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入念な仕込み

おい研磨、この後―――、あれ?」

 放課後、赤間が教室を見渡すが悠星の姿はあらず。

「悠星くんなら大急ぎで帰ったよ。」

「またかよ。この一週間ずっとだぞ。」

「多分、また何かに熱中しているのだと思う。」

「流石幼馴染の更科ちゃん、研磨の事を知り尽くしているね。」

 赤間のからかう言葉を間に受けて赤面する明日香。

「因みに今度は何にハマったんだ?」

「さぁ、そこまでは・・・。」

「ま、その内教えてくれるだろう。あ、そうだ更科ちゃん、折角だからさこの後一緒にカラオケでも―――。」

「それじゃあボク、部活に行くから。また明日ね赤間君。」

 颯爽と教室から出ていく明日香を涙目で見送る赤間。

「諦めろよ、更科ちゃんはガードが固いって。」

「そもそも、明日香ちゃんは研磨しか見ていないからな。」

 クラスメイトの慰めに肩を大きく落とす赤間であった。



「完成だ・・・。」

 半田コテを静かに置き、感嘆を漏らす。

 心の奥底からの達成感に全身が震える。

 作業台に置かれているのは三角錐の形をした黒い物体。

 掌サイズのそれは悠星が幾つもの部品をインターネットやジャンク屋などで取り寄せて一から作り上げた傑作品である。

 部屋の中央に置き、突起物のスイッチを押すと各辺が虹色に光る。

「起動した。成功だ。」

 小さくガッツポーズ。

 もう一度突起物のスイッチを押して停止させる。

「よし、後はこれを量産すれば―――。」

 胸が高鳴る。

「考えてみれば研磨悠星になってから本気で制作や開発をしていなかったな。懐かしい感情だ。」

 地球の文明技術をはるかに超えてしまう為、今まで工作や実験にはある程度の手抜きをしていて、正直少し手持ち無沙汰を抱いていたのだ。

 忘れかけていたこの意欲の熱が冷めないうちに続きに取り掛かる。

が、それを遮るかのように携帯の着信音が。

「悠星、ご飯が出来たわよ。」

「・・・・・・わかった。すぐ降りる。」

 中断させられたが仕方ない。

 沙織と明日香との触れ合いは何よりも優先すべき事案だから。

 気持ちを切り替えて、一階へと降りる。


「「「頂きます!」」」

 本日の夕食は沙織が作った豚の角煮。

 いつものように3人で食卓を囲む。

「悠星くん、最近学校から帰ったら部屋に籠りっきりだけど何をしているの?」

「ん?ちょっと調べ事かな?」

 ご飯を頬張り、言葉を濁す。

 今自分がしている事を二人に話す訳にはいかないのだ。

「悠星、もしかしてまた前みたいな事をしているの?」

 ジト目を向ける沙織に背筋が凍る。

 慌てて全力で否定。

「違う違う違う、それは絶対ないから。」

「本当に?」

「本当だって!」

「????」

 明日香が箸を口に当てながら首を傾げる。

 彼女が知らないのも無理もない。

 それは俺が中学2年の時、赤間に騙されて無理矢理AV鑑賞会に巻き込まれた事があった。

 男子数人で観た初めてのAV。それは俺の人生(前世を含めて)で一番の衝撃だった。

 ブレンリッド星人は青年期に何度か発情期があり、一か所に集められて交尾するのが通例。

 繁殖目的ではなく快楽・娯楽の為に男女が交わる風習・文化にショックを受けた。

 だが同時に興味も沸いた。

 様々な体位やテクニックで絶頂と快楽に溺れる全裸の男女の絡みを食い入るように鑑賞。

 一度興味を持つととことん突き詰めたくなるのが俺の性分。

 それ以降、数多くのAV動画やエロアニメ・エロ本を買い漁り、鑑賞。

 体位やテクニック・オーガズムのなどの女性をイカせる方法を秘かに学んでいた。

 だがそんなある日の事。

 一人でAV鑑賞して学んでいた現場を沙織に目撃されて大激怒する事件が発生。

 数時間に及ぶ大説教を受けた後、買い貯めていたそれらは全て廃棄処分された過去があるのだ。

 その時、二度目はないわよ。と念を押されたことを思い出す。

 ジ~~~と意味深な視線を送り続ける事、30秒。

「信じてあげましょう。」

 内心ほっと胸を撫で下ろしたのは沙織にバレた以降も秘かに続けているから。(勿論バレないように細心の注意を払っている。)

「ねえねえ悠星くん、何の話?」

「本当に何でもないよ。(バレたら殺されるな・・・・。)」

 純粋な眼差しを向ける明日香と疑い深い視線を今尚も向けてくる沙織から逃れたくて目の前のご飯に集中する事にした。

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