256 初夏の前庭
朝課の訓練をなし終えて。
伺ったホープランプの空模様は、今日も降ったり止んだりだ。
こうも天気がぐずつくと、河の機嫌伺いは慎重に計るべきとの論調だ。
駅の開通予定は、足踏みが続く。
「只今、河川の上域を探査しています」
夏草少佐報告だ。
どうもでかくて高低差が緩く、長ーい大河ともなれば、雨の降った数日後に増水することもあるそうだ。
大陸はスケールが違うよな。日本は長くても細いから、そういうことを聞くとへー!となってしまう。
仕方がないので自宅に戻る。
繰り返す延期のせいで、護衛メンバーの勤務表もぐちゃぐちゃだ。
「おはやいお帰りでしたー」
「外は雨もし?
だったら菜の物と豆の収穫をしてるもし」
「そーゆーことだ」
『体内倉庫』にINしていたトウヒさんとハジメさんを解放する。
ハジメさんはいそいそと畑仕事に戻り、トウヒさんはオレと平賀さんの着ていたコートを受け取ると、丁寧にブラシを掛け始める。
オレの靴がいつも綺麗なのは、トウヒさんのお陰だ。
彼らの口にひとつずつ、遠足のお供にするつもりだったモリーのキャンディを押し込んでおく。
「元気出ますー」
「甘し、甘し。お砂糖は幸せもし」
背景にまるで小花が飛ぶかのよう。オレの妖精さんがこんなに可愛い。
「今日はもうお休みにしちゃう?」
平賀さんの提案も悪くはないけど、さて。どうしようか。
また1日、時間が空いてしまったぞ、っと。
ステータスからガントチャートを立ち上げて呻吟だ。
ヨコハマダンジョンの住居フロアは住民登録がされている。
自宅でお篭りさまになるのが護衛的には楽なんだろうけど、読書や動画の視聴なんかのインドアな娯楽は、仕事中のながら作業やMP回復待ちのお供で足りてるんだよな。
野良ダンジョンに連れていけとねだるにも、『調律』待ちの石がうんぎりする程残っている。
在庫をある程度は消化しないと、この辺の我が儘は言い出し辛い。
ううむ。……若葉の迷宮の手入れをしようか?
そうだな。
前庭の造営に着手するのは帰ってきてからのつもりだったが、図面等の下準備は終わっている。前倒しだ。
「あー…っと、今日は若葉の迷宮をカスタムします。
トウヒさん。受付に臨時アップデート入れるので夕方目安まで営業止めてくださいって、連絡をお願い」
「お任せあれー」
「作業はこのまま自宅で?」
「はい、平賀さん。午前中には石の書き込みを終わらせるんで、午後一合わせでテスト要請をお願いしても?」
馬場さんのパーティあたりが、確か休日待機だったはず。
ヨコハマダンジョン所属のお役人ちゃんは50人程度。
そして護衛訓練を受けているのは、その半分なのでヘビロテだ。
だから新ダンジョンのテストは護衛以外の面子に頼んでいる。
「いつもと同じね。
了解、空いているメンバーを集めておくわ。
他にすることはあるかしら」
「ないです」
気持ち良く出掛けるつもりで昨日は座り仕事を頑張った。今日はリッチの声を聞きたくないかなー。
さて、と椅子に座り、気合いを入れた。
取り出した雫石は『融合』を重ね、後は書き込みをするだけに設えてある。
石を【覗き】込み、瑕疵はないか最終確認をしてから机上の台座にそっと置く。
良くも悪くも多くの反応を引き出したのが【若葉の迷宮】だ。
王さま部屋に、誰かが置いた記帳台。【冒険者の記録】には、嘆きや、絶叫、次回の抱負やらが書き込まれている。
そもそも隷下のダンジョンに、反応があるのはありがたいことだ。
文句でもコメントが付くなら、それだけ興味を集めているということで、無反応が一番困る。
……産業用のダンジョンとか、運用していても殆んど意見が上がってこないもんなー。
ここが使い勝手が悪いとか、あの魔物がいると便利とか、要望を出してくれてもいいのにさ。
お国柄、日本人は【合わない】と思ったらそのまま無言で立ち去るもの。
意見が出るのは御の字だ。
時々覗く掲示板の情報は、毒気は控えめだかノリと酔狂成分は強いから、オレは噂話程度の活用をしている。
不特定多数の意見を文字で読めるのは、なんだかんだで楽しいよな。信憑性は薄くても。
オレがオレがと、そんな要望が出てこないのはクレーマーにならないか、自重してしまうはにかみ屋さんが多いのだろうか。ヨコハマダンジョン在住者。
それとも。……オレの周り、いつもでかい護衛の兄さん、おっさんが取り囲んでいるから、言いにくいのかもしれないなあ。
後ろ手に手を組み、無言で突っ立っている時は小松さんですら凛々しいもんな。
若葉の迷宮に新しく挿入するのは0階・前庭だ。
0階のキーワードは、レジャー&トレッキング。
アウトドア入門ダンジョンである。
若葉の迷宮は、冒険の始まりに役立つように造ってはある。
そのつもりだ。
だがしかし。オレだって、体にいいと分かっていてもゴーヤ氏とはいまいち仲良くなれていない。
いや、わかっているんだ。
彼を慕うものは大勢いると!
オレの舌は子どもだから、彼の大人の魅力を感じ取れない。それだけで。
うん。言い訳しても、苦手なものは苦手だ。
ゴーヤにチャンプルされようものならば。
まあ、一年一度くらいは耐えてみせる。
残念だが、これからが愉しくなる2階開通は一旦ステイだ。
若葉の迷宮は、今は難しいだけで嫌われてはないから解決法はある。
みんなー。体力錬成はっじめるよー!
足を作って行こうぜー!
そんなわけで0階・前庭は、超シンプル。宝箱もボスも罠もなしである。
スタンプラリーのように点在する魔物部屋に入らなければ、自然公園の山林コースだ。
そして一応は教導用ダンジョン。その前庭だ。
必然、便利な収穫物回収井戸やトイレ施設もなしである。
訓練だからね。仕方ないね。
『体内倉庫』がない人たちは、魔物部屋に寄り道する度に増えていく荷物を背負って山道を歩くことになるのだ。
雫石を手に持ち、『CAD』を走らせる。
保存ファイルから『加工』にリンクを重ね、それをガイドに石へ世界を書き込んでていく。
平地に山を隆起させ、道をひく。道を塞ぐ木を抜き取り、移植していた果樹の位置を移動させる。
予め認めていたデータを元に、雫石に指示を与える作業だ。
道は山道。
大きな観光地にあるような、遊歩道ではあらず。
獣道に目印になる置き石を敷いた程度の野趣あるものだ。
凸凹のある山道は平地と歩く手妻が違う。野良ダンジョンに挑むなら、山と付き合う歩き方を知っていて損はない。
北側、切り通しの崖には石橋を架ける。
その崖下に見える通路は行き止まりで、奧は魔物部屋を繋げる予定だ。
前庭の8割は見通しの悪い森林部だ。
森には滝の景勝をひとつ。泉もひとつ。糸のように細い川は数本流す。
高低差のある小路は蛇行して別れ、また繋げる。
アリの巣程度、迷路要素のフレーバーだ。
この前庭の地図を書いてカウンターに提出すれば、出来映えにより冒険者ランクの昇段点も加算される。それらは既にギルドの合意を得ている。
……いいのかな。教材がこんなテキトーな造りのダンジョンで。
でも思えば、オレも大荷物背負って、今造ったようなアップダウンある山道を歩いた経験はなかったか。
いや、あるけど魔物と戦いながらのソレはなかった。
今となっては『体内倉庫』に頼りきりだ。
……一度、試しに荷物を背負ってこのダンジョンを歩いてみようか。
気分転換に歩くには、丁度良さそうだ。
造りかけのダンジョンを目を瞑って【覗く】。
初夏の森は、緑が煌めく。
あれ?
改めてダンジョンを組み立てていると、当初に想定していたより悪くない気がしてきたぞ?
オレの冒険者としてのスタイルは一点特化型の攻撃魔法使いにて、インフラ屋かつポーターだ。
ヒーラーとしてはオマケのオマケ。
魔力が多いので、役に立つこともあるかもですねといった程度。
健康な若い男なのに悲しいかな、前衛としては求められていない。
己の趣味とやりたいことはさておき。パーティでの作業比重が重いのはインフラ屋だ。
なにせ大器晩成で、育成効率の悪さもピカイチなのがダンジョンマスター。
その分、大勢で野良ダンジョンに深く潜れば潜るほど、役に立てる自信がある。
脇芽の雫石は回収するわ、勝手にエレベーターを造るわでやりたい放題。
ダンジョンマスターは野良ダンジョンの天敵だ。
ちなみに水玉工場と家庭菜園、ホテルを携えて攻略参加も強いけど、こちらは妖精さんのリクルートを成功すれば代打可能である。
妖精さんは人の仕事を奪うのだ。
正直、とてもありがたい。
冒険者よ、妖精さんに感謝したまえ。
安全なトイレもなしで野良ダンジョンの攻略は、前世でやったけど……うん。
ゲームなのにここまでやるのか!って不満タラタラだったな。あの当時は。
リアルだとまだ半年も経ってないとか、体感狂う。
にゅうるり。
魔物部屋の入り口脇に、素朴な形の石灯籠を生み出す。
石橋と同じく、地図を見易くするチェックポイントなだけだ。
罠はない。
こーいうモニュメントを作っておくと、地図が読みやすくなりますよ。そんな例だ。
もちろんダンジョンリセットが頻繁に起こるタイプの野良ダンジョンなら、ただの目印はきえてしまう。
そんな場合はモニュメントに魔道具を仕込んでおくべきだ。
こういった石灯籠なら『ライト』かな。
『ライト』を内包している魔石は多いので、魔道具のコスパもいい。
そうすると、そこだけリセットされないのでお勧めだ。
……雫石で世界を造り変える。その体感的に、ダンジョンマスターは本来エンドコンテンツだ。
2周3周、あるいはもっと転生を重ねた大魔法使いが、満を持して手を伸ばすようなカテゴリである。
撹拌世界でもリアルでも常識になっていた、ダンジョンマスターを護衛で固めて育てる姫プ。
これって邪道だ。
野良ダンジョンに潜るのを求められるのに、咄嗟の勘が働かない、他のものにおんぶにだっこ。
戦場に居るのにその勘のない魔法使いは欠陥品、とは言い過ぎでも問題だ。
その点リュアルテくんもオレも、改善の余地が多い。
全力で走って逃げられるようになったことすら最近だ。
とはいえ、忘れてはならないのが膨大な経験値を注ぎ込まれて、育ててもらって今があるということ。
目には目を。恩には恩を。
そして新人の育成は冒険者の嗜みだ。
オレは人より丹念に腕を引いて育ててもらったのだ。だから多くを返すべき。
つまりオレは、舗装されてない土地を歩くのすら珍しかった都会暮しの一般人が、歴戦の冒険者として磨かれていくその姿をだ。
後方ダンジョンマスター顔で【奴らはワシが育てた】と、ドヤれる機会を得たわけだな?
…………うむ。悪くはないな。
前庭はその一歩だ。
メインコースを造り終えたところで、内心、悦に入る。
そうしていたらステータスの新着見出しが赤文字で【大事なお知らせ!】をポップした。
【若葉の迷宮は改装のため、夕方まで休業致します】
送信グループ名はヨコハマダンジョン冒険者ギルド。
さっきトウヒさんに頼んだやつだ。
そんでもってその後にすぐだ。
作業の合間。カロリー補給でジュースをズゴーと吸い上げていたら、彩月ちゃんから連絡が入る。
なんぞ?
ぺぺろん堂の開店準備で忙しい、この時間に文が届くのは珍しい。
【60キロの米俵を2つ担いで余裕な平賀さんたちは、麗しのスーパーレディです。
そして撹拌世界の一般人と我々を、一緒にしてもいけません。
さあ、元気に声を出して上記の言葉をリピートアフタミー!】
すまんて。
現役中学生の彩月ちゃんは檀さんガードで、若葉の迷宮の入場は禁止されてしまっている。
保護者としては自分が庇う余裕の持てないダンジョンに、姪っ子を連れ込むのはもっての他なんだとさ。
彩月ちゃんはムーとなっても【…未成年だしね。檀叔父さんの心配に反発するほど子どもじゃないし!】と、従っていたが思うところはあった模様。
事実、仲良し叔父姪はヨコハマダンジョンの運動場にて、夜のジョギングを始めていた。
檀さんは魚の腐った目で参加してたから、言い出しっぺは彩月ちゃんなんだろーなー。
檀さん、うちの従姉さんたちと同じく走るの嫌いって聞いているのに。
なんだかんだで若葉の迷宮自体は野良ダンジョンの事前教導用だから、本階層のハードルは落とせない。
だからこその前庭追加だ。
【少し運動が苦手な、普通の女の子】である彩月ちゃんは前庭の構想を練るのに協力してもらった。
だからこその釘刺しだろう。
話を聞き取りすると、オレの上の妹とかはインドアな文学女子だと信じていたが、体育会系の部活をしてない一般女子的には体力のあるタイプらしい。
駅まで片道30分自転車通学は、そこそこの運動量なんだってさ。
そして都会暮らしの小野寺ファミリーと、どこに出るにも車を使う、うちのとーさんの体力はどんぐりの背比べっぽい。
確かにそれは、体力錬成から始めたいよな!
【流士さんはサービス精神つよつよだから、うっかり張り切りすぎないでね?】
そんな副音声が聞こえてくる文面だ。
大丈夫。アドリブはしない。ハハハ、調子に乗って、そんなまさか。
前庭は彩月ちゃんも活動できるダンジョンになるから、要求された宣言はしなくていいよな?
平賀さん、今日の護衛で部屋に居るし気まずいわ。
……。
護衛メンバーのスケジュールは部外秘だ。
なのにピンポイントで名指ししてくるあたり彩月ちゃん、時々勘が鋭くて怖ぁ。
一瞬ビビったが、気を取り直して作業を続ける。
0階・前庭は高低差のある道すがら、ベリーを『採取』したり、小部屋に隔離してある川の浅瀬に入って魚を掴み取りしたり、ザリガニを釣ったり、夜には蛍狩りや、焚き火を起こす体験をしたり。
そんな感じのアクティビティだ。
切り通し崖の奥、暗がりに、魔物部屋の創造をしていく。
まず、あちらと、こちら。魔物が通れない境界を引いた。
異界の入り口を示すには、ダンジョンオブジェクトの楓と山藤を生やして木のトンネルにする。
破壊不能。草木の形で、手触りのダンジョン壁みたいなものだ。
楓の新緑の合間に咲く山藤は、古式ゆかしい品がある。
しかし一年中途切れず咲く、匂いのない花や、枯れもしない広葉樹。それらは美しくも不気味なものだ。
ダンジョンらしくていいと思う。
そして、前庭には昼夜をつける。
普段使うことはない『夜目』やら『ライト』やらを試せるわけだな。
この部屋に選んだのは、琥珀蛍。
夜間の狩り要員としての、招来だ。露草の群生地を設える。
一面の露草もダンジョンオブジェクトだ。
露草はうちの近所で咲いていたのを素材データに落とし込んでコピペしたので、観察すれば全く同じ形をした草も見つけられるはずだ。
夜の草むらは、暗がりに足が取られて厄介なので、それを体験してもらおう。
目を瞑れば、繁る露草を幻視する。
群れ咲く花は小さく青い。
踏まれても平気な偽物の花なりに、朝に咲いて昼には萎んでしまう形状変化をつけたから、この部屋を訪れるなら朝か夜だ。
蛍の幼虫は水中に棲んでいて肉食だが、成虫は水しか飲まないので脅威度は低い。
そして『ライト』を点滅させれば寄ってくる。
空飛ぶ魔物の割りに、狩る難度はイージーだ。
こいつは他の虫に食べられないよう進化していて、除虫成分を含む外殼を燃やすといい香りの虫除けになる。
撹拌世界的には広く知られた除虫剤の材料だ。
除虫剤の素材なら人食い草も手頃なところだとしても、モサモサ増えるような魔物をホームダンジョンに生やしたくないダンマス心を察して欲しい。
おのれ雌雄同体。なのに根っ子でも増えるとか貴様ら悪夢か。
オレ的に人食い草は、スギナや鉄道草の分類だ。
これからホープランプは暖かい季節を迎えるので導入しておく。
HPがあれば虫刺されは防げるが、細かい虫は生活のストレスだ。
ヨコハマダンジョンの三の郭は以前の計画から拡張している。
どどんと水源を造ったら、農家が釣れたのだ。
只今人間重機たちが地下街を含め工事中だ。
完成したら、外に出る機会も増えるだろう。
ただ問題はこの蛍。琥珀で覆われていてもビジュアルが虫々しい上に、カラスサイズの大きさである。
オレは、蛍は嫌いじゃない。
でも嫌な人は嫌なんだろうな。大きな虫って。
マイルドなところから虫の魔物も出していこうと思う。
そう、虫と相対する覚悟もなしに、野良ダンジョンでいきなり茶羽の悪魔な魔物に遭遇すると心を病むからな……。
正直あいつらは本体どころが魔石すら持って帰りたくない。
焼却していい魔物の群れなら、『バーニング』は正義である。前にはよく世話になった。
さて、次の部屋を造ろう。
こちらは岩肌に流れる滝の横から入れるようにする。
入り口は蔓草垂れる岩のアーチだ。
清流を招き、石を砕いて浅瀬を造る。
岸は岩のままの形を生かして、水底の石は角を削る。
雫石に世界観を書き込んでいく。
うんうん、いい感じでは?
沢の部屋に置くのは、七星ザリガニだ。
こちらの狩りは、竿釣り推奨。
七星ザリガニはハサミ持ちな魔物入門で、噛みつき亀程度の咬合力がある。
甲殻人ではない冒険者は、竿と同じく頑丈な長靴と手袋を用意してもらいたい。
微弱ながら『水流操作』を持っているので、濡れることはお覚悟あれ。だ。
特筆するのは石にもスキルが残っていること。
こいつの魔石は小型ポンプの規格的な材料として撹拌世界に普及している。マザーが興味を示していたので提供だ。
清流の部屋は、滝が落ちてくるほとりから岩場を登った上流にもうひとつ、別室を造る。
ザリガニと同じ部屋だと食われるので部屋は分ける。
こちらはザリガニ部屋と反対に素手と素足を浸けられる、そんな川辺を形成した。
せせらぎに泳ぐは、腹の膨れたスグリ鮎。
川は膝までの水位がある。魚を素手で捕まえるべく、追いかけ回してもらおうか。
体力錬成の一環だ。
そして貫禄のセクシー大根や、石抱き白菜、エトセトラ。
地味に重い荷物になる魔物が一匹ずつ排出される小ホールを、道なりに点々と配置していく。
野菜を食え。
前庭に置く魔物は、体力が心許ない純魔法使いビルダーでも狩りやすいラインナップだ。
ただし荷物になるか、捕まえるのに体力を使うか、そういう系統で固めてある。
…………なんかこう。壁や地面に使う素材のデータを、手近な所で集めたからってこともあるけど。いざ造ってみたらこの前庭、うちの近所の沢周りっぽくなってしまった。
めっちゃ大自然で気まずいな。アスファルトのアの字もない。
流石にうちの周りはここまで自然じゃない………ようなそうであるような。
………竹やぶは管理の手が入っているから人工物判断でいいよな?
まあ、いいか。
地層が見える切通しの崖とか、木のトンネルとか無意味に好きだったよなあ。
子どもの頃、探検ごっこをした道の先に、こんなダンジョンがあったらきっと入り浸っていた。
かーさんも、見るからに旨そうな鮎だったら湯船に放ってそのまま忘れてしまっても、許してくれただろう。
そうだよな。
今ならわかる。同じ泳ぐ生き物でも、湯船におたまじゃくしは許されなかった。
コメント、いいね、評価、誤字報告等、感謝です。
おたまじゃくし事件は、風呂掃除をしようとした語り手の父上さまが腰を抜かしたので母上さまに絞められました。