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77 オレンジに酔う



 昼食は爺さまと婆さまと一緒になった。

 食後のひと時。


「そういや婆さま、今日は休みじゃなかったっけ?」

 なんかそんな話をしたよな?


「旦那さまが車を出して下さったから、お買い物帰りに寄りましたのよ。

 どうぞ、ご所望の品ですよ。佐賀の窯元の作家さんのですって」

 婆さまがショップバックを机に置く。


「有田、伊万里?」

 佐賀っていうとそれしか知らない。


「さあ、どちらだったかしら」

 婆さま、窯や作家の名前で買い物はしないからなあ。まさに一期一会。

 ガサゴソ梱包を解くと、白地に鳥獣戯画調の絵付けがされたマグカップだった。

 ウサギもカエルも楽しげにフキの葉っぱを振り回している。それが5個で1セット。


「あれ、これ手書き?」

 デザインはほぼ一緒だけど、少しずつ顔や持ち物なんかが違っている。

 遊び心があるなあ。カップの底に月が隠れていたりして。


「よいお顔をしているでしょう?」


「ん。わざわざ、ありがと。爺さまも」

 袋にはカップの他に、箸と箸袋、箸置きが入っていた。

 割り箸も嫌じゃないけど、毎食ごとなら塗り箸が嬉しい。流石は婆さま、年の功。


「おう。流の顔見たついでに経験値吸うて帰るわ。大根収穫したら、加工品にして朝市で売ろうっちゅー話や」


「それっていいの?」


「許可を貰いがてら、今日はサンプルを持ち込みましたの。相談したら、加工品は大丈夫ということでしたよ。

 あと、そのまま食べられる品は売店でも取り扱いしてくださるそうです」

 そう、水キムチのパウチを渡される。


 …このビニール容器さ、なんか見覚えがあるんだけど?

 水玉工場の製品じゃん。ノーオイルでエコなやつ。

 新しいものも好きだな、婆さま。もう導入したんだ。


「そっか。魔石を外せば、ただの規格外の大根だからか」

 うちでもどっさり採れてしまう規格外品のジャガイモとか、調理してよく朝市に出品しているもんな、かーさん。

 美味しいけど出荷できない大根とか、そりゃー目を付けられるわ。


 ここは家族として応援しとくか。


「休み時間が終わるまでで良かったら、手伝おうか?」

 『サンダー』要員なり『採取』要員なり。あと30分ほど時間がある。






 爺さま、婆さまはコミュ強だ。

 位階上げに苦労している事務員さんらを大勢誘って、セクシー大根の収穫となった。


 『サンダー』を一回落としておけば、そうそう危険はないもんな。大根ならば。

 魔石は山分け、大根は総取り。ちょっと経験値を分配しただけで収穫の人手が増えたとあって、2人ともホクホクだ。


 セクシー大根は、雷に気が付くと自分に『念動』掛けて突っ込んでくるので、呼び寄せは禁止。

 だから土から引っこ抜く作業があるわけで、『地面操作』がこれには使えた。


 アースシェイク、からの隆起、異物排出。


 仕留めた大根を掘り起こすと、事務員さんらも積極的に拾ってくれる。

 おかげで和気あいあいとした収穫になった。

 皆、制服姿だけど、婆さまに『洗浄』の発動体を渡してあるから午後からの仕事も安心だ。


 この大根。出荷も出来ず、他所の施設に送ったりはしてるけど食べきれない分は水玉工場行きだったらしい。

 引き取り手が現れるのは、諸手で歓迎されていた。


 場が温まったところだが、オレは学校があるんで途中退場。

 それでリモート授業を受けてたんだけどさ。最中、『計算』と『計測』がニョキリと生えた。

 いや、真面目に勉強してたからそういうこともあるだろうけど。


 …うん。

 ………これ、もっと前に欲しかった奴…!

 この意見、全国の小、中、高校生なら9割は同意してくれるよな?!







 ゲームといい、リアルといい、最近海に縁ついている。

 放課後に訪れたのも、波打ち寄せる砂浜ダンジョンだ。


「学生時代に間に合ったんだからいーじゃん。『計測』欲しさにオレなんか、もう一度勉強しなおしよ?」

 愚痴ったら、ヨウルに脇腹をグリグリされた。

 そっか、ヨウル就活してたって言ってたもんな。さーせん。


「不毛だな。話を変えよう。蒼天宝貝のブルーっていい色だな」

 この浜で獲れる宝貝の殻は、生体金属だ。

 特に貝の内側は絵画にしかないような青い夜空のように美しい。

 丁度サリーがこんな目の色をしている。


「お前マイペースにも程があるだろ、そーゆーとこ。ま、いいけどさ。確かに、この貝殻はインゴットにしちまうのは勿体ないな」

 言いながら、ヨウルが『造形』を掛けた。

 すると宝貝は姿を崩し、身の部分が盥の中に取り残された。

 このブルーメタルは馴染みがある。

 イヤーカフ型ゲーム機の筐体だ。


「うわ、貝の中身、全貌はグロい」

 この宝貝は力ずくで倒すとどうなるかっていうデモンストレーションに仕留められた個体だ。

 10センチもある装甲をぶち抜く、機動隊のお兄さんらの豪腕よ。

 ゲーム配信前にダンジョンで鍛え始めた第一世代らは、スキルを使わずのびのび育ったんでパワーに極振りしている感がある。


 貝のフレッシュな中身はと言えば、うん。慣れないと怯みそう。

 宝貝自体も腰掛けにちょうど良さそうな大きさだしさ。装甲が飛びきり美麗だっただけにギャップが激しい。


「美味しいですよ!サザエとか、コリコリした貝が好きならお勧めです!」

 機動隊員だというおにーさんは、てきぱきと肝と魔石を取り分けている。

 この肝は食ったらあかんものらしい。魔物の貝類の臓物は、毒があって危険だとのこと。ここら辺はゲームと同じだ。


「しかし、エンフィがいると暖房いらずだな」

「確かに」

 このエリアは、タコの海とは違って冬ではない。だけど、季節は秋か春か。風は涼しいというよりは冷たく、長く居ると体が固まりそうな塩梅だ。


 そこで、エンフィだ。

 あいつが『加熱』を使って貝を程よく焼いているので暖かいし、浜はいい匂いがぷうんと漂う。


「『加熱』。動きの鈍いのには、凶悪だよなあ」

 ホントだよ。


「蒼天宝貝、生体金属の装甲厚いのに。あいつのスキルだとそれが仇だ」

 蜂を落とした時の『減熱』といい、今回の『加熱』といい、あいつのスキルはジェノサイドに特化している。

 このスキル、エンフィがメインとして使ってるのは空調機の基幹付与なんだと知ってるだけに、物は使いようなんだな、と染々してしまう。


 蒼天宝貝は熱された自分の装甲でこんがりだ。

 おかげでモリモリ経験値が入ってくる。


 ヘイト管理は護衛さんらがしてくれているんで、エンフィは温度調節に集中している。

 倒した貝が冷めた段階で回収してくれるんで、オレはインゴット製作、ヨウルはゲーム機筐体作りだ。

 インゴットの方が格段に簡単なのに、ヨウルの仕事が早い、早い。


「『造形』に、もう星がついたのか」


「みたいだな。なんかさ、リアルで経験値吸うようになってから、ゲームでやったことも現実のスキルの習熟になってるよな?

 朝起きると、経験値減ってるもん。

 ざっと調べた感じ『調律』とか、リアルで出てないスキル以外は、概ね」

 ヒェ。


「それは……『調律』が出たら気を付けたほうがいいな」

 この先、リアルの経験値稼ぎが重要になってきそう。干からびてしまう。

 『調律』はまだ出ていない。だけどそろそろスキルの準備が整う予感がある。早ければ今日にでもだ。

 ここにきて、ゾッとする情報が。


「だな」






「大丈夫です。睡眠中のゲームでレベルダウンしないように、リミッターが掛けられています。

 ゲームでダンジョンマスターのレベルダウン事件があったでしょう?

 気になったので調べました」

 サリー有能。


 新しいカップを下ろして、夜のお茶だ。

 ミルクたっぷりのコーヒーに、黄金色したパウンドケーキ。


「失敗しないと、わからないことって多いな」

 オレなんて、そんなんばっかだ。


「全くです。先達から受け継いだシステムは優秀でも、使う私たちがポンコツなことといったら、もう笑いしか出てきません」

 ああ、なるほど。


「研究施設のダンジョンの立ち上げにも、やっぱり苦労したんだな」

 スキルがほぼない状態でダンジョンで鍛えるなんて、想像するだけでげんなりだ。

 オレだったらたぶんセクシー大根あたりで足踏み状態になってたなって、……ああ、今怖い想像をしてしまった。


 ロケットの恩恵なく、いきなり崩落が始まったらオレらどうなってたんだろう?

 オレは若いし男だから、大根の1本くらいはなんとかなったかな。でもその先は?

 スキルなしで生き残れると思えんし、家族もそう要領よいタイプじゃない。

 備えが出来る日常ならまだしも、非常時の選択は苦手なほうだ。

 ご近所まわりは全滅として、そーいうのが全国、全世界だろ。治安の悪化どころか文明滅亡スレスレルートじゃん。

 人類はしぶといから絶滅はしないだろうけど、間違いなく文化は衰退する。


 …うん。巧く崩落を生き残れても、お先まっくらだったな。


 なにせ、うちは女系でオレは4代ぶりに生まれた篠宮の男だ。

 生まれた時には鯉のぼりが立てられたし、祝い事は優先される。親戚まわりには何かと贔屓にされてきた。

 なのに危急の際に役に立てなくて、なにが男だ。

 産土が崩落していたらたとえ生き残れてもまず、その呵責に病むな。


「ゲームの配信が始まってから、私たちがなにも分かってなかった事がわかりましたね。

 ヒューマンエラーは確実に減りました」

 日本のお役人ちゃん頑張ってたんだな。オレらの知らないとこで。

 情報公開したら、文句を言うやつ絶対出てくるだろうけど、あまり酷いこと言われないといいな。こなした苦労の割りが合わない。


「あ、もう8時半か。サリー、付与したアクセ類は預けてもいいか?」

 MPが増えて白玉魔石の『精製』ノルマが早く終わるようになったので、アクセサリの製作もボチボチするようになった。

 これらは全て規定デザイン。ゲームでは功績ポイントで買えるシンプルなものだ。

 納品したものは検品を経て、売店等で売られる予定だ。


「『洗浄』は、あると快適ですからね。皆も喜ぶことでしょう」


「原価からするとボッタクリだけどな」

 売店は国の補助が出るんで、予定一般売値より安く設定されているらしい。

 しかし、それでも十分高い。購入は家族会議がいりそうな値段だ。


「将来の職人を保護するためです。誰もが自分で狩りにいけたり、魔力が高いわけじゃありませんから」

 ですよねー。


 まあ、いいや。今のうちに稼いどこ。どうせダンジョンマスターが増えたら安くなるだろ。


 サリーは渡したアクセサリの数を2回チェックしてから『体内倉庫』に仕舞った。


「それではお預かりします」


「よろしく。

 そう言えば、あの後『魔力循環』をしてから気持ち悪くなったりしなかったか?

 エンフィとヨウルは元気だったけど」


「素晴らしく快調でしたよ。寝るときまで流士さんの魔力が残っていて、すごくいい香りで」

 あれから何回かしているけど、エンフィとヨウルはそんなに後は引かなかったよな?

 特に問題ないから言わなかっただけか?


「長く残るのは個人差かな。

 今日はどうする?」

 『魔力循環』はラジオ体操よろしく毎日やるとよいものっぽい。

 魔力の育成に効果があると、医療魔法師の先生に太鼓判を押して貰った。


「喜んで」

 そのいらえにソファーを詰めて、真ん中に手をおく。

 前みたいに目の前に跪かれると変に意識してしまうから予防策だ。

 3人掛けのソファーだからサリーが座っても問題ないだろう。


 …しまった、賑やかしにテレビでも付けとくんだった。


 柔らかく手を握られる。

 女の人は体温低いって聞くけれど、サリーの手は温かい。


 リアルの位階も上がって格段にMPが増えたとはいえ、前回は魔力格差に酔っぱらった。まずは慎重に魔力の流れを作る。


「この前聞くのを忘れましたが、私の魔力は何かしらの特徴があったりしますか?」

 サリーの体に魔力をゆるりと通して、1回転。そのまま魔力を捕まえ、こちらに引き込む。柔らかく、丁寧に対流させる。

 ゲームのサリーはどこもかしこも頑丈な男だけど、こちらの佐里江さんはオレよりもまだ指は細い。だけど掌は硬かった。

 もともとの佐里江さんは繊細な人だったんだろうな。

 この人がか弱いままの女性だったら、こうして手を繋ぐことなんてなかっただろう。


「…甘酸っぱい、柑橘の味だな。サリーの魔力は強いから、少し酔ってしまいそうだ」

 おそらく、たぶん。

 こうも魔力に酩酊するのはオレにとってサリーが特別だからだ。

 サリーの魔力は確かに高いが、強引に流し込まれたわけでもなし。

 心と体と魔力はそれぞれ密接な関係がある。

 魔力なんてプライベートそのもの。好きな子のそれを直接触れることを許されて、平静でいられるほどの木石じゃなかったと。単にそういうことなのだろう。


「柑橘のお酒ですか。少し複雑ですね。

 いえ、嫌だというわけじゃなく。

 咄嗟に思い浮かんだのが、オレンジを使ったスクリュードライバーで。あれの異名がレディキラーだったな、と」


「カクテルだったか?」

 年齢的に門外漢でもなんか聞いたことある名前だ。


「そうです。若い男性が意中の女性に飲ませる類いのものですね。

 甘くて口当たりがいいのに度数が高いから、酔わせやすい」

 サリーはうっとりと口元を綻ばせる。


「そう言われると似ているのかな。甘くて爽やかで。

 サリーも好きか?」

 気がそぞろになってしまうのは、サリーの形のいい膝が、足に少し触れているからだ。

 これは誘惑なのか、手に注意が取られていて気づいてないだけか。

 いずれにせよ悩ましい。

 …前者だったら、嬉しいのだけど。

 この手の経験が無さすぎて判別がつかない。


「嫌いじゃありませんが、アルコールは辛口が好きです。

 胃が消毒されるようなきついのが特に」


「っふ、大人だな」

 サリーの魔力に熔けそうだ。主導権は術者のオレにあるはずなのに、メロメロだ。サリーに弱すぎるだろオレ。


「ええ、悪い大人ですとも。流士さんは、少し警戒がたりませんね」


「警戒、サリーに?」


「そうです。忠告しているでしょう?

 あまり、無防備だとガブリですよ」

 軽く腕を引かれた。目の前に白い顔がある。


 整えられた、お膳立て。

 ここで踏み込まなければ嘘だろう。


「サリー。好きだ」


 答えは唇で塞がれた。

 1度目は短く、2度目はやや長く。


「リアルでキスをしたのは初めてだ」


「私もです」


「オレからするのは、やはり駄目か?」

 変わりに3度目のキスが落ちる。

 ちゅっと下唇を甘く吸われた。その悪戯は洒落にならない。

 それでなくてもぐずぐずなのに理性がもろく砕けそうだ。


「いつか平気になるその日がくるまで、私からさせて貰えませんか?

 キスも、貴方を抱き締めるのも」

 手を繋いだ反対側の指が、もう片方の指も絡めとる。

 そのまま首筋に顔が埋められた。


「サリー、ちょっと、不味いから…!」

 息が首筋に!

 トキメキ死ぬぞオレが!


「私も我慢するので耐えてください。

 流石に社会人が高校生を押し倒すのはよくないので!」

 サリーの耳が赤い。

 首筋に顔を埋めたのは照れ隠しか畜生、可愛いな!


 マジで、サリーはオレでいいの?

 もう本気にしたからな?!


「オーケー。これ以上は卒業したら、だな。

 でも、よかった。サリーはオレのことは対象外で子供扱いしてるから、態度が柔らかいと思っていた」

 本当は抱き締めたい。背中に腕を回し、髪に触れて。

 それをぐっと我慢する。

 仕事を越えて、慈しまれている自覚はあった。オレだってサリーは大事にしたい。


 薬を塗るその指先が、どれだけ優しかったか知っている。

 でもそれはアガペーであり大人が子供を守ろうとする父性の発露で、エロスとは違うと感じていた。

 少なくともゲーム中はそうだったはずだ。


「流士さんがリュアルテさまと同じような可憐なボーイソプラノだったら、もう少し私の理性も働いてくれたかもしれません。

 今の流士さんの声で名前を呼ばれたら。

 意識しないなんて、私は無理です。

 ……。

 サリーがVRの住人で良かった。あいつがリアルにいたら、警戒の薄い流士さんなんて余裕でパクリでしたよ。

 流石は私のアバターで、好みのタイプは一緒ですから」


「…あちらのサリーって……」


「両刀使いですね。おかげで世界が広がりました。

 サリーがいなければ私は男性に、嫌悪や憧憬を抱いたままだったでしょう。

 想像していたよりずっとまともで、ろくでもなかったです」


「……なんか複雑だな。1度に仮想ライバルが増えてしまった」

 そうか。

 サリーはオレが勝手に心配してたより、潔癖なタイプじゃないんだな。

 ちょっとだけ、安心した。

 苦しいことが少ない方がいいもんな。嫉妬するのも確かだけど。


 思い返せばサリーの接触嫌悪って、人から触られるのだけが駄目なタイプだった。

 自分から触るぶんには、大人のお付き合いはやれないことはないとそういうことか。

 サリーは確かに痴漢やストーカーにはセメントだけど、実害のある変態相手なら当然だ。

 カフェでナンパされるくらいなら、礼儀正しく対応してたし……ジャスミンに引っ張って行かれた店でもさぞかしモテてきたんだろうな。胸が痛い。


 …オレは心が狭かったんだな。

 下手すると知り合う前の話なのに。


 恋人はいたことないと聞いていたけど、あちらのサリーは若い男だ。夜の恋人ごっこの経験はあるんだろう。

 アバター的に相手が男か女かは……どっちだ、気になる。

 せめて女であってくれ。


「嫉妬してくださいますか。サリーは私よりアグレッシブなので、童貞ではありませんよ?

 そしてリュアルテさまの前世の方もそうですよね。ずいぶんキスにも慣れているようで」

 吐息をひとつ。

 前世での経験は、あまり聞かれたくはないな。


「嫉妬なら、もちろんするに決まっている。

 前世のことは不本意ながらだ。リアルじゃまっさらだけど嫌か?」

 身辺警護の都合上、恋人なんて生まれてこのかたいないことはバレている。


「なるほど。リアルの体は清いのに、心は経験を詰んでいると。それは私も同じですが流士さんのこととなると色っぽくて無性にドキドキしますね」

 ちょっと待て、異議がある。


「それはどう考えても反対じゃないか?」


「いいえ。

 詳しく話すと引かれそうだから言いませんが、貴方の高校卒業はすごく楽しみで仕方ありません」

 わあ。それはご褒美というやつでは?

 今よりもっとイチャイチャしてもいいってことだろ。


「期待している。でも正直、高校生のうちに彼女と一緒にクリスマスが迎えられると思ってなかったから。自分でもみっともないほど浮かれている。

 健全なデートとかも、外出制限が解けたら誘っていいか?」


「私も生きているうちに彼氏ができるなんで人生設計にありませんでしたよ。

 ええ、2人で出掛けられるようになったのなら、必ず。

 でも。サリーを含めて、私はデートってしたことないので大丈夫でしょうか?」


「今だってお家デートじゃないか?」

 『魔力循環』の為だけど、お付き合いしている2人が手を繋いでいる。

 健全と言うには、ちょっと不純だ。

 サリーなんてオレの上にのし掛かる体勢だ。

 いい匂いだし、温かいし、サリーには翻弄されっぱなしだ。


「これが、デート。…なるほど!」

 頬を上気させたサリーが、頭を上げる。

 やっと顔を見せてくれた。


 かわいい。





 この先、佐里江さんが高卒まで我慢できなかったら、そこだけ深夜か月の光にお邪魔するかもしれませんね?

 予定は未定。


 話のシナリオを組むにあたって、本作品が一番政府ちゃんがしゃかりきに頑張ったルートです。

 タイトルロールに政府ちゃんと入っているだけに、働き者です。


 ゲーム開始が4年遅れたルート。

 政府ちゃんが後手に回り、文明崩壊してた場合は語り手が病んでたのでインモラル増量でした。


 4年後時空で、地元の皆と崩落に巻き込まれ異界に漂流してたルートは、それどころじゃねえ!のでド健全でした。


 余談ですが。

 


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― 新着の感想 ―
[良い点] キャラクター達がいい意味で落ち着いてる。 [一言] じっくり交流を深めて恋人になるとかいう最高の物語を読ませていただきました。 BLでもいいけどできればノーマルのままくっつかないかなと思っ…
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