これからのこと
俺が目覚めたのは正午を過ぎた頃。
変身と展開領域はいつの間に解除されており、ベッドには俺一人。
ルリの姿はない。
夢だったのか、と疑うもベッドにある小さな血痕と大きなシミが取り越し苦労だと教えてくれた。
「ユウセイ、起きた?」
部屋に入ってきたのはバスタオル一枚のルリ。
どうやらシャワーを浴びていた模様。
髪はまだ乾いておらず、バスタオルからはみ出た上乳には水滴がいくつか残っていた。
「おはようございます先輩。シャワーを浴びていたのですね―――、どうしましたか?」
「やり直しを要求する。」
「え?」
「・・・ちゃんと、名前で呼んでほしい。」
可愛いおねだりにドキッと心臓が跳ねる。
そう。昨日ルリを抱いている時、「ワタシの事、名前でルリと呼んで。」とおねだりされたのだ。
「おはようございますルリ先輩。」
「うん。」
俺だけが拝める満面の微笑みと情熱的なおはようのキス。
風呂上がりの熱帯びた素肌と彼女独特の香ばしい香りが鼻腔を擽り、下半身に血が滾り始める。
「ユウセイ、押し倒したいならいいよ。ワタシはもうアナタのモノだから。」
バスタオルの結び目を解こうとするルリの手をそっと掴む。
「魅力的なお誘いだけど今は・・・。聞きたい事もあります。」
「うん、ワタシもユウセイに話す事がある。今後について。」
「確認したい。ユウセイの目的はストーンジュエリーのエネルギー確保、ジェノ・ブリークスを倒す事、そして怪羅の復讐の3つで合ってる?」
俺が用意したインスタントコーヒーを一口飲み、尋ねるルリ。
着替えがないので、今はランジェリーモードの上に俺のワイシャツ一枚。
フェチズムな格好だ。
「そうですね。」
その内のエネルギー確保は達成。残りは二つ。
「ユウセイはあの男の復讐についてはどのように考えている?」
「具体的にはまだ何も。」
前にルリを攫って怪羅の前に犯してやろう、と考えていた事を伏せておく。が、
「ならあの男の前でワタシを犯せばいい。そうすればあの男に屈辱を与えられる。」と自ら提案してきた。
「ルリ先輩!それはちょっと―――。」
「どうせならアスカとサオリもワタシと一緒に犯している姿を見せる。自分が狙っていた女性が奪われたと知れば激怒するに違いない。」
「あのルリ先輩、それは余りにもやりすぎでは・・・・。」
「それぐらいまだ生温い方法。本当は殺してやりたい程。」
「先輩・・・。」
どうやら怪羅への憎しみは俺が思っている以上に根深いものらしい。
「もしかして快羅を殺す機会を伺っていましたか?」
「ユウセイ達に出会う前までは。ビジュエール・セイントになったのはあの男を殺す力が欲しかったから。でも今は違う。ユウセイ達と離れ離れになりたくないから。」
その言葉を聞いて胸を撫で下ろす。
「だけど社会的には抹消する。二度と表舞台に出てこれないようにする。」
「その考えならば俺も手伝います。怪羅を赦すわけにはいかない。」
「ありがとうユウセイ。」
微笑むルリ。
その笑みは柔らかく優しく美しい。
俺はこの笑顔を守ると心の中で強く誓う。
「もう一つ、質問いいですか?」
コーヒーのお代わりを淹れ、俺はずっと気になった事を聞く。
「さっき、ルリ先輩は自分の事を『アナタのモノ』と言っていますよね。それって―――。」
「その言葉通り。ワタシはアナタのモノ。そしてサオリとアスカも同様にアナタのモノにする。」
「・・・・・・。」
久々にルリ先輩の思考についていけなくなった。
「あの、それはどういう事ですか?」
「性奴隷の方がいい?」
「そういう事ではありません!俺が言いたいのは―――。」
「ユウセイにはダークダイヤとしてルビー同様、サファイアとアメジストを陵辱する。ワタシ達の強化の為に。」
「・・・・・・どういう事ですか?詳しく聞かせてください。」
俺が前のめりになっているのは単に沙織と明日香を犯す事に惹かれた訳ではない。
ビジュエール・セイントの強化に興味を持ったのだ。
ようやく俺が興味を持つ態度を見せたので嬉々として自分のスマホの画面を見せる。
「これはルビーの能力データ?」
ルリに促されスクロール。
次々と見せられる数値に眼をそそられる。
「数値が上がっている?!先輩、これはどういう事ですか?!」
「最初のは初期のデータ。二つ目以降はユウセイ――ダークダイヤに犯された後に計測したデータ。同様の現象はサファイアとアメジストにも見られている。つまりこのデータから導き出される答え、それはー―――。」
「ダークダイヤが犯す事で。」
「ワタシ達は強くなれる。」
「「共鳴。」」
互いのストーンジュエリーが惹かれ合い、交わる事により強くなる現象。
「この共鳴には条件がある。変身している事。絶頂が大きければ大きい程その効果は比例する。」
ルリは最後のデータを見せてくる。
「これは今朝採取したデータ。」
「凄い。初期に比べて倍以上!でもそれは他の方法もあり得るのでは?例えば自分で――。」
「既に実証済み。変身時に自慰行為をしたけど、効果なし。」
「ん?もしかして、2度目の時にあっさり負けた事や研究室で誘惑してきたのも。」
「そのデータを取る為。」
ルリ先輩のそのストイックな行動に尊敬する反面、少し苛立ちも。
(つまり実験の為なら誰でも股を―――。)
「勘違いしないで。ワタシは相手がユウセイだと確信を持ったから行った。ユウセイ以外ならこんな事は絶対にしない。」
はっきりと、確固たる意思を向けてきた。
「ワタシ達はもっと強くならないといけない。ゴクドーみたいな強敵にも勝てるようにならないと。」
「自分の身を守る為に身体を穢される。本末転倒だと思いますけど・・・。」
「得体の知れないバケモノに穢されるよりも初恋のユウセイに抱かれる方が遥かにいい。サオリやアスカもユウセイに抱かれたいと思っている。」
改めて面を向かって言われると嬉し恥ずかしい。
「ユウセイはサオリとアスカがバケモノや怪羅のモノになってもいいの?」
「良くありません!」
はっきりとした回答に頬を緩める。
「ならサオリとアスカを抱いて。サファイアとアメジストをダークダイヤのモノにする。」
「わかり、ました。」
両手を強く握る。
何度も脳裏に浮かんだ。
二人が怪羅に抱かれる姿を。
その為に苛立ちが煮え上がる。
どうして俺ではないのかと。
そして気づいたのだ。
俺は沙織と明日香の事が好きなのだと。
どちらかをなんて選べないし、誰にも渡したくない。
だからここで決める。
「俺は沙織と明日香を手に入れます。もう誰にも渡さない。」
「うん。ワタシも協力する。」
嬉しそうに微笑むルリ。
だけど俺には不安が一つ。
それはルリの言動。
まるでそこには彼女自身がいないようなニュアンス。
だからこそ、俺は彼女の手を掴み、宣言する。
「もちろん、ルリも誰にも渡さない。お前も俺の大切な人だからな。」
びっくりした表情はすぐに綻ぶ。
「うん。ワタシはもうユウセイのモノ、だよ。」
誓いのキスを交わした。




