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ほくそ笑む復讐者

家に帰ってきた俺。

 時間は19時を回り、気が付けば空は夜へと変わっていた。

 ヘルメットを外し台所で冷水を頭からかけ流し全身の熱を冷ます。

 髪を乾かさずにソファに座り込むと一気に疲労感が。

「さてと。」と独り言を発したのは俺自身が冷静になるよう努める為だ。

「何故俺はこの力を手に入れたのか?」

 自身の身体に包む戦闘用ボディスーツ。

「理由は分からない。考察する材料が少な過ぎる。それに考えなければならない事は他にもある。」

 机に置かれたヘルメットを再び装着。

 鼻元まであるフェイスガードに自身のデータが幾つものグラフとして表示される。

「2%。やはりエネルギーが殆どないか。」

 今このボディスーツにはこの状態を維持するだけの最低限のエネルギーしか残されていなかった。

「このスーツは初号機で試作品。最低限の修復能力しか無い。だからこそあのトカゲのバケモノを倒すのに苦労した。本来なら簡単に倒せる事ができただろう。」

 右手を握っては開き、それを何度も繰り返す。

「エネルギーの回復も見込めない。折角手に入れたのだ。この力を活かすにはどうすればいい?」

 本来であれば、エネルギー源である〈ストーンジュエル〉があれば事足りる。

 しかしそれは手元にはない。

「さてどうするべきか・・・。」

 奪われた〈ストーンジュエル〉は八重島快羅(やえじまかいら)が厳重に保管しているはず。

 居所を掴むにも時間がかかるだろうし、運よく見つけたとしても奪える保証はない。

「何かいい方法はないものか・・・。」

 思考を巡らす。が妙案は浮かばず。

 時間だけが過ぎていく。

 ふと視線がテレビ画面へ。

 いつの間に電源が点いており、画面には戦うピジュエール・セイントの姿、そして八重島怪羅(やえじまかいら)の演説が映し出される。

「快羅・・・。」

 彼が誇らしげな表情でインタビューを受け、周囲から賞賛される様に憤りが膨れ上がる。

 これ以上彼の顔を見るのが腹立たしくて、怒りの衝動に任せて手をリモコンへ伸ばした―――――所で不意に止まる。

 妙案が浮かび上がったのだ。

 頭上から舞い降りたその案は普段の俺なら考えつく事がない―――悪意に満ちた考え。

 それぐらい今の俺の心内にはドス黒い感情が渦巻いていたのだ。

「そうだ。補充できないのならあの女達から貰えばいい。ビジュエール・セイントからな。」

 曇に隠れていた月が顔を覗かせ、部屋に光が差し込んだ拍子で俺の顔が窓ガラスに映る。

 今まで一度もした事がない、悪党が浮かべる悪い笑顔。

 自分自身なのかを疑う程の豹変ぶり。

 だが、俺はその事に気づいていない。

 それぐらい「復讐」という感情に魅了され、鷲掴みされていた。

「ただ彼女達からエネルギーを奪うだけじゃない。分からせてやる。お前達が信じるあの男に味方した事を後悔させてやる。」

 八重島快羅(やえじまかいら)は無類の女好きで自分に従う女性を何人も囲っており、過去幾人者女性を食い尽くしてきた。

 そして野望に飢えた男。

 彼が前世の俺から研究を奪ったのもビジュエール・セイントを使ってこの世界を自分のモノにしようと考えているからだ。

「ビジュエール・セイントに選ばれた者はアイツのオンナだろう。だから彼女達を酷い目に遭わせる。ジェノ・ブリークスの唯一の対抗手段だからな。殺さない程度に地獄を味わってもらうぞ。」

 俺の甲高い笑い声が薄暗い家中に響き渡る。

 一度も見せた事がない復讐に囚われた悪しき笑い声。

 その日から俺の八重島怪羅(やえじまかいら)、そしてビジュエール・セイントへの復讐劇が始まった。


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