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329 ベルリンの壁はいつか壊れる



 その後のひと月余りはバタバタと過ぎた。

 間に春休みを取ったりもしたが、それ以外は忙しかった。


 ダンマスとしての急務は、GMの数を増やしたことだ。

 惑星2つ分を通常フィールドとして提供していた地球の恵まれていたVR環境は、世界各国のGMがお互いに演算を融通し合うことで築かれていた。

 それらの事情を考えると、GMはいくらあっても数が足りない。


 エドマエのGMはかなりの無理を通したと聞いていたが、そちら程ではないにしろこちら側のGMも演算が足りないのと情報不足で、昭和世界のあちこちで手抜き工事をやらかしていたそうだ。

 流石は同一AI。困った時にやることは一緒だ。


 【この際ですので!ゆっくりお時間を頂きまして、煩雑を理由に放置していた部屋のお掃除と、模様替えをしておきたいです・゜・(●´Д`●)・゜・ゴメンネ】


 そんなこんな。

 オレらが週刊の勢いでGMを増やしている間に、今までにない大規模メンテが入ってた。

 突貫で昭和世界を造ったせいで、手直ししなくちゃいけないことが山ほどあるらしい。


 マザーとの話し合いがあった日のGMなんて、【わあ…】としか鳴かなくなっていた。

 ホープランプへの理解が甘かったところが端々であるそうだ。


 でもさ、謝ることではないんでない?

 GMが急いでゲームを始めたのは、日ホプ間の相互理解のためだったしさ。

 オレもゲームで仲良くなれて、リアルのホプさんの印象も変わった。

 仕事中はスイッチが入ってるけど、案外、素は愉快なお人が多いよな一般のホプさん。ステファニーちゃんとその仲間たちとか。



 ゲームのリニューアルオープンは日本時間の4月4日。

 本日の夜からの配信だ。

 新規ユーザーも5000人ほど増える。


 私事のことだが、オレやたつみお嬢さんはサーバーメンテ中に、高校や中学を卒業している。 なんなら高校、大学の入学式も終わっていた。


 おめでとう!ありがとう!

 最後はろくに通えなかったけど、悪くない高校生活だった。


 同学年の幸も同じく卒業したので、『体内倉庫』に入れっぱなしにしていた御節で卒業祝いをした。

 来年の正月まで取って置くべきか迷ったが、我慢出来なかったよな。

 オレは田作りの中の飴が掛かった胡桃が好きだ。

 幸は栗きんとんばかり狙って食べてた。なんでもヤツのお宅では、御節ラインナップに黒豆や栗きんとんはいない子らしい。

 少し意外だ。

 幸のママさんは料理上手な印象だけど、正月くらいは作り手の好きなものばかり用意してもいいよなあ。



 ちなみにだが大陸都市群国家であるホープランプは、各々都市ごとに時差がある。

 なのでリニューアルオープンする昭和世界は、エドマエ時間における夜の10時から2時まで配信されることになった。

 将来を見越した、ダンジョンタワー標準時だ。ホープランプでのゲーム統括も、安全が確保されたらここに置かれることになる。


 昭和世界は新年度を迎えるにあたり、ホープランプ街が完成し、留学生の受け入れが一気に増えた。

 そしてオノゴロ島と黄泉比良坂がゲートで繋がったのが新機軸だ。


 そしていつもの撹拌世界も配信される。

 こちらは2時から6時までだ。


 両方のアカウントを持つユーザーは、1晩で昭和世界と撹拌世界の2日分の経験を積めるようになる。

 システムは改編され、リニューアルオープンした撹拌世界は昭和世界と同じく、配信時間以外は該当世界の時間が止まるようになった。夜に寝ると世界が切り替わるような感じだ。


 実は日本側も4月4日付けで撹拌世界をリニューアルオープンしている。

 深夜0時から4時までで1日経過する方式だ。

 他の時間はこちらと同じく撹拌世界の時間進行を止めてしまい、時間加速なしで妖精郷に入れるようになっているそうだ。


 これは4月3日までの管理と同じとなる。

 撹拌世界がクローズしている間の日本のゲーム環境は、妖精郷だけを運用をしていた。どうもそれが好評だったらしい。妖精郷は優しい世界だもんな。わかるよ。


 アバターの宿命となる長い休眠時間がなくなったわけだな。それだけはいいことだ。

 他国のGMが未だメタメタなので、どこもかしこも演算量の省エネ中だ。


 唯一通常運転の地獄サーバーも、時間加速はなくなっている。

 いや、地獄では大災害が起きてしまい、行動エリアが削られて狭くなってはいるそうだけど。


 今夜から配信なので、舞台となる情報もチラ見せで解禁されている。

 数時間後、ベッドに入るのが待ち遠しい。


 漂流者たちのステージになる撹拌世界は、現在から数千年後だ。

 なんらかの原因で一旦、文明が崩壊した後。

 古代の繁栄は森に消えたが、再興しつつある中世風ホープランプだ。


 うん、GM。

 日本サーバーでは撹拌世界のアポカリプス・シナリオがお蔵入りしたからって、他所さまの文明を気軽に滅ぼすのは止めような?

 なんか申し訳なくなってくる。


 ……数千年後って、地球も滅んでいそうだな、コレ。メメタァ。


 宇宙から飛来したという神々や、親しい隣人であったマザーの名残は、時折遺跡から発掘されるだけ。

 そんなホープランプに異界撹拌で漂流してきた撹拌世界産のプレイヤー及び現地民という、混迷のシナリオが用意されている。


 【都市が立派だったり、人口が多いと現状では演算が足りませんから。

 始まりのステージは小さな村落にしちゃいましょう。もっともっと私たちが増えたら、別大陸に大都市を出してもいいですよね!】

 っていう、GMの取らぬ狸だ。


 昭和世界は漂流中の学生の勉学のためと、日ホプ文化交流の場でもある。なので配信は止められない。

 しかしいつもの撹拌世界は三千世界への水先案内で、GMのレゾンデートルだ。

 なので折りにつけ、サーバー増設をプッシュされてる。


 や。GMにはいつも世話になっているから、頼みくらいは聞くけどさ。

 そーやって張り切りすぎるから、演算が足りなくなるんだぞ?


 ちょっと落ち着けと促すにも、GMの知識バラマキ工作はコスパ以上の成果がある。

 オレらは日本で撹拌世界を履修してきたから、甲殻人や石人と出会っても【怪しげな輩め!】的な、一瞬即発がなかったからして。


 蜥蜴の人らとかも気はいいけど、厳ついもんな。

 他の人種への慣れって大事だ。



 閑話休題。


 ゲームの細かいところはナイショにされてるので、体験するのを楽しみにしておく。


 リアル事情の進捗はというと、東横が駅で繋がったこと。それがまず第一だ。

 後は連鎖で繋がってくる。

 

 移動がゼロ距離になったので、ダンジョンタワー攻略の事前調査も始まった。

 GMが増えたこともある。

 予定地に探査型大型中継器を打ち込み始めたので、日ホプ間の情報伝達量が格段に増えた。

 テレビ電話はまだ無理だけど、録画なら届けられますよとのことなので、漂流者及び家族親戚友人一同に朗報だ。


 余談だけど、この情報伝達量拡大の恩恵を受けて、地球側に取り残されていた現行アバターたちのデータ群を送ってもらえた。

 ゲーム配信再開になんとか間に合った幸運なプレイヤーたちもいる。


 学生アバターだからと身長体重年齢を縮められた茉莉花くんなんて、ジャスミンと写真を並べたらビフォーアフターをやれるくらいだったじゃん?

 繊細な美少年とゴージャスムキムキマッチョでさ。

 実はあれって詳細なデータが手に入らなかったからの苦肉の策だったらしいんだよ。

 スキルの熟練度とか、経験値の計算とか、細かい情報が届いてなかった部分とかは、プラス方向でかなりガバをやってたそう。

 

 目ぼしいニュースはそんなとこだ。

 後は細かな詳細がチョロチョロとだ。


 物資の流通が確立した時点で、ひとり取り残されていたエドマエのGMもゲームのメンテに入っていたり、そーいう些事だ。

 新たに建設中の駅の情報もここかな。

 東横を繋げるべく、ダンマス一行で、河西の南方面から弧を描くルートを遠征してきた。

 あえて遠回りしたのは山中都市に配慮した形だ。

 ご隠居が山中都市側のテリトリーとして見なしている範囲を把握してたので、そこを大きく避けている。


 実際のところ河西は、この見なし領域にギリギリのところで引っ掛かっているような、ないような微妙な範囲だ。

 実効支配こそやれてないけど、テリトリーの側なんで、そこに入植されるのはちょっと……ってゆうモニョる位置らしい。

 現在の立ち位置からすると考えられないかもしれないが、東西の緊張が上手く緩和した100年後なんかだと河西は、山中都市側に返還されてる可能性が高い場所だ。



 エドマエまでの道行きで、山岳渓谷ルートを踏破して。

 初めて他人の苦労を知ったよな。身に染みた。


 妖精さんの庭でビバーク出来たとはいえ、幸たちは、よくこの天険を越えて来た。滑落も、落石も怖い。


 道なき山を登るなら、真実、『念動』は人権スキルだ。


 山だけでも強敵なのに、魔物の襲来がまたキツい。

 過酷な世界に生きている魔物たち、特に個人行動を旨とするタイプはヒリついている。

 管理ダンジョンに招聘される魔物はその点、無垢なお坊っちゃまだ。


 肉体的に非常にタフなホプさんたちのフォローがなければ、オレらも悲惨なことになっていた。

 腹ペコじゃないホプさんらほど、頼もしい味方はない。

 ホプさんらって燃費が悪いね。

 移動中も各班ごと順繰りに、行動食をモシャモシャしていた。

 顎の強い甲殻人が柔らかい食べ物も好んでいるのって、消化のしやすさからだと思う。



 地図読みが上手い人には、なんでこんなに魔物が闊歩している危険なルートを選んで通るんだって、訝しまれるかもしれない。


 だけど管理ダンジョンや駅は、地脈上に打ち込むものだ。

 仕方ないっちゃ、仕方ないのだ。

 エネルギーの強い場所だから、野良ダンジョンが生えやすいし、その野良を放置してれば魔物が外に出てきてしまう。


 そうやって魔物と地形の両輪で人を殺しに来ている土地柄だ。駅も戦城と化すそうだ。

 語弊ではない。

 堀や跳ね橋、石垣に守られるそんな城が駅舎として造られてしまうとのこと。


 山の上に聳える城は、建造中ながらも一見の価値があるかもしれない。

 ただし、ガチに使われる戦城だ。観光にはお勧めしない。


 門の保全のために、オレも急遽外堀を掘るのには参加したけど、お堀って景観のためのものじゃないんだな。実用品だ。そう実感させられた。


 アレ、めっちゃ魔物が落ちてくる。

 同じく堀の内で作業しているホプさんも【キャー!】と黄色い悲鳴を上げていた。

 一瞬驚いただけで、その後素手で殴り倒していたけれどさ。


 城の駅が完成するまでは、昼夜を問わず軍隊が駅の周囲で陣を張ることになる。

 物資の搬入や人員の入れ替えなどに、駅の利用を前提としている力業だ。

 数を集められるなら、それが一番強くある。


 こういう無茶を通さなければ周辺の魔物を平らげるだけで、数年がかりの事業になっていた。

 峻厳な山の谷間なんて、蠱毒の壺だ。

 城の駅が完成したら本格的に、ひしめく魔物を削る作業に入る。


 それを相手にするのはバイト戦士だ。

 まだ城は完成してないというのに、元気な中高年層が第2の人生を歩むべく、スリリングな新天地を求めて移住しつつある。

 そんな彼らは審査を通った元軍人だ。

 順当に駅防衛の戦力としてカウントされる。


 【移住者は天下りを利用して、バイト戦士として駐留させます】


 って、ホープランプ側からそのプランを提案されたんだけどさ。


 でも、これで人を集めるのは難しいと思うじゃん?

 なんで定員があっという間に埋まったんだろ?

 甲殻人の中高年って、ワイルドだな???


 天下りのバイト戦士って言葉遊びじゃなくてそのままだ。

 退役後の余生先にしては危険過ぎる。


 不満じゃないか疑問というか、騙されて連れてこられたんじゃないかと不安になる。

 なので駅守に入居してきた人たちに少し話を聞いてみた。


 なんでも森暮らしは憧れているけど、ちょっとした買い物をするのにも1日、2日に掛かりになるのは、都会暮らしに慣らされた身にはハードルが高い。

 しかし駅があれば話は別。

 体を動かさないとボケるので、そこそこに森歩きが出来て、退屈しないバイト先のある城の駅暮しは、ある種の理想の老後とのことだ。

 国に騙されたおじいちゃん、おばあちゃんはいなかったよ。



 それと河西ダンジョンより南にも、もう1組、海側に河渡しの駅も通してある。

 海西駅、海東駅は血涙河の河口、海側の目立たない場所だ。

 ヨコハマから城の駅を経てエドマエに繋がる駅は、こちらの海辺路線になる。


 河西ダンジョン駅は延線するのをストップし、東ホープランプの出島として存在を残すことになった。山中都市との交流の場だ。


 なので土地の守護のため、ダンジョンウォーも進行している。

 オレが今日、河西に来たのはこのためだ。

 まだ先は長い。現在は5階おきに45階までのエレベーターを通してある。


 この1月余りで河西は、超SUMOUのメッカとしてホープランプに定着した。

 捕虜の交換を名目とした相撲の興業は、ある意味、成功しつつある。

 時事の関心の高さを示すように、報道が特設チャンネルを設けたくらいだ。


 彼らは勝った選手にも、負けた選手にもインタビューをする。

 謎の山中都市に住む人間がスポーツ報道の枠組みでカメラにチラチラ映ろうものなら、そういうことにもなるだろう。

 たぶん、そう。



「それでは、お手数をお掛けしました」

 エレベーターの階層を更新してきた帰り道。

 夏草少佐の後任の鴨羽大尉に警護されて河西ダンジョンから出た矢先だ。挨拶と被るように太鼓の音が聞こえてくる。

 取り組み終了後の跳ね太鼓だ。


「お互いにな。大尉はこの後も河西だろう?」

 オレの現在の帰るべきホームタウンはヨコハマだが、そのうちエドマエに移ることになる。

 大尉はオレを送ったら、河西までとんぼ返りだ。


「はい、いいえ。御一緒させていただくのは幸甚ですので」

 鴨羽大尉は言動にスキがなくてエリート臭のする人だ。

 きっとオレが、管理ダンジョン内に隔離されるまで目を離すなって言われてるんだろーなー。

 お疲れさまだ。



「座布団っていつ投げていいんだ?」

「いい勝負の時は投げちゃダメだってよ」

「今はあんまり投げないらしいですよ、座布団って」

「そんなー」

「ええ、投げてみたかった!」


 本日最後の取り組みで名勝負があったらしく、その熱気がまだ残るような河西を歩くと、甲殻人たちは本気で相撲を楽しんでいるようだ。つい首を傾げてしまう。


 相撲興業は建前だと思ったんだけどなあ。


 最近の取り組みは、甲殻人の行司もポップしている。

 このままだとホープランプ相撲の新力士発掘は、河西場所からだと定着してしまいそうな勢いだ。



 ダンジョンウォー45階の帰り道だ。一時は中断していた河西への民間冒険者の渡りも解禁された。

 深層へアタックしている民間冒険者の数も増えたが、それ以上に青空競技場への来訪者も増えている。

 もう、山中都市側の人間も河西では珍しくない。


 【現代のあいつらは話しかけても、殺しにこないらしいぞ。いきなりは】


 そう判明してからは早かったように思う。

 先ず河西やってきたのは、捕虜の家族や親戚たちの一部だ。


 いや、どんな凶賊だと思われていたんだ東ホープランプ。


 日本人たちのそんな生ぬるい表情を見て、気の利く鴨羽大尉が教えてくれたが羅刹王の登場以前なら、山中都市側の反応も順当らしかった。

 情報の断絶ぇ。

 東のホプさんが、揃って頭を抱えていた。

 

 なんでも他所者に自分の都市の近くで出会ったなら、本気のチェストを入れるのが、当時では穏当な部類の作法だったらしい。


 知らぬものは怪し。なので、試す。


 ボコボコにして、運良く生き残ってたら話を聞こうみたいなアトモスフィア。

 まごうことなき凶賊でしたわ、東ホープランプ。 疑心暗鬼の末法過ぎる。

 妖精さんがごっそり狩られた背景はこれか。


 現代に生まれられて良かったよな、オレら。

 どの民族にも忌まわしき暗黒時代はある。



 山中都市側の甲殻人は高地住まいのせいか、身体能力が取りわけて高い。

 相撲が面白いのは、恵まれた体の造りで勝つ者や、そんな強者が小技にあっさり引っ掛かるどんでん返しがあることだ。


 相撲に勝ち続けて序の口になれた西の者は褒美の捕虜を連れて一旦帰るが、そうやって力士になれた者は本場所までの稽古したいと、きちんと河西に戻ってくるのが甲殻人の素直なところだ。

 勝ち逃げの権利も報奨のひとつとして与えられているから、帰ったままでもいいのにな。


 そうして勝つ者がいれば、負けて力士になれなかった家族らもいる。


 そんな人たちは保釈金という外貨を稼ぐべく、河西ダンジョンで働き始めた。

 試合前、試合後の相撲コミュが生きた形だ。


 そしてそうした一連の流れを、敏にキャッチするのが、命知らずな若者層だ。


 真っ当な働き口があるのならオレもオレもと、彼らは河西にやってきている。

 甲殻人は成人が15だ。だからか成人したてのこの層は、とりわけ無謀でフットワークが軽い。

 真実、好奇心の生き物だ。

 広く情報を集めたい、東ホープランプのお偉いさんたちの思うつぼだ。


 危険な薬物などを持ち込んだりしない限り、取り締まられないと知った、彼らは堂々と不法ワーキングホリデーをしている。

 この集団の中には、きっとスパイも混じっているんじゃなかろうか。


 十数年後はこの東西の冷戦を題材にしたスパイ映画が作られたりな。

 そう考えるだけで、ワクワクしてくる。


 現在の河西はそんな、賑々しくも混沌とした浮かれるような熱がある。

 こうしてエレベーター階層を更新しにくるたびに、不法建造物が増えているようだ。


 遠目にもごちゃごちゃとカラフルな小屋が建てられている。道を占拠し、開かれているのは物々交換をしたり、相手の貨幣を買ったりする闇市だ。


 ………ところでだか、ネジの1本もあれば相手の文明度が把握できるって話は、本当だろうか。


 逞しいことに、野外生活をしている若者も目立つ。

 一旗上げてやろうと、その目は野心が滲んでいる。



 まだ政治的な交渉は夜明け前だ。なにも生まれていないし、始まっていない。

 しかし民間人の交流という潮が、河西にはヒタヒタと打ち寄せて来ている。


 保守派でなくても、それを嫌がる者もいるだろう。

 変化するのは怖いものだ。

 まして列強の意のままに、不本意な開国を迫られれば歪みや反発を生むことになる。

 それらは日本人なら義務教育で習っていること。



 ただし民意は変わるものだ。


 この東西の隔たりが、お互いを守るものではなく、自国民の意に反するベルリンの壁になる日がくるとしたら。

 その境界は、いつか壊れるものに化ける。


 交流を重ねることで、変わるものもあるだろう。

 偉大なるローマも、栄華を誇った藤原氏も永遠にはなれなかった。


 オレたちは今、時代の潮目に居るのかもしれないな。





 コメント、リアクション、評価、誤字報告等、感謝です。



 そんなわけでGMの大規模メンテが入ったので時間を1月余り飛ばします。

 政府ちゃん~は一応VRMMOものですので!

 まあ、一応は。


 誘拐編が長くなりましたが、次回より、しれっとゲームに戻ります。


 とはいえ、これからゆっくり夏休みを頂いてから当作品の改稿作業をしてきます。

 そしてその改稿中は同世界軸のスピンオフを不定期連載でやろうかと目論んでいます。


 改稿が終わりましたら、本編にも戻ってきます。そうしたらまた、お付き合いをお願いしますね。




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― 新着の感想 ―
読み直してきました! 一気に読むと「ああ、これはこうなってたのね?」ってところもあって、やっぱり整理しやすいですね。 前回コメントしたときには何故かすっぽり忘れていた疑問を思い出したんですが、結局流士…
防御固めて調略主軸になったのは、早急に武力侵攻しなきゃならん理由が消えたからですわな。マザーとGMのフリーズというリスクで作戦が縛られてるとも言いますが
山中都市を攻め込んで支配するのではなく、民の交流から始めるあたり、穏当かつ真っ当ですね。 最初に襲われた時は感情的になったものですが、一通り事態が落ち着いてみれば、こういうゆるやかな変化は順当かと思え…
感想一覧
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