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Answer.29:全部終わって、一段落。そして、次の日常へバトンタッチ

 あっという間にゴールデンウィーク最終日。

 あれから、色んな事があった。

 美咲とまた遊んだり、佐々木さんの喫茶店が移転したり、榊に呼び出されたり、葬式に出たり。

 喫茶店での事件の翌日、朝早くに美咲から連絡が入り、その一日まるまる会う事になった。

 行ったのは、生まれて初めてのカラオケ。

 緊張しつつ自分の選択した歌が始まり……初っ端から音を外した。帰りたいと思う程、恥ずかしかった。

 けどまぁ、美咲の歌声は綺麗だったからプラマイゼロかな。むしろプラスだ。

 そのまた翌日。佐々木さんから喫茶店を移転して早速オープンした、という連絡があった為、メールで美咲に教えた後で向かってみると、鹿嶋先輩と美咲が楽しそうに談笑した。

 行動の早いお二方である。

 暫くの間、蚊帳の外状態になって寂しく飲み物を飲んでいたのは、言うまでも無い。

 ってか佐々木さん、開店早過ぎです。

 そして最終日。

 朝からベッドの上でゴロゴロしていると、突然携帯に非通知から電話が入った。

 出てみれば、相手は榊の側近である桜と名乗った。

 何故、僕の番号を知ってるのかと一瞬思ったが、多分着信履歴から掛けたのだろう。

 話を戻して、桜さんによると、先日の協力に対するお礼がしたいから、家の前まで来て欲しいとの事。

 その為、指示に従って家を出た瞬間、顔に何かを被せられて拉致されてしまった。

 また、被せられるのと同時に睡眠薬か何かを飲まされた為に眠ってしまい、気付けば和室に居て、榊と他数名が居た。

 榊を通王に置いて、向かって左に着物を纏った少女(多分桜さんだろうか)、右に大男、そして後ろに部下と思われる男が数名。

 そして、榊が堅苦しい礼の言葉を述べて、箱を差し出して来たのだが、聞けば粗品だという。

 どうせろくな物じゃないだろうと思う反面、相手が組織のトップである故に、少し期待していた為、言われるがままに開けて見る。

 洗剤一式だった。花王の。

 だから思わず、「洗剤じゃん!」と叫んでしまったが、失礼じゃなかっただろうか。

 渡した本人は、不満なのか? と言いたげな表情で小首を傾げ、桜さんは青ざめ、大男は大爆笑していたから、良しとしよう……?

 その後、桜さんの運転で自宅へと送迎してもらい、今に至る。

 葬式の事は……敢えて言わないでおこう。良い話なわけ、無いからね。

 そんなこんなで現在、朝と同じくベッドにてゴロゴロ中である。

 ベッドから見える窓の外はオレンジ色をしており、夕刻である事を教えてくれている。

 ……今年のゴールデンウィークはのんびりできなかったなぁ。良い意味で。

 しみじみと、そんな事を思いながら夕焼け空を眺めていると、ポケットには入ったままだった携帯が震えた。

 誰だろうかっと思いながら携帯を聞くと、それは美咲からのメールだった。

 件名は無く、本文が長々とあるようだ。

 読んでみると――ゴールデンウィークの間は、毎日のように遊んでいただきありがとうございました! すごく楽しかったです(笑顔の絵文字)

 けれど、腑に落ちない事があります。喫茶店で鹿嶋さんから聞いたんですが、先輩はメールでの告白は問題無い、と思っているらしいですね?

 でも、それって間違っているt思うんですよ。

 そりゃ、告白の手段としてはありかもしれませんけど、本当の気持ちは伝わらないですよね?

 やっぱり、文字では無く、言葉で伝えるべきだと思うんですよ。

 ラブレターだって、好きだって伝えるよりも、特定の場所に呼び出してそれから告白するってパターンの方が多いんですから。

 ……えと、上手く伝わりましたかね? つまりは、こういう事です。

 ――そこで文は途切れて、下へと少しスクロール。

 するとそこには、

 ――先輩、あなたの事が好きです。もし、先輩に彼女が居なくて、好きな人も居なければ、私と付き合って下さい!

 ……実は、中学生の時から好きでした。中学三年生の頃、今の高校に見学に来た時に先輩の、美術室に飾ってあった絵を初めて見て、一目惚れしました。あ、絵に、ですよ?

 それからというもの、しょっちゅう見学に来て、新しい絵が飾られる度に感動して、いつしか描いた人に会ってみたいと思うようになって。

 それで、ある日偶然会って、短いながらに話をして、その言葉に心引かれて。

 それからは頑張ってこの高校に入る為に勉強して、入学する事が出来て、心から驚き、喜びました。そして、同じ部活に入ろうと思い、意を決して放送部に行ってみれば、先輩がそこに居て、ペガサスの絵を描いていて。

 覚えていますか? 先輩が美術室に飾った絵で、私が初めて見た絵は、ペガサスだったんですよ?

 その後、先輩といっぱい話して、先輩と一緒に遊んで、気付いたんです。

 私は、この人が好きなんだなって。先輩の隣に居ると、心が落ち着いて、すっごく楽しくって……言葉に出来ない気持ちがたくさん生まれるんです。だから……先輩、好きです。

 どうですか? 文章での告白だと、上手く伝わった感じがしないでしょ? というか、私が伝えきれていない感がします。

 っと、長文失礼しました!

 では、また明日、会いましょう。でも、お返事はいつでも良いです! では。――

 そこまでで、文は終わっていた。

 後に残るのは、なんとも言えないもどかしい気持ち。

 ……あぁ~、確かに文じゃ良くないなぁ。

 なんだろう、心がモヤモヤする。

 面と向かって言われたわけでは無いから、相手がどんな気持ちで伝えたのかが分からない。

 そして、当日の返答手段はメールか電話に限られる。

 でも、何かを介して返事を伝えるのは申し訳無くて。

 だからといって、今から会おうっていうのも申し訳無くて。

 故に、合えるのは明日。

 それまでに心を落ち着かせなきゃいけない。

 僕は今、かなり取り乱していた。

 どうやら僕も、結構不器用なのだと再認識させられてしまった。






「数日振りの姫! 好きどぅはっ!」

「何遍も同じ手が通用すると思ったら、大間違いよ!」


 朝。

 いつもより少し遅めに登校してみると、校門前にて榊が気の強そうな少女に腹部を殴られ、うずくまっている光景があった。

 どうやら、じゃれ合っているようだ。

 ……じゃれ合っている、で合ってるよね?

 少なくとも、その光景を見ている皆はそう思っていると信じよう、うん。

 それにしても、朝から元気なお二人である。

 もちろん、登校している他の学生は、元気そうでも眠そうでも憂鬱そうでも、彼らを避けて校舎へと向かっていた。

 僕はといえば、最初から距離を置いて、校門を潜ったところだ。

 その時、不意に倒れている榊と目が合い、笑みと共に目伏せであいさつされた。とりあえず、僕は会釈。


「本当、元気ですね。あの二人」


 笑い声と一緒に聞こえた言葉は、僕の左側を歩く美咲のものだ。

 彼女とは数分前、到着した駅前で偶然会ったのだ。多分。

 最初、驚いて思わず足を止め、次いで胸の鼓動が速まった。

 けれど、機会は今しか無い、と僕は思った。

 この時、部活の時に伝えれば良いという考えは、皆無だ。

 そして、僕は昨日のメールに対する返事を伝えた。

 なんて伝えたかは、言うまでも無いだろうか。

 一緒に登校している時点で、ねぇ。

 ともあれ、急に日常が変わった高校生活を楽しんでみるのも、悪くないよね?

 誰に問い掛けた訳でも無く、疑問系の言葉を内心で呟き、僕は校舎へと向かって行く。

 新しい隣人と一緒に。

 ここまで読んでくれた皆様、お疲れ様です。

 どもー、Izumoです。


 気分転換に、という考えから連載を始めたこの作品ですが、気付けば予想以上に話数が進んでいました。

 それはもう、「フラグメント・オブ・タイム」の更新を休んでまで。

なのに読み返してみれば……なんか自己満足の自慰作品になった気が(殴

 「そんな事ねーよ」とか言ってくれる方、是非コメント下さい。そして良かった部分を箇条書きで(殴&蹴

 自重します。


 ――閑話休題。

 さて、今作品が何故GWの時期を選んだのかと誰も聞いてないけど一応言いますと、「いつもの空」とクロスオーバーさせています。

 Izumoはクロスオーバーが大好きな為、懲りずに年代、時系列を合わせていますw

 まぁ、両方読んだ事のある人にとっては、「あ、もしかしてこいつは」とかありますが、偶然見つけて暇潰しに読んだ人にとっては「え?結局、あいつは誰だったの?」的な感じになってると思います。

 例を挙げれば、喧嘩とかで有名になった人の件でしょうかw


 さて、そんなこんなでようやく完結を迎えた訳ですが、この作品のキャラの一部はIzumoの作品である「いつもの空+時々雨」にて使う事があると思いますので、この作品を気に入ったという方は、是非「いつもの空」の方も読んでみて下さい。

 もちろん、来週から連載を再開する「フラグメント・オブ・タイム」もよろしければどうぞ。


 おっと、思った以上に長文になってしまいました。

 それでは、本編・後書きまで飽きずに読んで下さった読者の方に感謝しつつ、また別の作品でお会いしましょう。

 では、また~

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