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ゴクドーとの戦い

「聞いているぞ。同胞(はらから)に喧嘩を売ったひ弱な生命体が一人いるとな。」

 豪快に振り下ろされるハルバート。

 その威力は絶大。

 俺が着ているボディスーツを簡単に貫通、身体を切断する事が出来るだろう。が、全てが大振りで隙が多い。

 だが、反対の手に持つ鞭のトリッキーな動きがそれを上手くフォロー。

 さらに二本の爪が常に俺へと狙いを定めているので、間合いに入れない。

 防戦一方。

 生身による肉弾戦しか攻撃の手立てがない俺には圧倒的不利な状況だ。

 なので一つ手を打つ。

「来い、シールダー!」

 俺の呼びかけに応える2基のシールダー。

 この2基は粘糸に捕縛されていた物。

 消火栓を破壊した時に解放されていたのだ。

「ぬぬ、キサマもそれを扱えるというのか!?」

「シールダーの操作権を奪うのはこれが初めてではないからね。」

「だが、6基全てでもワレを倒せなかったのだ。たった2基で何が出来る?」

 ハルバートが俺を守るシールダーを弾き飛ばす。

 電流が流れる鞭が蛇のように宙を走り、俺を捉えようとするので大きく飛び退く。

「だったらこんな使い方は?」

 目の前に浮くシールダーを両腕に装着。

 先端部から剣身を出した凸型の盾を携え、ゴクドーに挑む。

 鞭を躱し、ハルバートを盾で受け止めた事で初めて俺の間合いに入り込む事が出来た。

 すかさず左腕の刃をゴクドーの胸に刺し狙う。が、両腕の爪に受け止められる。

 軋み合う鍔迫り合い。

 先に嫌ったのは俺。

 余っている腕二本が俺へと拳を振りかざしてきたからだ。

(これでもまだ分が悪いのか。)

 内心苦虫を噛む。

 が焦りはない。

 分が悪いのであれば打開すればいいだけ。

 再び攻めに好じる。

ビシン!

 電流走る鞭が地面を叩く。

 俺の足を狙ったというよりも足を止める意味合いが強い攻撃。

 そしてすぐさまハルバートへと攻撃を繋がてくる。

 俺は体を捻って避け、左腕に装着しているシールダーを発射。

 身軽な動きで躱しゴクドー。

 着地する瞬間を狙い、もう1基を発射。

「チッ。」

 さっきより余裕がない避け方。あからさまな舌打ちが何よりもこの証拠。

 だけど俺の本命はシールダーではない。

「何?!」

 目の前で鬱陶しく動くシールダーに気を取られたのか、それとも俺が攻めてくると思っていなかったのか。

 明らかな油断。

 右手の手刀は鞭を持つ中足の手と腕の付け根を直撃。

 俺のイメージ通り切断。

 ルビーの武器を遠くへ蹴り飛ばし、ゴクドーから奪い返す。

「今度は友人から奪ったマントを返して貰う。」

「小賢しい!」

 紫色の血が噴き出ている腕を粘糸で素早く止血。

 反撃に出るゴクドー。

「シールダー!」

 横へ飛び退き、シールダーを呼び戻す。だがそこを狙われた。

「そこだ!」

 盾の裏側から振り上げられた一撃で1基のシールダーは真っ二つ。

 誘爆により完全破壊。

 もう1基は間一髪で攻撃を躱し、何とか俺の元へ。

 互いに手札を一つずつ失った状況。

 戦況的には俺の方が不利。

 それは残された1基のシールダーを守るような戦いを強いられているからだ。

 最後のシールダーを失えば俺はハルバートを防ぐ手立てがなくなるからだ。

「どうした!動きが鈍いぞ!」

「がはっ!」

 ハルバートに意識が向き過ぎて反対側の拳に反応できなかった。

 脇腹にめり込み、肺の空気が外へ強制的に吐き出される。

「喰らえ!」

 真上から振り下ろされるハルバート。

 慌ててシールダーで防ぐ。

 その攻撃が囮だとわかっていたとしても、だ。

 突き穿つ爪。

 幸いボディスーツが貫通する事はなかったが、それでも大ダメージによる痛みが襲う。

「ガガガ!」

 本能的に後方へと引き下がる。

 間髪なく追い打ちをかけるゴクドー。

 この間合いを嫌う俺はシールダーを刃から銃モードへと変更。

 乱発して無理矢理距離を離す事に成功した。

(くっ、今の乱発で弾切れ・・・。)

 元々ルビーが戦っていた時に大半を使い果たしていた。

 だから大事にとっておいたのだが、しかし今の状況は使わざるを得ない。

(とにかくあのハルバートだ。アレが邪魔だ。無効化するか破壊するかしないと俺に勝ち目はない。)

 この僅かな睨み合いの中で打開策を模索する為、脳をフル回転。

 攻撃が受けた箇所から多少の痛みが。

 それが俺を焦らせて思考を鈍らせる。

(どうすればいい?どうすれば勝てる?)

 答えが見えない闇雲を踠き、答えを探す手に触れたのは1つのアドバイス。

 ―ピンチの時にこそ落ち着く事。―

 凱修さんから言われた言葉。


「悠星チャンはすぐに焦る癖があるわ。それは絶対にダメ。戦場では致命的。命取りよ。」

 凱修さんとの組手で攻めあぐめた俺が起こした行動について厳しく指摘。

「何事も冷静沈着に、よ。感情に身を任せるな、と迄は言わない。怒りが力に変わる事だってあるし、高 揚が場面の転機になる事もあるから。でも焦りは絶対にプラスには働かない。冷静さを失い視野を狭めて勝ち筋を自ら消すだけよ。冷静を失わない事を心がけなさい。」

 いつも以上に強い口調で語られた。

「だから焦ったらすぐに落ち着く事。深呼吸して、ね。ほらやってみなさい。」


 大きく深呼吸。

 それは凱修さんから教えてもらった特別なやり方。

「スーー。」

 音に出して空気を口から吸い込む。

 外から取り入れた空気は肺ではなく、体全体へ。

 特に脳へと送るように。

 密閉された空間を換気するイメージで体内にあった古い空気を外へ追いやり、新たな空気を取り入れる。

 それを3度ほど行うと脳がスッキリ、頭の中で彷徨う靄が晴れていく感覚。

「さあ。どうする?」

 もう一度考え直す。

(あれ、そういえば何でゴクドーは攻めてこない?かなりの隙があったはずなのに。)

 その答えはすぐにわかった。

 ゴクドーもかなり体力を消耗しているのだ。

 今まで気がつかなかったが相手の体の至る所に切り傷が。

 相手はルビーと俺の連戦。

 ルビー相手に無傷で勝てた訳ではない。

 考えてみればすぐにわかる事だ。

(そんな事にも気づいていないとは。本当に凱修さんの言葉は身に沁みるよ。)

「こんな時に笑みを零すとは。随分余裕を見せるではないか。」

 自然と零れた笑みに対しての嫌味。

 ゴクドーの嘲笑う口調も今思えば自分自身の余裕のなさを誤魔化しているだけだと気付く。

(相手も苦しい。勝機はある。)

 俺は右手に持つシールダーの取手を強く握る。

 勝つため、俺は勝負を仕掛けることにした。

「シールダー、頼むぞ!」

「はあああ!」

 全速力で駆ける。

「玉砕覚悟か?バカめ!」

 ゴクドーには破れかぶれの行動に見えた。

 それもそのはず。

 今までとは違い、余りにも短絡的な直進だから。

 ハルバードを真上に大きく振りかぶり待ち構える。

 そして俺がハルバードの間合いに入った瞬間、力の限り振り下ろした。

(その盾で受け止めてみろ。その瞬間、ワレの爪がキサマの喉元を掻っ切ってやる。)

「今だ!シールダー!」

「なっ?!」

 腕から発射されるシールダー。

 ゴクドーはハルバードを盾で受け止めると考えていた。

 それしかハルバードの攻撃から逃れる方法がないと。

 だから俺はその裏をかいた。

「くそが!」

 左右の爪でシールダーを弾き飛ばす。

 その意識が上回り俺の左肩へと振り下ろされたハルバードの勢いがやや鈍る。

(これなら、受け止めれる。)

 凱修さんから教えてもらった氣の運用法。

 左腕にエネルギーを集めて凝縮。

 切れ味がいい刃物を受け止める凸型の盾をイメージ。

 氣の一箇所に集め凝縮する事で防御にも利用できる事を教えてもらっていた。

 練習では一度も上手くできなかったそれを今ここで。

 一瞬だけでいい。

ガキン!

ビシン!

 金属同士がぶつかる音とヒビ割れる音が続けさまに響く。

 腕は切り落とされず、受け止める事に成功。

「な、に!!」

「破!」

 振り抜いた手刀がハルバードの柄を切断。

 受け止めた時、刃部近くの柄に小さなヒビがあるのを見つけ、そこを狙ったのだ。

「ワレのハルバードが!」

 愛用の武器が破壊され、動揺が走るゴクドー。

 畳み掛けるなら今しかない。

「うおおおお!」

 連続パンチの応酬。

 鉄よりも硬い拳をゴクドーに叩き続ける。

 前みたいな力任せの動きではなく、全身の筋力を使った打撃。

 凱修さんの地獄トレーニングで体に刻み込まれた動きが今活きている。

「こ、癪な!」

 ゴクドーは爪を振り翳し、俺を狙う。が、それを許さない。

 弾き飛ばされたシールダーが舞い戻り前足を切断。

 反対側も脇に抱え、へし折る。

「ぐぬぬ、そ、そんなバ、バカな。」

「これでとどめだ!」

 投げ飛ばされてふらつくゴクドーに止めの一撃を。

 足に力を溜め、助走からの大ジャンプ。

 前方宙返りからの飛び蹴り。

 俺が編み出した必殺技、流星キック。

 足裏から放たれたエネルギー衝撃波はゴクドーの全身に広がり、弾丸のように吹き飛ばされた。


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