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「よ、今朝も華やかな登校だったな親友!」

 着席と同時に話しかけてきたのは同級生の赤間智樹(あかまともき)

「いつも通りの変わらない登校だったと思うが。」

「かぁ〜、それを平然と言えちゃうお前が羨ましい。」

 赤間の大声に呼び寄せられた同級生男子二人。

「そうだぜ、前回ミスコン優勝。高嶺の花・嶺麗しい冴園先輩と妹的存在、その愛くるしい笑顔が魅力的な更科明日香ちゃん。そんな二輪花を抱えての登校するなんてお前しか出来ないじゃん。」

「いいなぁ〜。」

 俺は無言を貫く。

 言い返せばまた冷やかされるのが目に見えているから。

 視線だけを斜め前に座る明日香へ向ける。

 彼女は友人達と談笑中。

 こちらの会話は聞こえていないようだ。

「研磨と更科さんは小学1年からの付き合いだっけ?」

「そう、小学からずっと同じクラス。凄い確率だよな。」

 俺ではなく赤間が自慢げに答える。

「で冴園先輩とは幼稚園からの付き合い。しかも家は隣同士。窓での行き来をしているの事。」

「マジかよ!!羨ましすぎる!」

「着替えを覗いたハプニングとかも発生し放題。」

「ないない!窓の行き来も小学生の頃の話だ。」

 赤間の言う通り俺と沙織の家は隣。

 俺の自室と沙織の部屋が窓を隔てており、幼少の頃は玄関ではなく窓を通って互いの部屋を行き来していた。(現在は互いにカーテンで遮蔽している。)

「そう言えば冴園先輩は昔、芸能事務所からスカウトされたって聞いたけど。」

「それは本当。秒で断っていたけど。」

 スゲ〜とどよめく友人達。

「いいよなあ、更科ちゃんと冴園先輩とお近づきになれて。アレだろう。先輩に毎朝優しく起こしてもらっているのだろう。」

「明日香ちゃん、料理が得意らしいな。毎日その美味しいご飯を食べているのだろう。」

 友人達の嫉妬の視線を無視。

 本当の事なのでこれ以上何も言わない。

「で研磨よ、お前の本命はどっちだ?」

「本命って?」

「どっちと付き合うのかを聞いているのさ。」

 赤間の質問に戸惑う。

 今まで考えた事がなかったからだ。

 沙織は姉、明日香は妹当然でずっと傍にいる存在だと思い込んでいた。

 ずっとこの関係を続けていくものだと。

 黙り続ける俺に詰め寄る赤間と友人達。

「明日香ちゃんか?いつも一緒で甘やかして可愛がる甘々カップル誕生か?」

「いやいやいや、冴園先輩だろうよ。我学園が誇る秀才同士。1年学年主席の研磨と2年次席の冴園先輩との。」

「天才の白露先輩さえ居なければ主席間違いなしだもんな。」

 白露瑠璃子(しらつゆるりこ)先輩は俺が中学1年の時にこの街に引っ越してきた。

 それまでは外国で暮らしていたらしく、既に幾つもの有名大学院博士号取得している本物の天才。

 特に理数系には目の見張るものがあり、何度か談義したが知能が高いブレンリッド星でも指折りに入る天才であると確信した。

「白露先輩はいい人だと思うけどさ、愛想がないよな。」

「無表情というか、他人に興味がないと言うか。」

「一回話した事があるけど、マジで会話にならなかった。前髪で目元を隠しているから何考えいるのか、よくわからないだよな。」

 そうかな?と俺は思う。

 確かに感情の変化は乏しいけどそこまで無愛想とは思わないのだが・・・。

「で、話が逸れたが研磨、お前はどっち付き合いたいのだ?」

 赤間がしつこく聞いてくる横でボヤく友人。

「ああもう、何でお前はこんないい思いをしているのだよ。前世でどんなに徳を積んだらそうなるのだ?」

 徳か。

 自虐しか出ない。

 生まれ故郷は滅ぼされた。

 家族・知人は皆、ジェノ・ブリークスに蹂躙された。

 男は斬り刻まれ、女は凌辱の限りを尽くされるのを見捨てて一人だけ逃げ出した臆病者。

 それからは復讐に囚われ、長年研究していた〈ストーンジュエル〉に没頭。

 それも信頼していた男に裏切られ、全てを失った愚か者。

 そんな俺にどんな徳があるのだろうか?

 心の中で苦笑を浮かべると、ふと明日香と視線が重なる。

「(ニコッ)」

 天真爛漫な笑顔を見せる明日香を見て、俺の心が少し晴れる。

(今はこのままでいい。)

 そう思える幸せ。

 今この手にある幸運、平穏は守りたいと。

 この穏やかな日々がずっと続く事をただただ願う。

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