表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/83

乙女達の想い

ここは白露瑠璃子の自宅兼ラボ。

〈ストーンジュエル〉を研究しビジュエール・セイントを完成・実用化まで漕ぎ着けた彼女の能力に応えるべく建設された建造物である。

 外見はコンクリートで建てられた2階建ての一軒家であるが、その地下には多種多様な計測器やスーパーコンピューターが完備された最新鋭の研究施設がある。

「・・・・・。」

 ボディスーツ姿の瑠璃子は無言で電子キーボードを操作。

 隣に設営されている2基のカプセルには沙織と明日香が入っている。

ピー!ピー!

 電子アラーム音が鳴り、カプセルの蓋が自動開口。

「サオリ、アスカ。気分はどう?」

「大丈夫よ。」

「問題は、ないと思います。」

 セパレート型レーシングブラに紐ショーツ姿の沙織とバンドゥビキニにスパッツ姿の明日香がカプセルから出てくる。

 三人はリザードマンとの戦闘後、樹里と乃亜の誘いを断り、この場所まで移動。

 装備を外した状態(ランジェリーモードと命名)で、今まで検査を行っていたのだ。

「あの先輩、これで検査は全て終わりですか?」

「ええ、これで全て終わり。だけど今日はここに泊まってもらう。」

「えっ?何でですか?」

 微笑みから絶望へと急降下する明日香の感情。

「経過を見たい。今回が初めての変身と戦闘。万が一のことがある。万全を期したい。だから数時間後にもう一度同じ検査をする。」

「そ、そんな・・・。」

 落胆する明日香。

 彼女の気持ちは十分に分かる。だからこそ彼女の不安を取り除くことを優先する。

「ユウセイなら無事。さっき連絡が繋がった。」

「本当ですか!?」

「そうなの瑠璃子?」

「うん。上手くリザードマンを撒いて一人で逃げ切った。今は家にいる。」

「良かった~~。」

 安堵の笑顔を見せる明日香。

 その横でで「ほっ!」と大きく息を落とし、肩の荷が落ちる沙織。

 二人が悠星の安否をずっと気にしていたのは承知。

 それは瑠璃子も同じ心情だったからだ。

「心配なら後で電話すればいい。」

「そうするわ、ありがとう瑠璃子。それじゃあ、私達はこのまま瑠璃子の家に泊まらせてもらうわね。」

「明日は祝日。久々の女子会。」

「そうですね。あ、先輩。もしかしてこの姿を解くのは駄目ですか?」

「できればこの姿でいてほしい。長時間変身し続けるデータも取りたいから。」

「そうですか・・・・。ちょっと恥ずかしいですね。」

「別にいいじゃない。ここには私達3人しかいないのだし。」

 とここで沙織はひらめく。

「折角だし、今から美探求部の活動でもする?」

 美探求部とは、沙織が発起人として立ち上げた非公認部活。『美』を研究、追及する事に重きを置く活動である。

 メンバーはここにいる3人。共に同じ想いを抱く仲間でありライバルでもある。

「あ、やりましょうお姉ちゃん。」

「ワタシも構わない。」

「それじゃあ、早速―――。」

 歩き出す沙織に断りを入れる瑠璃子。

「でも待って。ワタシはまだ自信の診断が終わっていない。だから先に行って。」

「分かったわ。それじゃあ明日香、行きましょう。」

「はい、それじゃあ先輩。部屋、お借りします。」

「好きに使って。」

 二人が部屋から出て行った後、「ふう。」と大きく息を落とす。

「瑠璃子。」

「サオリ、どうした?」

 退出したはずの沙織が戻ってきた事に表情に出さないが内心驚く。

「一つ聞きたいの?私と明日香をここに連れてきたのはもしかして―――。」

「安心して。二人はワタシが守るから。」

 沙織の言葉を遮り、思いを口にする。

「そう・・・・、分かったわ。」

 たったこの一言で全てを察した沙織。

 だからこそ続きを口にしない。

 そして自分の想いを口にする。

「瑠璃子、これだけは忘れないで。私は瑠璃子の事を大切な親友だと思っている。」

「ワタシも同じ。」

「うん知ってる。だからね、自分を犠牲にするのは止めてね。そんなことしても私は―――明日香は嬉しくないから。何かあったら必ず相談して。私達3人で乗り越えるの。」

「大丈夫。」

「・・・・・・その言葉、信じるからね。」

 そう言い残して、今度こそ退出する沙織。

 一人残った瑠璃子は無表情のまま電子キーボードに向かい操作。

 自身の診断チェックを行う準備に取り掛かる。

 全ての診断項目を自動化させ、カプセルに入る瑠璃子。

 ふと、右端に置かれている厳重なガラスケースに保管されたバスケットボール程の大きさで虹色に輝く結晶―――ストーンジュエルに目を向ける。

「・・・・・・、大丈夫。上手くいくはず。」

 それはまるで自分自身に言い聞かせるように呟いた。


 30分後、自身の診断を終えた瑠璃子は併設されているトレーニングルームへ。

「う~~~~~~ん。」

「7・・・8・・・9・・・10。」

 部屋では既に沙織と明日香がそれぞれストレッチやトレーニングを行っていた。

「二人共、お待たせ。」

「随分早かったわね。」

 床に座り、ヨガの舟のポーズをとる沙織。

 その隣では『スーパーマン』というストレッチをしている明日香。

 彼女のしているストレッチはうつ伏せ状態から手足をゆっくり持ち上げ、そしてゆっくり降ろす動作。

 これは背中からお尻、太もも裏のボディバランスを鍛えるストレッチ。

 そう彼女達の求める『美』とは美しい身体――ボディバランスの事。

 この活動を始めて約2年。

 その成果は頭角を現しており、その結果、彼女達は美しいボディラインを手に入れていた。

 瑠璃子も合流し、各々磨きたい部位のストレッチやヨガを行う。

 身体が柔らかい明日香は180度開脚から屈伸。

 その横で沙織はバックランジ(胸の前で手を組み、楽に立った状態から片足を引き、腰を降ろして膝を直角に地面につけた後、お尻から立ちあがる動作の事。)

 普段服を着こんでいるので知られていないが瑠璃子もこの活動により明日香と沙織に負け劣らずのボディバランスを維持している。

 四つん這いの状態から猫伸びのポーズ。

 デスクワークが多い瑠璃子の猫背改善と肩甲骨や肩関節まわりの筋肉を柔らかくする為のストレッチ。

 その後も約1時間、各自それぞれのトレーニングを真剣にやり終えた彼女達は汗まみれ。

 達成感に満ち溢れる三人はその後、仲良くお風呂へ。

 そして楽しいガールズトークをするなどして、夜を明かすのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ