちを切り替える。
今日は球技大会。
全校生徒の前で選手宣誓するのだ。
しけた顔を皆の前で披露するわけにはいかない。
頬を2度叩き、気持ちを切り替える。
そして更衣室を出た時にはいつもの生徒会長モードの沙織へと切り替わっていた。
時間も残りわずか。
このワンプレイで試合終了となるだろう。
コーナーキック。
ゴール前に陣取る俺にサッカー部とバスケ部の男子生徒3人掛かりで取り囲み、俺の自由を塞ぐ。
「研磨!」
審判の笛と同時に赤間から蹴られたボールは狙い通り俺の所へ。
「うおおおおおお!!」
相手がファール覚悟のプレスを蹴散らして跳躍。
ヘディングシュートはキーパーの手を弾き、ゴールネットを揺らした。
ピッピィ!!!!!
試合終了のホイッスル。
「よし、引き分けだ!優勝候補の3組に同点は大きいぞ!」
赤間達と喜びを分かち合い、相手チームへ挨拶。
「最後はやられた。まさか3人掛かりでも負けるとは・・・。」
サッカー部1年エースと握手。
「そのフィジカルで帰宅部なんて勿体無い。なぁサッカー部入らないか?お前ならすぐにレギュラーとれるぜ。」
「おいおい待ってくれよ。研磨君だっけ?バスケ部はどう?」
二人からの熱烈なお誘い。
嬉しいが丁重にお断りをさせてもらう。
部活動には興味がないのだ。
「おや、怪我しているよ。」
サッカー部の膝がすりむいている事に気付き、その事を伝える。
「あ、最後のコーナーで縺れて転んだからな。ま、これぐらい只のかすり傷さ。」
「達也、次の試合まで時間があるし、消毒でもしてもらった方がいいぞ。」
「そうだな。」
3組の二人を見送ったタイミングを見計らうようにやってきたのは明日香。
「悠星くん、お疲れ様。最後、格好良かったよ。」
「そうか?着地失敗して転倒しただけだぞ。」
「ううん、そんな事ないよ。充分格好良かった!!」
明日香からの絶賛。
悪くない気分だ。
「そう言えば明日香の方はどうだった?」
周囲の嫉妬らしき視線を払いながら尋ねる。
「勝ったよ。次は決勝だよ。」
明日香はソフトテニスに出場。
「他の競技も上手く勝ち残っているみたいだし、このまま総合優勝狙えるかもな。」
「うん!あ、悠星くん、肘擦り剥いてる。」
「え?あ、本当だ。」
「待って。ボク絆創膏持っているから。」
明日香に手当してもらいながら思う。
(地球に馴染んだな俺も。出血で同様しなくなるとは・・・。)
血は智なり―――ブレンリッド星の格言だ。
血液は知識の結晶であり血を流す事は培った知識を失う事。
そう教えられてきた。
だからこそ地球に来た時、出血に対しての反応の違いに驚いたものだ。
「(こうやって星々での考え方や身体の違いを知るのは中々面白い。そうそう、初めて地球人の血を見た時は随分驚かされた―――。)あ!」
その時、俺の脳に電撃が走る。
とんでもない事を思い出したのだ。
「ゆ、悠星くん?どうしたの?」
「ごめん明日香、席外すわ。」
「え?ちょっと悠星くん!」
明日香の制止を無視して駆け出した俺。
向かったのは体育館。
「(確かバレーボールに出場していると・・・。)いた!」
人混みから離れた壁に持たれて黄昏ているルリの姿を発見。
「ルリ先輩、来てください!」
少し驚くルリの手首を掴み、体育館から連れ出す。
周囲の女子から黄色い悲鳴と騒めきが聞こえるが今の俺はそんな事気にしている余裕はない。
一刻も早くルリを人気のない場所へ連れ出す事しか考えていなかった。
「どうしたのユウセイ。」
俺が連れ出した場所は特別教室が連なる第ニ教室棟の影。
ルリを校舎側に追いやり、壁ドン。
「もしかして我慢できなくなった?いいよ、ユウセイの好きにして♡」
服を引っ張り谷間を見せつけてくるルリ。
いつものように色気満々の下着が見えたがそれどころではなかった。
「先輩、昨日吸血鬼の血痕を採取していましたよね?」
「うん、した。」
「何色でしたか?」
「勿論赤だけど・・・ユウセイ?」
唖然とする俺の態度に何事かの心配そうに覗き込む。
「そうか、ルリ先輩は知らなくて当然ですね。実は生命体の血液の色はその星の大気中に含まれる物質の種類や濃度、地中の性質等が大きく影響しているのです。そして大気中に含まれる物質の濃度などは星々によって絶対に違う。つまり完全同色はあり得ないのです。」
「っ!!それじゃあ・・・。」
「はい、吸血鬼の血の色は赤―――つまりアレは地球生まれの生物という事になります。」
「ユウセイ、リザードマンの血も赤だった。」
「そう言えばそうだ!これは一体どういう事だ?」
「今、採取した血液は家にある。」
「検査は?」
「まだ。昨日はお楽しみだったし、サファイアの修復もあった。」
「そうでしたね・・・。」
サファイアとの3Pでハッスルし過ぎたせいだ。
「これはかなり気になる情報。すぐに調べる。」
「すぐに?学校は?」
「早退。警察にリザードマンの死体の一部を譲り受ける必要もある。」
「俺も手伝います。」
このまま俺はルリと共に無断早退。
その結果、後日俺達二人は授業を抜け出して逢引きしたという噂が広まったのは言うまでもない。




