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40 『猟銃』スキル




 『サンダー』の杖製作はストップを掛けられた。

 攻撃スキルがついた道具製作は免許がいるらしい。

 ホント倫理観お堅いな、『異界撹拌』。

 また夜に勉強することが増えてしまった。

 一先ず『サンダー』を『エンチャント』した精石のみ職人さんに届けて貰って行動再開だ。

 レベル1雫石の『調律』にMPが500ほどかかると伝えたら、これはひたすら位階上げしなくてはという学級会の結論になった。

 オレと遠距離攻撃スキルを習得していたエンフィは、作業の合間合間で蜥蜴撃ちに参戦する。

 エンフィの『猟銃』も免許必須の技能なんだと。

 その免許が取れたそうで、今日がお初見だ。

 欲しいスキルほど試験やら資格やらセットになっていて面倒な一面、テキストデータを読み込む楽しみもある。

 本を読むのは楽しいけど、試験は嫌い。人間って我儘だ。


「パーン!」って、乾いた音がエンフィ。


「ドンっ!」ってな音がオレ。


 6発1セットでインターバルを置いて、獲物を拾いに行って貰ってる。


「『銃』は消費が軽い。これは怖いな」

 エンフィが呟く。


「遠距離攻撃は嫌いか?」


「いや、安全に猟が終えられるのはなによりのことだ!

 ただ、この手のスキルの持ち主を野放図にしたくない理由があると思っただけだ。

 5マもしない弾丸で、格上位階の大人を手こずらせる蜥蜴の頭を撃ち抜くのだから」


「…そうだな」

 エンフィは思慮深いな。

 遠距離攻撃覚えると、楽しー!ってなるのが通行儀礼なのにこの冷静さ。見習いたい。

 命が重めのこの世界だ。トリガーハッピーに頭がラリらなくて、まあ重畳。


「撃っていると、楽しいのがなんともなあ。浅ましいようで後ろめたい」


「それはしかたない。狩猟本能イコール肉が食べ放題の方式があるかぎりは。

 獲物の腹を傷つけない猟はいい猟だ」


「……。それは確かに!

 あのつくね串は絶品だった!」


「白玉狩りは体を動かせて楽しかったが、食肉ダンジョンは、どうも物欲が刺激されて困る。行動のタガが外れそうになるという意味で」

 そう話している間にメイドさんが回収してきてくれたので、もう1セットだ。

 ここでヨウルが戻った。直ぐにエンフィが沸き潰し4周目に突入する。


「まいったあ。1レベルの雫石、きっついぃー」

 そっちも出たのか。まだ難易度高いよな。


「お疲れ。少し座るといい」

 ヨウルがへばっているので、衛生活動のヘルプに回る。


「クロフリャカ嬢、交代しようか」


「うん!『造形』してるね!」


「魔力は平気か?」


「大丈夫!…じゃなかった、減ってる。オヤツする?」


「そうしようか。わたしはジェラートにする。そしてたこ焼きとコンボを決める」

 甘いの食べたらしょっぱいものも恋しくなるよね。あと冷たいものとアツアツなものも。

 しかしこの、食べても食べてもガス欠になる仕様。

 開発者が食べたいの我慢なダイエッターだったんだろうか。

 上の妹とかも、教えたら羨ましがるだろう。食べるのも作るのも大好きだから。


「ヨウルも同じでいいか?」


「ジェラート、あったらレモンとか柑橘のやつ」 


「クロはイチゴの!」

 穀物や肉からすると甘味は現実と同じかそれより高い。

 だけど肉体労働者の皆さまは関係ねえ!とばかりにアイスケースに群がっている。

 丁度いいので纏めて『ヒール』及び『洗浄』だ。


「怪我人はいますか?」

 手を挙げた人に『治癒』を掛ける。この指輪を使う機会が増えてきた。

 そろそろ疲れが貯まってきた頃合いだろうか。


「HPが黄色になる前にいらしてくださいね。無理は禁物ですよ?」


「おう、すまねえな。坊っちゃん!」


「そっちは魔力足りんのか?ずっと使いっぱなしだろ」


「わたしたちはオヤツ無料なんです。だから遠慮しないで大丈夫ですよ」


「まだ、屋台のオヤツ全種類せーはしてないの!」


「そのちっせえ体にどれだけ詰め込むんだ。腹壊すなよ。

 ともあれ、助かってるのはこっちだかんな」


「ああ、医療班くらい食事の提供はあってよかったよな。必死にカロリーバー噛ってる姿が申し訳なくてよ」


「備品の申請に油と砂糖ってあるの、辛いよな」


「値段3倍でもいいから、この手のケータリングサービスを続行して欲しい。俺は具申書を出す」


「俺も」


「あたしもギルドに提案するよ。出張買い取りサービスとかありがたくって涙出る。

 『体内倉庫』に余裕あるほど魔力なんてないしさ。おかげで今日だけで凄く稼がせて貰ったよ」


「安全地帯を確保してくれるなら、支配人は断らないかと。我らもグッドマンの一党ですから」

 黄色いリボンの略綬をつけた子は営業部隊だったっけか。

 すすっと寄って名刺を配っている。


「グッドマンさんとこの乙女部隊が、なんで料理をしているのか、聞いていいか?

 予備役に回ったとだけは聞いていたが」

 厳めしい軍人さんがメイドさんに尋ねる。

 やっぱり軍人だったか、いやそれ以外だったらむしろ驚くが。


「此度グッドマン家ご息女のオルレアさまが、ダンジョンマスターの側近に選ばれまして。

 新しくダンジョンを開くにあたり食事処を設けてのことです」


「それは目出度い。そうか、新しいダンジョンマスターはノベル村の方だったな。民営用と聞いたから伺ってはなかったが、食事ができるなら行ってみるか」


「…ノベルが消えて、野菜高くなったよなあ」


「ミイナばーちゃんの漬物がもう食べられないとか信じられない。

 燻製大根のたくわんとか、白瓜の辛子漬けとか」


「やめろ馬鹿、悲しくなるだろ」


 局地でお通夜なの、やりづらい。

 参加するにはノベル村のこと全く知らんし。


 よし、聞かなかったことにしよう。

 だから『探索』はイベント発生を伝えなくてよろしい。




 逃げられなかった。

 ごついおっさんらに、囲まれ涙ぐまれる居たたまれなさときたらない。

 まあ、若い兄さんや姉さんも混じってたけどな!

 こういうチヤホヤはいらなんだ。


 ノベル村出身の母親がいるお姉さんが、郷土料理のレシピをくれたのだけが救いだ。

 『探索』が、イベント発生を示したのはこれだった。

 【やることリスト】は、郷里のレシピを集めろとのお達しだ。

 報酬は料理スキルが貰えるらしい。

 そのうち村復興イベントとかありそうである。


 それにしてもイモ餅とか蓮根餅とか草餅とか、もっちりしたのがお好きだったのかな。郷里の皆さん。

 頼んで作って貰います。監修がてらお母さまと是非いらしてくださいね。そうバイバイするまで長かった。

 記憶がないことで気を使われるのは、精神力が削られる。

 うん。名前控えておいて連絡よろしく。

 来店があったらもてなして差し上げて下さい。

 様子を見守っていてくれたメイドさんにお願いしておく。


「よし、次。リュアルテ」

 沸き潰しの順番が来たので行ってきます。

 なんだかとっても走りたい気分だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] もう食べられない漬物の話とかやめようね…自分で作っても再現できないの悲しくなるわ
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