序章 失意の最後
パン!
乾いた銃音と薬莢の地面に転がる音がラボ内に響く。
銃弾は俺の右胸元を貫通。
青い血が流れる。
「か、快羅・・・。ど、どういう事だ?」
「?ああそうか、お前は俺達地球人と違って心臓の位置が違うのだったな。」
銃を構える八重島快羅の口元が吊り上がる。
「なに、お前が持ち運んでくれたその研究――ストーンジュエルの実用化の目途がついたからな。邪魔者を消させてもらう。」
「ま、まさか研究を横取りする気か!そんなことさせるか!」
愛用の杖を振りかざし、立ち向かう。が、快羅は軽く体を往なして躱し、俺の足を引っかける。
転倒した拍子に杖が手元から離れる。
「身体能力が著しく低いお前が俺に勝てると思ったのか?」
「こ、この研究は我が星の大事な遺産。そして宇宙侵略からこの星を守る為の手段――――。」
「ああそうだ。この研究は俺が頂点に立つための大きな手段だよ。」
「か、快羅、キサマ!前にも言ったはずだ。ストーンジュエルは未知のエネルギー体でまだ解明されていない事が―――。」
「それぐらい俺が―――いや、俺のオンナがちゃんと解明してやる。だから安心して死ねよ。」
銃弾は腹部にある心臓部を貫き、吐血。
(ああ、ジュエルストーンよ・・・・・・。)
霞む視界に映るのはカプセル内に保管されている母星滅亡時に持ち出してきた掌サイズの眩い光を放ち続ける透明の宝石。
(私は死ぬのか?仲間、星の想い・願いを叶えることが出来るまま。こんな奴に裏切られて・・・・・・・。)
ジュエルストーンを掴もうと震える手を伸ばす。
しかし三度目の銃声が後頭部を貫通、カプセル内にあるジュエルストーンを掠り一欠片が一つ、宙に舞う。
「さらばだ、ブレンリット星人よ。オマエの研究はこの俺が有意義に使わせてもらうさ。」
快羅の高笑いに見送られて、俺は死を迎えた。