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語られる真実

「アリーニャ・ニコラエヴナ・ジュラヴリョフ。この名前に聞き覚えは?」

「前世で俺の研究に興味を持った大学院生の中にその名前の女性がいましたが・・・。」

 ストーンジュエルの事だけではなく、ブレンリッド星の日常や前世の俺についても尋ねてきた社交性が高くて頭脳明晰、美人であったロシア人女性の事を思い出す。

「ワタシの母。あの男―――八重島快羅に無理矢理孕ませられて生まれたのがワタシ。」

「なんだと!?」

「あの男は母の頭脳が欲しくて自分のモノにしようとした。監禁して陵辱の限りと尽くして。その結果、ワタシという天才が生まれた。そして母はあの男に殺された。」

「殺された?」

 穏やかではない単語を次々と聞かされ、動揺と困惑が全身を何度も往復する。

「アナタが殺された後、母がビジュエール・セイントの責任者になった。母はあの男の言いなりではなく、自分の夢としてビジュエール・セイントの開発に精力を注いだ。母から何度も聞いた。ブレンリッド星の事。いずれか地球に襲来するであろうジェノ・ブリークスの事を。」

 そんな母の姿を間近で見てきた彼女は自然と研究の手伝いを始める。

 それは幼少の頃から類稀な頭脳を開花させ、ストーンジュエルの事もすぐに理解できたから。

 だがそんなある日、事件が起きる。

「ファースト・ジュエルの稼働が成功してセカンド・ジュエリーの開発に取り組み始めた頃、母は偶然知ってしまう。あの男がワタシを狙っている事を。いずれは自分のオンナとして手中に収めようとしている事を。」

「ちょっと待ってください。快羅と白露先輩は親子の間柄では・・・。」

「認知していない。母は未婚扱い。あの男はワタシが小さい頃から気付いていた。ワタシの将来のポテンシャルに。だから何としてでも手に入れようとしている。母と同じようにして。」

「そんな・・・めちゃくちゃな。」

「それを知った母を激怒した。ワタシをあの男の手の届かない場所へ送り、研究を中止にしようとした結果、あの男は激怒。母を嬲り殺した。」

「胸糞悪い話ですね。」

 腸が煮えかえり、両拳を強く握る。

「母の死後、ワタシがビジュエール・セイントの開発責任者となった。勿論あの男の言いなりではない。母を殺したあの男に復讐する為。開発を進め、セカンド・ジュエリーはワタシの息がかかった人物を選び、機が熟せばあの男から反乱する計画だった。」

「それで明日香と沙織を選んだのですか?」

「違う。」

 怒りの籠った俺の視線から逃れるように首を振り、続ける。

「ユウセイ、覚えている?1年前ワタシが病気で学校を長期休養していた事を。」

「そういえばありましたね。そんな事が。」

「アレは嘘。本当はセカンド・ジュエリーの完成間近で研究から離れられなかったから。」

「そうだったのですか・・・・。あれ?そういえば確か、明日香と沙織は何度か先輩の家へ見舞いに・・・・・・、まさか!」

「そう、サオリとアスカはワタシの家に来た時、偶然自室に置いていたアメジストとサファイアが二人に反応した。」

 その当時の事を思い出したのだろう。

 自身の体を強く抱きしめて崩れ落ちる。

「それを樹里と乃亜に目撃され、あの男に報告された。あの時の、あの男を顔は今でも忘れならない。」


「よくやったぞ瑠璃子よ。」

 両肩を掴み、眼を爛々とさせる快羅。

 彼は明日香と沙織を一目見て気に入ったのだ。

 この二人の少女は自分のモノだ、と興奮冷めずに鼻息を荒くする快羅。

 そして紳士の皮を被り二人に近付いて期が熟すのを待ち、喰らおうとする本性を目の前にして寒気が止まらなかった。


「あの時、誓った。何があろうともあの男から二人を守る、と。絶対にあの男に二人を渡さない。絶対に手出しさせない、と。」

「それじゃあ、明日香と沙織は・・・。」

「処女。まだあの男には指一本触れさせていない。」

「そうだったのか・・・。」

 足の力が抜け、ふらつく。

 安堵と二人への贖罪が重くのしかかったから。

「俺は二人になんて酷い事を言ってしまったのだ。二人を穢したのはアイツではなくて俺自身だったなんて・・・。」

「ユウセイは悪くない。悪いのはワタシ。ユウセイを信頼していなかったワタシのせい。」

 俺に寄り添い、謝罪の意を込める。

「もっと早くユウセイに話すべきだった。ビジュエール・セイントの事を。ユウセイなら理解してくれるはずだったのに、でも話せなかった。」

「それはやはり快羅の存在があったからですか?」

「そう。あの男はワタシやサオリ、アスカを手に入れようとしている。ワタシ達三人に近付く男に対して容赦しない。既にワタシには見張りがいる。樹里と乃亜が。」

「快羅の秘書と言っていた人ですよね?」

 白露先輩は大きく頷く。

「樹里と乃亜はファースト・ジュエリーの適合者。エメラルドとパール。そしてあの男のオンナ。あの男の命令に従う性奴隷。」

「あの二人がエメラルドとパールだったのか・・・。」

「だから話せなかった。でもそのせいでサオリとアスカ、それにユウセイは辛い思いをさせた。全てワタシのせい。」

「先輩のせいじゃありません。ボタンの掛け違いがあっただけですよ。」

 もし白露先輩がもっと早く俺にこの事を話してくれていたら、こんなにも掛け違う事はなかっただろう。

 そして俺ももっと白露先輩や明日香、沙織の事を信用していればこんな事には・・・・・・。

「お願いユウセイ。ワタシを、サオリとアスカを助けて。あの男からワタシ達を助けて。」

 身を投げ出すように縋る白露先輩。

 俺はすぐに返事が出来なかった。

 白露先輩の説明は筋が通っているし、嘘を言っているようには思えない。

 信じるべきであろう。

 だがどうしても白露先輩の背後に映る快羅の存在がチラついてしまう。

 復讐の元凶である快羅の娘。

 その怒りの感情がどうしても白露先輩へと向いてしまう。

 そしてもう一つ。

 真剣な話で忘れていたが、現在彼女は脱ぎ途中のワイシャツ1枚と言う淫らな恰好。

 立派な巨乳が俺の胸板に押し潰され、エロい谷間が目の前に。

 そして触り心地が良さそうなストッキングとレースのショーツが誘うように左右に揺れていて、襲い掛かりたい衝動を抑えるのに必死。

 そんな俺を知ってか知らずか、白露先輩はとんでもない発言をする。

「何でもするから。ユウセイが望むがままに。」

「ちょっと先輩!ストップ!」

 ワイシャツを脱ごうとする手を掴んで止める。

「自分を犠牲にする真似は止めてください。もっと自分の事を大切にして。」

「・・・・・今まで散々ワタシの事を犯したユウセイがそんな事を言う?」

「うっ、それを言われると・・・。それにあの時は先輩が快羅の言いなりだと思っていたからで。でも違うのであればこんな事は・・・・。」と必死に言い訳を並べるが白露先輩は納得せず。

「いいよユウセイ、ワタシのカラダ、好きにして。」

 耳元で卑猥な言葉を妖艶に囁く。

 理性を破壊するには十分過ぎる程の威力。

 押し倒したくなる衝動が沸き起こる。が激戦の結果、理性が僅かに勝利する。

「先輩、本当に落ち着いて。」

「ぁああん♡」

 振り払おうとした手が白露先輩の胸に触れた事で喘ぎ声が漏れる。

「そんなエロい声を出して誘惑しないで下さい。それにこんな事、先輩だって嫌でしょう。」

「嫌じゃない。」

「え?」

 白露先輩の顔が急接近。

 目と鼻の先で互いの息遣いが肌で分かるほど。

「せん、ぱい?」

 前髪も眼鏡も、今まで彼女の視線を遮っていたものは無くなっていた。

 潤んだ灰色の瞳は俺を真っすぐ捉えている。

「嫌じゃないよ、ユウセイ。」

 感情が籠った色めいた声に俺の抵抗は急激に弱まる。

 白露先輩に押し倒される。

 倒された痛みは感じない。

 彼女の熱い視線に俺は釘付け。

 淫魔に魅了されたみたいに動けなくなっていた。

 ワイシャツをゆっくり脱ぐ。

 その間も白露先輩は俺から視線を一切逸らさない。

「ねぇ、ユウセイ。ワタシは構わない。ユウセイに抱かれる事。だって、ワタシは―――。」

 馬乗りから体を覆い被るように倒れ、両手を俺の頬に添える。

 思考が止まっている俺は導かれるように両腕を白露先輩の背中へ。

 お互いの唇が重なり――――。

ガチャ。(ドアノブが回り、ドアが開いた音。)

「「えっ?」」

「「あっ。」」

 生徒会室の扉を開けたのは沙織。

 そしてその後ろには明日香の姿が。

 全員、目を丸くして固まる事33秒。

「何をしているのよ!二人とも!!!」

 沙織の怒号に木陰で羽を休めていた鳥達は驚き、空へと逃げ出した。


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