新たな被害者
「どこにいるのかな?」
地下駐車場に一人佇む彼女の名は藍河メル、22歳。
父がオーストラリア人で母が日本人のハワイ生まれハワイ育ちの日系アメリカ人。
アメリカの大学在学中にスカウトされ、去年卒業と同時に来日した90cmを超えるバストが自慢のグラビアアイドルである。
デビュー1年で既にDVDを3つ発売している今人気爆上昇中の売れっ子。
胸の谷間を強調した臍出しタンクトップ、はみ尻ショートパンツの姿という日本人離れしたナイスバディ。
そんな彼女が何故一人地下駐車場にいるのか?
それは呼び出されたからである。
「ヨーコちゃん、何処にいるのかな?はあ、こんな所で待ち合わせなんて。言ってくれたらすぐにホテルを取ってベッドで可愛がってあげるのに。」
性に関して緩い彼女は両刀使い。
これまで数多の男女を喰べてきた。
「はやくこないかなぁ~~。」
待ち人の事を考えていたら、背後から聞こえる足音。
「ヨーコ、やっと来た――――キャア〜〜!」
悲鳴をあげるメル。
彼女が目にしたのは傷だらけの吸血鬼。
真紅の眼を血走らせて手を伸ばす吸血鬼から背を向けて逃げ出すメル。
「誰か!help!!」
メルに声が反響。
地上へと繋がる道へと走るメルの前に突如立ちはだかる人影。
「ヨーコ!た、助けて!バ、バケモノが・・・。」
「ダメだよメルちー。逃げちゃ。」
メルの腕を掴む陽子の力は人間を超えていた。
「ほらマスター。捕まえたよ。」
吸血鬼はメルの肩を掴んで後ろから噛みつき血を喰らう。
「がはっ!あ・・・。」
血を吸う事で吸血鬼の傷が塞がり始める。
そう、吸血鬼にとって女性の血は特効薬であり力の源なのだ。
「あはっ、そんなに夢中に飲んじゃって!このまま殺しちゃうの?」
「バカ言え!こんな上玉を殺すわけないだろうが。」
かすれ声。
吸血鬼は超音波を発生させた際、喉を壊していたのだ。
メルの血を吸った事でようやく声が回復。
「きゃはっ、つまりメルちーもヨーコと同じ、眷属にするんだね。」
吸血鬼は返事をしない。
何故ならメルの血を吸う事に夢中だから。
陽子に両腕を抑えられ抵抗できないメル。
苦しむ声が零れる口に吸血鬼の指が入れられる。
「ほら飲んで。マスターの血を。そうすれば眷属になって気持ちよくなれるよ。」
ゴクン!
メルの喉が鳴る。
その瞬間、熱い何かが彼女のカラダ全体を激しく駆け廻る。
カラダの仕組みを変えられる痛み。
だがそれが快楽へと変換されてしまう。
「あはっ、これでメルちーもヨーコ達と同じ、マスターの眷属だね。」
「ああ~~、はあああ~~~。マ、MASTER~~~。」
ふやけた表情を見せるメルの瞳は綺麗な小麦色から輝く紅色へと変色。
「オレ様の命令に従うよな、メル。」
「イエス、MASTERの為にこのカラダを捧げます。」
メルの宣言に高揚感が高まる。
(これだ!オンナを俺のモノにするこの支配的欲求!もっとだ!もっとオンナを、最高のオンナを俺の眷属に!!)
「MASTER、メルにもっと。気持ちいい事してください。」
「ああ、いいぞ。」
柱にカラダを預けさせ、片足を無理矢理上げられたメル。
これからどうされるのは百も承知。
それが待ち遠しい。
「メル、お前は俺のモノだ!!!」
「おぼおおおお~~~。」
メルの奇声は人気のない駐車場に何度も響き渡る。
「ねえ、マスター、ヨーコも気持ちよくさせて。」
「お前は後だ。」
「ふ~~ん、そう。折角ヨーコがいい考えをおもいついたのに~~。」
「何だ?それは。」
「聞きたい?」
陽子の耳打ちに吸血鬼の口は裂ける程吊り上がる。
「ソイツはいい案だ。」
「でしょ~~。」
「ククク・・・楽しみだ。」
首元に抱きつく陽子とのキス。
吸血鬼の瞳には先を見据えていた。
「加えてやる、サファイアも俺様の眷属にしてやる。待っていろよ~~、沙織ちゃん。」
吸血鬼の顔から笑みが消える事はなかった。




