仲違い
「瑠璃子、ちょっと来て。」
1限目終了後の休憩時間、沙織は瑠璃子を連れ立って教室を出る。
沙織の険しい態度に周囲はザワザワ。
興味本位で覗き見しようとする人はおらず。
皆、沙織から発せられる雰囲気に飲み込まれ、萎縮していたのだ。
その中ただ一人、瑠璃子だけはいつも通り。
向かったのは屋上へ繋がる階段の踊り場。
ここは人の行き交いが殆どなく秘密の話をするには絶好の場所である。
「昨日のあれは何?」
開口一番、苛立ちを吐露する。
「ダークダイヤの件?」
「それしかないでしょ!」
表情を全く変わらない瑠璃子。
普段と変わりない彼女に苛立ちが増していくばかり。
「何よ性奴隷って!ふざけているの?」
「ワタシは真剣。」
「瑠璃子!」と叫んだ沙織は間を空ける為に大きく深呼吸。
自身の気持ちを落ち着かせる。
声を荒げても解決に至らない、と気付いたのだ。
「ねえ瑠璃子。何でこんな事になったの?ダークダイヤに脅されている?」
「そんな事はない。ワタシが決めた事。」
瑠璃子はここでストーンジュエルの共鳴について詳しく説明。
「その理屈は理解したわ。でもねだからって好きでもない相手に身体を許すなんて出来ないわ。」
「それなら仕方がない。」
納得した、と思ったが瑠璃子の次の発言に驚かされる。
「ならダークダイヤに無理矢理犯すように頼む。」
「瑠璃子、貴女それ本気で言っているの?」
「本気。サオリとアスカはダークダイヤに抱かれてもらう。」
「いい加減にして!」
抑えていた怒りが止まらない。
瑠璃子の両肩を強く掴み、訴える。
「瑠璃子、どうしたのよ!どうしてこうなったの?瑠璃子は悠星の事が―――。」
「ワタシ自身が選んだ道。後悔はない。」
「そう・・・。」
彼女から離れる。
もう何を言っても無駄だと悟ったのだ。
「わかった。瑠璃子がそういうのなら・・・・・・もう何も言わないわ。」
そのまま立ち去る。
互いの意思がすれ違ったまま。
(許さない・・・。絶対に許さない。)
沙織の意思は固まった。
親友を変えた、ダークダイヤに怒りを向ける。
(何が何でもダークダイヤを倒してみせる!)
一方、その場に残された瑠璃子。
彼女がダークダイヤの正体を最後まで明かさなかった。
それは彼女自身の意思で気付いていてほしいから。
「そうでないと二人の関係は変わらない。これは二人の問題だから。」
そして信じている。
絶対に良い方向へ進む事を。




