表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/329

8 魔石加工のお時間です


 ダンジョンは設定しないと雨が降らない。

 つまり干し物をするにも適する訳だ。


 裂いたキノコを干し網3枚ほど自ダンジョンに仕掛けたところで午前中の授業はタイムアップだ。


 合間合間で鮑やキノコ焼いて食ったり、魔石を『精製』したり、しょっぱいモノのあとには甘いモノとオヤツ交換したりで、あの時間はクラスの親睦会だったのではと後から気づいた。

 オリエンテーションの結果は上々。キノコの魔石は鮑同様、授業用の素材として買い取りしてもらったが、魔石の抜き取りも勉強だとみんなが手伝ってくれた。ありがたや。


 『サンダー』は以前に比べれば全然だが、位階の低いアバターにしては予想外にいい感じだ。

 前世で練度を積んだスキルの幾つかは、確実にリュアルテの中にある。

 どうしてだろう?



「…まだ体育系のスキルは動いてねえな」

 アスターク教官は今日も眼光鋭くていらっしゃる。

 男子3人はトト教官とバトンタッチでアスターク教官に引き取られてしまった。

 美人教官から文字通りの熊へ。格差が酷い。

 女子組は午後からは講師を招いて淑女教育を始めるらしい。

 今は休憩時間内だが、リュアルテの診察に付き合ってもらう形だ。

 【睡蓮荘】の中庭のテーブルをひとつ占拠しているが、この時間はがらがらだ。


「教官『鑑定』はどんなことがわかるんっすか?」


「俺の場合はHP、MP。体育系スキルの発達状態。体の不具合。そんなとこだな。『鑑定』は種類が多いし、取るのに免許や倫理試験うけなきゃならんのもあるから勉強頑張れ。

 ちなみに書庫は宿の2階だ」

 それはいい。夜寝る前の楽しみが増えた。さて。


「本は一度に何冊まで借りれますか?!」 

「本は取り寄せできますか。新刊の導入予定は?入室時間は決められていますか!」

「手元に置きたい本の買い取りって可能っすか!」


「五月蝿い。そこは、えー勉強ぅ?って渋るところだろお前ら、やり直し。

 それにまだ図書カードが届いてねえな」

 そんな殺生な。

 単純に読み物が好きというのもあるが、ゲームの立ち回り的にも本は乱読しておきたい。

 本はスキル修得にスイッチを入れる手段のひとつだ。

 実際とるかどうかはさておき、スイッチは踏めば踏むだけ、スキルとろうとした時のメモリー消費が軽くなる。


「だからひとまず持ち出し禁止な。魔力を7割使い込んでから、この後15時まで自由時間だ。15時からは日課の0レベルダンジョン攻略するぞ」

 未加工の魔石がザラザラ置かれる。

 ニンジンを前に置かれた馬の気分だ。

 筒形のラムネ菓子の入れ物のようなケースを沢山渡されたので、加工しては詰め、加工しては詰めを繰り返す。


「軍人さんも白玉狩りしてましたけど、あれ楽しーですし、ちびどもにやらせてやるのはどーですかね?

 周りの大人忙しくて、ボーイスカウト教室とか予定がたてられないって、仲良くしてくれたちび介どもに聞きましたよ」

 チビッ子に懐かれる見習い冒険者とか、お約束。

 ヨウルの異世界転生物の主人公っぷりはとてもいいものだ。

 あー心がピョンピョンする。


「崩落止めの結界まわりは白玉の湧きもいいが、他も色々湧くからなあ。

 軍人が目についたのは、お前たちがいたからだ。なにかがあった時、トトが足止めで周りの軍人がお前ら担いで逃げる算段だったんだぞ。広く子供の遊び場にするには危険が過ぎらあな。

 豆やキノコぐらいならむしろ美味しいぐらいだが。なあ?」

 視線で小突かれたので胸を張る。


「キノコはいくら採れてもいいのでは?

 ダンジョンでも育てます、そのうちに」

 エルブルト系種族の特徴で、出汁がきいたものが好きというのがある(なんとなく親近感がある話だ)。これは隣の北国の話だが海がなければ、キノコの確保に走ったのは致し方ないのではなかろうか。


 該当魔石を入手したんで、界面にキノコ魔石のアンカーぶち込んで奴らの捕獲が可能になった。

 ダンジョンに誘致したい魔物の魔石が必要なのは、アユの友釣り漁を連想してしまうがどんなカラクリなんだろうか。


「駄目かあ。チビッ子が楽しく位階上げ出来て小遣い稼ぎになる、いい案だとおもったんすけど。

 あ、白玉だけしか出ないダンジョン造るとか。

 0レベでも、白玉いるし。範囲狭いぶん迷子出ないし」


「素晴らしいな。ただビリビリ棒、あれ輸入品で手に入りにくいんだよなー。

 …………あー。ちょい、リュアルテ。このトレントの魔石を『精製』してみろ」

 渡されたのはうずらの卵ほどの黄色い魔石。

 特に問題なく『精製』する。


「『調律』で『エンチャント』。指定は『雷光』の最低レベル。やれるか?」

 『精製』より『調律』の方が難しいが、雫石の加工に比べたらずっと楽だ。

 だけどスキル3つの重ねがけはどうだろう。あ、採取もそうか。問題なし。


「出来ました」

 固い魔石を『精製』した精石は触ると柔らかだったのに、『調律』『エンチャント』『雷光』を重ねるとまた固くなる。

 魔石って不思議だ。


「なんというか、凄いな。天然の加工スキル持ち。もう、エンチャントを重ねられるのか。

 常識が崩れる」

 それは誉めてる?貶してる?


「雫石の加工のほうが、辛かったです。特に雫石の『調律』は爆発するかと思いました」


「ああ、あれ怖かった…」


「同意する。辞世の句が頭をよぎった!

 それも某有名どころのだ!盗作だな!」


「そこらの機微が判ればいいんだが。すまんな協力してくれる『魔石加工』もちは軒並みデスマーチ中で講師出来そうな奴はいないんだ。

 ここまで出来ればだいたいイケる。そのラインは教えて貰ったから大丈夫かと、っと。

 リュアルテ、ストップ。魔力の残量がそろそろ3割を切りそうだ。ヨウルもあと3つで止めておけ」


「私は如何しますか?」


「まだまだ余裕だ。どんどん行け」


「寂しい!」


「ひとり置いていきやしないから安心しろ。こっちは魔力回復のオヤツをしているだけだ」


「それも切ないんですが!」

 そんなに元気にハキハキと、切ないと主張されましても。


「エンフィ、白玉のなら同時にまとめて『精製』かけられたぞ」


「なるほど?

 うん、出来た!教えてくれて有り難う!」

 やれるのか。チマチマやることなかったな。

 あー甘ったるい紅茶が染みる。


「ヨウル。リュアルテが協力してくれるなら、白玉ダンジョン計画行けそうだけどどうする?

 需要の多さを考えると小さいダンジョンを沢山、駅で繋ぐ形になるだろうが」


 クエスト!

『級友のダンジョン作成の手助けをしよう!』

 報酬 該当級友のスキルコピー(メモリー消費小)


 これ、メインはヨウルだな。

 協力要請がかかるとなると、連続クエストを踏んだか。


「正直、面白そうだけど手に余りそうな予感がするなあ」

 ほう。規模の大きなイベントであると?

 しかも面白いとな。それは是非協力せねば。


「試しに一つ、簡易な形で稼働させてみたらどうだ?

 プライベートダンジョン形ではなく、固定ゲート集客形の単独ダンジョンなら導線もシンプルに済む!」

 エンフィが楽しそうにグイグイ行くので尻馬に乗っかる。


「それだと最初の一つはいいが、数が増えると管理や手入れの際、移動時間がかからないか?

 駅の雛型はあるのだから、参考に出来ないだろうか」


「出入口の沢山あるシステムは、煩雑だ!

 我らは初心者。先ずは手堅く行こう!

 問題の管理の仕方だが。

 駄菓子屋さんにゲート置かせてもらって、ダンジョンの出入りを見張ってもらうのはどうだろうか。

 門のエネルギー充填は加工前の魔石でいいと聞いた!

 ビリビリ棒も店で貸し出ししてもらえば、レンタル代だけで済む」

 フランチャイズ式ダンジョン。そういったところか。

 他人さまに煩雑な運営を任せてしまえるのは素晴らしい。


「天才か。どうせ人手の手配は誰かに任せるのだろうし、先ずはダンジョンゲートのアンカー部分か。門の外装は部屋用のドアでいいんだろうか?」


「そうだな。ダンジョンの規模的に乗用車の運用はなかろう」 


「なんだよ。そこまで考えるならお前らでやれよー」


「なにを企画者がいうものやら。旗を振るのは言い出しっぺに決まっている!」


「わたしは多分ビリビリ棒の作成班にくみこまれるんじゃないか、リーダー?」


「そうだぞ、リーダー」


「教官まで!」


「いや、少し考えたが良いと思う。

 簡単で効果があるのがいい。

 12歳以下の子供が白玉狩りをすれば、上がった位階分だけ、職についた時の給料が違ってくる。

 お前たち、明日の朝は起きられるか?

 起きられるなら試作ダンジョンを造れる場所を朝までに用意しておく。その努力する」


「ヒェ、起きられマスけど、展開早くね?

 初めてのダンジョンはたくさん考えてから造りたかった…!」


「【俺が考えた最高のダンジョン】は腕が上がってからでいいんじゃないか」


「正論辛ぁ」



 話が盛り上がったので、結局この日は図書室に行けずじまいだった。

 夜?

 0レベルダンジョン行脚の道中でバタンキューでしたがなにか?

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ