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誤算

「変身!」

 周囲に誰もいない事を確認してダークダイヤへと変身。

 白露先輩と一緒にいた俺が別れて南エリアにて単独で待ち構えているのには理由が二つある。

 一つは俺の正体がバレるのを防ぐ為。

 パールとエメラルドから怪羅の耳に俺の正体がバレるリスクを減らす為。

 そしてもう一つの理由。

 これは個人的な事。

 俺自身の手で母星ブレンリット星の仇をとりたかったのだ。

「(ルビーには俺がここで待ち構えている事を伝えておいた。)きた!」

「ッ!!」

 俺が待ち構えている事は予想外だったのだろう。

 捕まえた人間を運ぶタランシュラ達は隊列を乱す。

 先手必勝!地面を駆け、最前列にいるタランシュラに渾身の拳をつきだし、殴る。

 が簡単にガードされてしまった。

「コワコ、ロカマセ。」

「何?!」

 反撃の攻撃を慌てて避けた時、タランシュラの口から発音に驚く俺。

 何故ならそれは前世の母星ブレンリット語だったからだ。

 仲間の指示を受け、粘糸でぐるぐる巻きされた人間達の運びを再開するタランシュラ。

「させるか!」

「ジャワマ、ンセサナ!」

 俺の行く手を阻み、前足での強烈な爪の突き。

 大袈裟に避けた俺の行動を見て左右前足からの連続突きを仕掛けられる。

「くそっ!」

 何とかタランシュラの攻撃を掻い潜り、力を込めた蹴りを放つ。が、ダメージは僅か。

 一撃で倒すつもりで繰り出した蹴りなのに敵に嘲笑われる有様。

 戸惑いが隙を生み、タランシュラのボディーブローを喰らい吹き飛ばされてしまった。

「何故だ?エネルギーも潤沢なのに、何で倒せない?うわっ!」

 辛うじて相手の攻撃を躱せているのは向こうの攻撃パターンをある程度把握できているから。

 粘糸を使って信号機によじ登ったタランシュラのボディーブレスを転がって躱す。

「こんなはずじゃ・・・・・。こんなはずでは・・・・。」

 すぐさま立ち上がり、再び殴り掛かる。

 一撃で倒せないなら、何度も拳を振り翳すだけだ。

 がむしゃらに次々とパンチを繰り出すが、劣勢。

 俺の腕が2本に対して相手は6本。数的不利。

 だからこそ俺はパンチを繰り出す速度を上げる。

 そして相手の意識が上へと高まったタイミングで足払い。

 完全に意表を突かれたタランシュラは青天。

 すかさず馬乗りになり、乱暴に殴り続ける。

「ロヤメ!ロヤメ!」

「このっ!このっ!このっ!これでどうだ!」

 ダメージが蓄積されてきたのか、相手の動きが鈍り始める。

 俺は尾に隠されている毒針に気を付けながら、弱点のエンブレム目がけて渾身の手刀を突き刺した。

「ギャオオオ!」

 エンブレムは砕けれ、体内にある核を破壊する事に成功。

 ようやく一体のタランシュラを倒せることが出来た。

「まさかこんなにも苦戦するとは・・・。完全に俺のミスだ。」

 動かなくなった死体を一瞥後、大きなため息が零れる。

 倒したのに達成感は全くない。

 それもそのはず。この一体を倒している間に他のタランシュラには逃げられてしまったのだ。

 捕まった人間もろとも。

「どうしてこうなったのか至急、調べる必要があるな。」

 敵はもうここにはいない。

 ならもうやるべき事はない。

 早々に撤収を決めた。

「一応、ルビーに撤退の旨を伝えておくか・・・。っ!!」

 突如、背筋に走る悪寒。

 身の恐怖を感じ、その場から飛び退いたと同時に地面へと突き刺さる複数の十字手裏剣。

「な?!どうしてパールが。」

「見つけた・・・・。」

 腰の隠し袋から苦無を取り出し構えるパール。

「危険分子発見。これより排除を開始する。」

「くっ!」

 目にも止まらぬ速さと身のこなし。

 そして洗練された攻撃に俺は為す術なし。

 すぐさま追いつめられる。

「くっ、ファースト・ジュエルでありながらこれほどの攻撃力があるだと!」

 ファースト・ジュエルは本来、隠密・諜報行動を想定して開発された戦姫。

 故機動力重視で攻撃力にはあまり出力を割り振らないように設計していた。

「(なのにこの攻撃力・・・。快羅が手を加えたのか?)いや違う。この攻撃力は・・・・。」

 エネルギーを用いて防御をしているお陰で何とか致命傷を受けずに済んでいる。が、状況はかなり不利。

 何とかして逃げ出す方法を考える。

 パールの怒涛の攻撃を防ぎつつ、周囲を確認。

 逃げる手立てを探す俺が眼にした光景は、

「パール!」

「くそ、エメラルドか!」

 なんとエメラルドが合流してきたのだ。

「あれはもしかして。」

「お嬢様を襲ったダークダイヤ。」

「そう・・・・。彼がね。」

 敵対心を投げつけるエメラルド。

「一対一でも厳しかったのに・・・。」

 絶望的状況に置かれた。

「アナタに逃げ場はありません。大人しく投降なさい。」

 エメラルドが胸元に垂らすシルバーのラインを握った事で胸元のリボンが解かれる。

「・・・・。」

 俺は無言を貫く。

 投降の呼びかけに応じる訳にはいかない。

「返事なし。なら実力行使に出る。」

 再度俺に襲い掛かるパール。

「(パールが俺を足止めして、エメラルドのリボンで俺を捕まえる気だな。)それなら。」

 隠し持っていた閃光玉を手にしようとした時、俺は偶然にも目撃してしまう。

 後方にある崩れたビルの隙間から覗き見える一体のタランシュラが。

 粘糸を用いて空中ブランコの応用で飛襲し、エメラルドに襲い掛かろうとしていたのだ。

「エメラルド!後ろだ!」

「え?」

「っ!」

 俺の叫び声と同時にビルから飛び降りたタランシュラ。

 驚き、動きが止まるエメラルド。

 そして背後から襲い掛かるタランシュラの存在に気付く。が遅かった。

 エメラルドに襲い掛かる毒針。

 それを助けたのはパールだった。

 彼女は俺の声に瞬時に反応。

 すぐさま踵を返してエメラルドの元へ。

 彼女を突き飛ばし、毒針を苦無で弾き防ぐ。

 そして通り過ぎ様に十字手裏剣を投射。

 タランシュラは紫の血飛沫と断末魔を残して絶命した。

「あ、ありがとうパール。」

「構わないわ。ただ、アイツには逃げられたけど。」

 アイツとは俺の事。

 二人がタランシュラに気を取られている隙にステルス機能を使い、二人から逃げ出せることが出来たのだ。

 自分のミスで責めるエメラルドに対して、フォローを入れるパールを見送るようにその場から静かに撤退。

 自身の失敗と不甲斐なさを持ち込んで。

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