表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/83

力を求める理由

「一体どういう風の吹きまわしかしら?突然アタシの所に来て強くなりたいって。」

 俺の土下座を見下ろす人物の名は霊殿宮(たまどのみや)凱修(がいしゅう)

 幼少からお世話になっている人だ。

 この町で整体院を開業している彼の趣味は俺と同じく筋トレ。

 いつも着ている大きめの甚平で隠されているが、鋼のように硬く逞しい筋肉の持ち主である。

 そして彼は先祖代々引き継がれている古武術の正統後継者であり、かなりの強者。

 どれぐらい強いかと言うと、2mを超える狂暴なクマを素手で一撃。

 日本刀を振り回す武道派ヤクザを瞬殺する程。

 俺が知る中で一番強い人物だ。

「駄目ですか?」

「いいえ。前々から悠星チャンには素質がある、と思っていたのよ。でもそう言った事には興味なさそうだったから。だから驚いているの。」

 下顎を2度程撫でて俺に向かって尋ねる。

「ねえ聞かせて頂戴。どうして強くなりたいの?」

 理由を求められて俺は言葉を言い淀む。

 言葉が瞬時に出てこなかったのだ。

 最初に浮かんだのは復讐。

 母星ブレンリッド星を滅ぼしたジェノ・ブリークスへの復讐だ。

 だが、あれから20数年。

 研磨悠星となり16年が経った。

 ブレンリッド星での思い出は殆ど掠れている。

 友人・知人の顔も風景も過ごした日常もハッキリと思い出せるモノはない。

 それなのに母星の為に、と大手を振る等など出来ようか?

(いや出来ない・・・。)

 俺は心の中で被りを振る。

(じゃあなんで俺はここまでして強くなりたいのだ?)

 目を瞑り、自問自答を行う。

 そこに浮かんだのは不敵に笑う八重島快羅の顔。

 研究を奪い、俺を殺したアイツの顔だ。

 そして今、この状況に生じて俺から盗んだ研究を利用して世界を自分の意のままにしようとするアイツの事が許せない。

(そうだ。俺はアイツが許せなくて。だから――――。)

 俺は今抱いた感情を口にした。

「守りたいモノが、あります。」

 そう、復讐の意を口にしようとした時に突然浮かんだ光景。

 それは快羅の魔の手に襲われようとしている明日香、沙織、そして白露先輩の姿だった。

 身包みを全て剝ぎ取られ、今にも快羅に襲われる最中。

 悲しみに染まる彼女達の顔が浮かび上がってきたのだ。

 嫌だ!アイツなんかに奪われたくない!

 俺は彼女達を守りたい!

 嘘偽りない本音。

 弱いままだとまた奪われてしまう。

「だから強くなりたい。」

 真剣な眼差しを向ける。

「いいわよ。鍛えてアゲル。」

「え?」

 あっさりと即決された。

「どうしたの?そんな豆鉄砲を食らった顔をして。」

「いえ、あっさりと了承されたので・・・。」

 もっと深く追求されると思っていたのだ。

「それはそうよ。悠星チャンの事だから近い内にアタシに教えを請いに来る、と思っていたからね。」

「え?」

 目を丸くする俺の耳元で一言囁く。

「守りたいのはあの()達の事でしょ。」

「!!!」

「図星ね。」

 フフフ、含み笑いを見せる凱修(がいしゅう)さん。

 でもすぐの真顔に戻り忠告。

「大きなお節介かもしれないけど・・・。いい悠星チャン。あの()達は狙われやすいわ。だってあんなにも美しくて可愛いもの。彼女達を守りたいのなら、それ相応の覚悟が必要よ。」

「はい!」

「うん、いい返事。これは鍛え甲斐があるわね~~。」

 大きく背伸びを一つ、そして指の骨を鳴らして、オレを部屋奥へと誘う。

「それじゃあ早速始めましょうか。あ、そうそう。暫くはここに住み込みね。」

「え??」

「当たり前でショ。一日でも早く強くなりたいのなら、アタシの言う事を聞きなさい。とてもハードな特訓でしごいてアゲル。身体が痛くてもすぐアタシが癒してアゲルからね。」

「・・・・・・はい。」

 こうして俺は凱修(がいしゅう)さんの元で、死よりもキツイ特訓に明け暮れる事になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ