表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/318

209 毅き甲殻のホープランプ



 ハッピーではないニューイヤー1月1日にして、遭難2日目。


 現地政府の意向を受けた救援部隊が、到着した。

 1日時間があいたのは、翻訳システムの構築待ちの時間である。


【すいません。演算足りなくて、あっぷあっぷで!】

 功労者はそうのたまうが、扱うものは翻訳だ。充分過ぎるほどに早い。


 世間さまにロケットバレして以降、GMがあらゆる企業から【ご一緒に、是非ともお仕事したいものですね】とラブコールされ続けられているはずだ。


 翻訳待ちの救助側も、こちらに洒落にならん怪我人でも出ていたら、強硬突入してくれただろう。

 しかしオレらが元気だったので、会話が出来るようになるまでは準備にリソースを回してくれていた。

 具体的には、石壁の材料などを運ぶ道の整備だ。


 そのせいか今朝がたの東の空には、慌てふためく鳥が舞っていた。寝床の木々を切り倒されて、苦情の鳴き声を上げていた。



 しかしこうして漂流してみるとだ。

 見知らぬ世界に遭難しといてそこまで切羽つまる状況じゃないのは、かなり凄いのではなかろうか。


 災害物資の備蓄のある塔ごと落ちたこともあるが、それがなくても7人中4人は『体内倉庫』持ち。

 そしてその全員が当座の生活用品に、プロ仕様の防災グッズを持ち込んでいる。


 GMも鼻が高かろう。撹拌世界の薫陶が効いとるな。うん。


 八面六臂の活躍をしてくれたGMには、感謝の気持ちを伝えるべく、そっと精石をラーメンどんぶりに入れて貢いでおく。

 精石はどんなにあっても喜んでくれるんで、間違いなくてとてもいい。


 や、だって『精製』、『圧縮』、『融合』をフルでかけると精石は柔らかくなるんで、入れ物がいるからさ?

 高純度圧縮融合精石の規格って1000ミリリットル単位だし、ラーメンどんぶりにぴったりなサイズ感だ。だから、つい。

 プラバケツよりはいいかなあ、と。


 ちなみに渡したこの石は、通信網を構築するべく仕込んでくれるんだって。

 礼が礼になってない気がする。

 GMは働き者の上、気立てがいいよな。ゲーム中は邪悪な企みも嗜むけど。





 さて、緊張の初対面となる。


 ホープランプ人の第一印象は、【スーパーヒーロー】だ。

 大の大人が子どものために、紡ぐ現代のおとぎ話。

 誰しもの期待を背負ったヒーローは強く優しく、芯があり。

 普段の姿は情けなくとも、決戦の場では飛びきり格好良くなくちゃならない。

 特別仕様の装甲は、物語のシンボルだ。


 連絡を受け、名簿を貰ったのは24名。

 だけどそれ以上の迫力だった。


 美しい外骨格が、春のうららかな自然光に艶めいている。

 カワセミのような鮮やかな青。

 華やかなオレンジ。

 心浮き立つ太陽のイエロー。

 優雅たるシルバー。

 深淵の森のグリーン。


 色取り取りの生体甲殻に、頑丈そうな揃いの巻きスカート、飾り紐。豪華絢爛たる首飾り。


 ざざと規律正しく整列し、天上の青のネモフィラの群生の中で立ち止まる。

 『結界』を張るのぼりを一度高く掲げてから、地に突き刺す。

 その勇姿は演劇の一幕のようだ。

 重厚なマントを一斉に脱ぐ一連の動作は、文化を知らずとも察するもの。此方への敬意を表した儀礼である。


 外套を脱ぐと良くわかった。

 ホープランプ人の甲殻のフォルムは、有機的で複雑だ。そして個人個人の差が激しい。

 頭部だけでもヘルメットタイプに、口元を晒したハーフタイプ。大きな生体髪飾りを後頭部に着けてあるタイプと様々だ。

 甲殻に隠されがちな顔や肌の色も、インコの羽の色ほどに種々雑多だ。どこの国に似ているとも一概には区別がつかない。


 胴部や手足を覆う天然のプロテクター。

 それらは甲冑と、ニチアサヒーロー。ファンタジー因子を掛けて割らない、なのに典雅な種族デザインで。


 つまり、べらぼうに格好いい。

 ふぉおぉう、これはテンションがあがる……!



【ようこそおいでくださいました。異邦の方々。

 私共は皆さまの訪れを、歓迎いたします】


 りーりりりん。りりり。りぃん。

 響くのは秋の虫のような美しい音色だ。

 

 言葉の翻訳は、ステータスのスピーカー機能を介して其々の耳に届けられた。

 艶消しの深碧に、要所に入った桃紅色が映える。

 一際甲殻が立派な隊長さんの挨拶に、応えて広崎さんが前に出る。


「突然の来訪にも拘らず、快く歓迎してくださり、痛み入ります。

 何分、私共は偶発的に崩落に巻き込まれての漂流こと。

 皆さまのご厚意に感謝致します」

 広崎さんは言葉がなるべく翻訳に乗りやすいよう、センテンスを区切りはっきり喋る。


 翻訳が上手く伝わったのだろう。

 相手にほっとした空気が流れる。


 なんとなく親近感だ。

 文化圏の違う相手のコミュってさ、言葉が通じるかってそれが一番の不安材料だよな。


「皆さまの近くに置いてある机の上をご覧ください。

 連絡を差し上げた通り、『エア』と『免疫』の発動体を、先じて24揃え用意しました。

 一応、『洗浄』を掛けてはありますが、そちらでも一度掛けてからご笑納ください。

 脇のスーツケースは、お願いしてある届け物です」


【お気遣いかたじけなく。そして、確かにお預かりしました。

 『免疫』の効果は我らがマザーに伺いました。ありがたく使わせていただきます。


 我々は取り急ぎ皆さま用の簡易家屋の建造と、安全圏の確保を成したいと存じます。

 工事の音で五月蝿くなりますが、暫くはご容赦のほどを】

 部下の人がさっと『洗浄』を掛けて、半分を待機している別班に渡す。

 そっちの人らは残りの神奈川グループの応援に行く工兵部隊の交渉メンバーだろう。

 神奈川グループに急いで必要な発動体や、通信システムの補強材やらの非常物資を届けて貰えるよう、そちらに回るグループに道中の寄り道を頼んであった。


 24名中半分の12名。こちらの別班は同じく漂着地の安全圏をまず確保してから、道中のルートを造り、それから漂流者を伴い移動というプロセスになる。


 東京グループは更に場所が遠く、彼らも詳しい地図がないそうだ。しっかりと遠征準備を済ませてから、後発部隊が出発することになるらしい。


 遠地の地図がない。

 そのことだけで、彼らが限られた都市部に暮していることが読み取れる。

 少し前の撹拌世界の住人よろしく、一般人は街の外に出ない社会なのかもだ。


「感謝します。

 もし、よろしければ親交を深めるのに茶の一杯なりともどうでしょうか?

 無菌ルームを用意してあります」


【喜んで。私、夏草と、副官の涼風がお招きに与かります。

 ………しかし。やはり、あのゲートは管理ダンジョンなのですね。

 ゲートを野晒しにしてあるのは忍びなく。

 せめて屋根や床を敷いても良いでしょうか】


「恐れ入ります。何分手元不如意での急造ですので、杜撰な仕事でお恥ずかしい。

 右から代々コットン、水玉プール、歓談用無菌ルームになっています。

 私共のダンジョンマスターが、皆さまも使うかもしれないからと、これら3つのダンジョンは無菌室仕様に造りました。

 そちらの都合がよろしければお使いくださいと、伝言を預かっております。

 仕様書は今、アドレスにお送りします。

 お確かめの程を」

 広崎さんが順に手を向けて説明する。



 このダンジョンの解放は皆で相談した。


 GM曰く、代々コットンはマザーに提供されたホープランプの管理ダンジョン一覧に乗ってないから【ウケるんじゃないですかね?】とのことだ。


 人道から助けに来てくれるんだ。ここは便宜をはかっときたい。


 なにせ事前知識なんてありはしない、異文化との接触だ。

 異星、異界に漂着なんて、捕獲されたリトルグレイの写真が脳裏にチラく。

 暗黒SFや、闇深ファンタジー、ハリウッドだとろくなことにはならない導入だ。


 ロケットの祝福が根付いた文明で、本当に幸運だった…!


 GM判断によるこちらの文化成熟度は【良】。これは現代日本とほぼ同レベルだ。

 漂流してきた得体のしれない異世界人だからって、無闇やたらに排除されたりしない倫理成熟度だ。


 GMなんて、早速、彼らにモニュメントやゲート機器やら、ドカドカ注文してるんだもん。

 大きいものはゲーム塔のガワとかさ?


 リストを見て戦慄したね。

 これは国家じゃないと賄えないレベル。

 必要なのはわかるけど、遠慮のなさに冷や汗掻いた。



【    】

 おや。翻訳にはない言葉だな。

 ホープランプ人の発音は、頑張っても聞き取れない。

 たぶんこれ、可聴領域とかも違うんだろーな。


 個性的な容姿はまだしも直接言語のやり取りが不可能なのは、『異界撹拌』で異人種に慣れてなければ怯んだかもだ。


 ほら、姿だけならさ。

 凶相のアスターク教官や蜥蜴系種人類の先祖返りに比べたら余裕で親しみ易いだろ?

 オレも図太くなったもんだ。


 ………あちらの人がオレらの姿に異形を感じてないといいんだけど。

 これだけ違えば無理かなー。



 さて、ご挨拶だ。

 リアルでリュアルテくんモードになるのは、少しばかり恥ずかしいかな。


 広崎さんたち全員に偉そうにしていてくれと、猫被りを推奨されたんで、なにかしらの利点があるんだろう。


 社会人としてはペーペーなオレにだって初対面のハッタリは、大事だっていうのは分かる。

 態度や口調を調えるだけで、嘘はつかんでいいわけだし。


 でもなー。王侯貴族文化あるところでリュアルテくんロールを敢行するのはボロが出そうで今一不安だ。





 会談するにあたり改めて、注意しておきたい。


 品のある喋り方のコツは、あいうえおの母音をハッキリ発音すること。

 腹筋を意識し、背筋を伸ばして、口角を緩く上げること。

 喉奥は広げてややゆっくり、センテンスの間をとって話すこと。


 こちらのマナーは、異文化相手には通じるかわからんが、三千世界のロケット文化も流入している甲殻世界だ。

 歌う時に使っている『リズム』や『共鳴啌強化』もONにしておく。

 やらんよりはマシだろう。


「初めまして、お会いできて嬉しい。

 わたしは篠宮流士。ダンジョンマスターを奉職している。

 どうぞ、よしなに」

 伊東さんが引いてくれた椅子に座り、先に座っていたメンバーに挨拶をする。


 すると慌てたように立ち上がろうとするので、ゆったり手を振るジェスチャーでそのまま座って欲しいと手の動きで伝えてみた。

 通じるどうかの実験だったが、普通に座り直してくれる。


 代わりに為されたのは緊張したように、右手で左肩に拳を握って当てる仕草だ。

 これは挨拶なのか、謝意なのか。

 まだわからないが、悪いものではないだろうと推察する。


 ……咄嗟の動きでも静かだな。本物の甲冑のようにガチャガチャしない。


 軍装、しかも礼服っぽい彼らに比べ、オレはというと堂々たる普段着だ。

 服装は白シャツにネイビーのパンツというシンプルさだが、一応は妖精繭茸製のバトルドレスだ。モノはいい。はず。


 特別なお洒落着なんて、研究所暮らしをしていたオレのワードローブにあるわけがないんだよなー!


 三年間着倒した制服ならあるけれど、袖やら裾にちょこちょこ瑕疵アリ。

 違う文化圏のお人に会うというのに、礼服でございと着込むには難だ。

 昼休みに制服のままバスケをやるような高校生が、綺麗なままの制服で卒業できるわけがないと思わん?


 自身唯一無二の飾りといえば竜角くらいだ。

 角は透明な黄色の素地に、煌めく緑光がチラチラと散って、ファイアオパールのように華やかだ。


「隣の彼は広崎重悟。わたしの護衛をしてくれている」

 こちらはきちんとスーツを着ている。

 SP御用達のブラックスーツだ。

 広崎さんのそんな格好初めて見たが、よく鍛えた体に洋装はキマる。いいなー。

 やはり男の見栄えは筋肉が必須だ。


「よろしくお願いします」

 広崎さんが軽く頭を下げる。


「もう1人の彼は伊東保。広崎の部下だ」


「はじめまして!」

 伊東さんは、立ったまま敬礼した。

 ティーポットで淹れた紅茶の他に、ペットボトルのミネラルウォーターを供に置いていく。

 茶菓子は個別包装された工場生産の焼き菓子だ。出来るだけ一般的なものをチョイスしてある。

 遠慮せずに持ち帰って、検査して貰いたい。今後のためにも。

 水のボトルは食品アレルギー対策だ。


 この柿赤の絵付が鮮やかなティーセットはというとだな、実は伊東さんの私物品の提供である。

 お茶も飲めなくても楽しめるよう、茶葉は癖なく薫りの良いものを選んで貰った。


 伊東さんは茶道楽が高じて現代作家の茶器の収集にも手を染めている趣味人だ。

 本人曰くお茶好きとしてはライト層だと主張していたが、出張先から人待ち種の茶の木を持ち帰ってオレにプレゼントしてくれるあたり、推しの布教に余念がない。

 茶葉なら飲んでしまえば終わりだけど、木なら一生楽しめるもんな。

 伊東さんは責任もって、末長く茶摘みに来るよう要請したい。

 男性陣では彼ら、広崎さんと伊東さんが『体内倉庫』持ちである。


「未知の飲食物に対する、検査キットや対応スキルをお持ちでしたら、どうぞこちらもお試しください!

 水のボトルは防腐対策で殺菌してから封入してあります。

 トップを捻ることで、蓋が開きます」

 伊東さんは自分のボトルを捻って開けて見せて、また閉めた。


 なんとなく物珍しい視線というのはわかるものだ。

 『体内倉庫』や『造水』が根付いているなら、水の持ち運びも簡単だ。こちらの文化にペットボトル飲料の概念はないのかもしれない。

 

「名簿を交換した通り、あと4人、わたしには一緒に崩落に巻き込まれた供回りがいる。

 彼らは今、他ダンジョンの説明に回してある。いずれ話す機会もあるだろう。

 お二人のことを伺ってもよろしいか?」


「はっ!ホープランプ西方旅団所属、選抜支援部隊隊長、夏草少佐であります!

 お逢いできて光栄です!

 隣は涼風少尉。私の副官です!」

 任務中の軍人さんは、どこもお堅くいらっしゃる。


 会話自体は耳に引っ掛けるとくっつくタイプの翻訳機を提供されたのでスムーズだ。


 先程まではGMがリアルタイムで訳してくれていたが、翻訳機は蓄積データを封入してあるスタンドアローン型だ。

 データのダウンロードが終わって早々のお目見えである。

 まだ語彙の収集は終わってないが取り急ぎにと渡された。


 なんとこちら異界産の翻訳機。魔石を『精製』しないまま組み合わせて魔道具に仕立ててある。

 うーん、異文化。

 彼らがゴージャスな飾り物を沢山つけているのは訳があった。

 魔石を『精製』せずにそのまま使い、魔道具を組み上げる文明を、発展、昇華させたのが由縁である。

 大振りな蝶の形の耳に掛けるタイプの翻訳機は、美しいが慣れてないせいでやや重い。


 夏草少佐は青年から壮年に掛けた年齢の男だ。

 見せて貰った身上書によると35の時に一度転生している。だから外見は20代そこそこなんだろう。

 しかし全身に纏う甲冑のせいで年齢不詳だ。


 対する涼風少尉は、メタリックな水色の全身甲冑だ。フルフェイスのヘルメットは口元だけ開くタイプらしい。

 甲殻はゴツいがヘルメットから覗く口元は白く優雅なので、少尉はひょっとしたら女性なのかもだ。

 出会ったホープランプ人は、みんな2メートルくらい背丈があるし、声もウィンドチャイムか鈴虫かっていう塩梅だから性別が迷子だ。


 名簿にも男女の区別が載ってなくてジェンダーフリー。それとも植物のように雌雄同体だったりするのかもだ。

 詳しく勉強する暇がなかったんで、ここら辺はデータ不足だ。


「そちらの【マザー】の系譜の妹君にも、お伺いしましたが、なにかしら不都合はないでしょうか?

 いえ、状況からしてなにもかもが困った状況なのでしょうが、我らが異界からの訪れを受け入れたのはロケット到来から500年、それ以来のことです。

 まして崩落にあっての事故ならば、他人事ではありません。

 叶う限り合力したいと、政府と民意の意向を受けて私共が派遣されました。

 どうぞ遠慮せずに申し付けください」


「ありがとう。わたしたちのGMが無理を言ったようだ。

 彼女は同族の気安さで【お姉さま】に甘えたようだが、貴方たちを困らせなかっただろうか?」


「いいえ。知識はあっても技術の研鑽でしか作られることのなかったゲートやモニュメントの作製チャンスに、工場の者も喜んでいるようです。


 それにロケット基金の積み立ては貯まるばかりでした。経済を回すためにも存分にお使いください。

 ……本当は、皆さまを我らの都に招待するのが一番だったのですが」


「それはいけない。夏草少佐。

 貴方たちのように、鍛えられた軍人ならば『免疫』もよく働くだろうが、都には位階上げ前の子どももいるだろう。

 万が一でも、わたしたちは、貴方たちの死を呼ぶ悪魔になりたくはない。

 当たり前の用心はするべきだ」

 転生後の逸汎人は、風邪を引いても軽く済むってGMも太鼓判押してたけどさ?

 それって、転生前はヤバいってことだろ?


 やべーのでおやめろください。

 妊婦や子どもへの被害が出たら情緒が死ぬ。

 あ。性別が迷子じゃなくて、妊娠初期の女性を弾く用心のため、男性のみで派遣されているのかも?

 そっちの方がありそうだな。


「残念ですが、そのようで。

 皆さまと我らは、ほぼ食生活は共通であり。五感のうちでも、特に味覚、嗅覚は近いだろうと、頂いた食品の成分データからうちの学者が判断しました。

 異種であっても、人類として共通性が高いので、おそらく病原体もそうだろうと」


「慎重な対応を好ましく思う。都市に帰るのにも関を設け、しばらく時間をあけるのがよろしかろう。

 わたしたちは準備が整い次第、ここより西に居を移そうと思う。現地点では都市に近すぎる」

 健脚さんが1日で来れる距離とかご近所じゃん。

 300キロも離れてないとか、好奇心旺盛なワクワクさんが覗きにくるだろ?


「居を移すにあたり、近くの野良ダンジョンにダンジョンウォーを仕掛け、その成果を貴方たちに提供したい。

 この場を関にすれば、無聊をかこつ慰めになるだろう」


「それ、は」


「同胞への救援の手を感謝する。

 しかし、わたしたちは、これから故郷の道を探るのに膨大な人手を必要とする。

 それらは貴方たちの厚意に甘えれば破綻しよう。

 ダンジョン建造は、合力を願う代価となりえるだろうか?」

 ってことで現地通貨プリーズ。

 使ってない土地とかでも勝手に入植とかしたら不味いし、魔石はいくらあっても数が足りない。

 金でカタがつくならそれにこしたことはないよな。


 オレが界流に流されながら穿ったアンカーは99本。

 幸が打ち込んだ物を合わせると、200本を越えてくる。

 それを目指して建てるタワーはSFの衛星軌道エレベーターの境界版。異界間超長距離をゼロにするワープ回廊だ。

 正直造るのは、メチャ不安。


 【地盤を安定させるのに、ダンジョンを詰めるのは大変でしょうが、理論上は可能です】って言われてもさー。

 突ついてみたら【ゲームして、技術ツリー解放してくださいねー♡】ってことらしいし。


 本当、GM、そういうとこ…!

 持ち得る権限の全力で協力してくれているとわかるから、愚痴ることも出来やしない。


 ちなみにそのダンジョンタワー建てるのは、ごん太な地脈を枯らす勢いで魔力を消費させるそうだ。

 既存の都市の近くとか、争いの元にしかならん。


 ここの野良ダンジョンを潰してダンジョンを建てて、その代価ぶん働き手をゲットしたいなー。ってこと漂流日本メンバーに相談を流しておいて、了承は貰った。


 ホープランプさんたちと積極的にコミュりたい人は、此方のチームに合流するようにという旗立てだ。

 情報はマメに流したい所存。


 なにせダンジョンマスターは活きのいいのがもうひとり。


 報告連絡相談は大事だからな!

 幸にホウレンソウをさせるには、オレの方からもやらにゃならん。


【広場を造った!】

【水玉工場を建てた!】

【ゲートが足りないので、レベリング用に広域迷宮型のダンジョンを建てている!】 

【生存確認出来た者の名簿データを送る!】

【無茶はするな!】


 おまいうなコメントが混じっていたが、幸は猛烈な勢いで、インフラ整備を始めている。

 それと同時に、他の東京グループの漂流メンバーの受け入れにも手を付けていた。

 相変わらず行動が早い。


 あちらがいざという時逃げ込める穴蔵を確保してくれるなら、外貨や資材の獲得はオレのグループのお仕事だ。





 コメント、いいね、評価、誤字報告、感謝です。



 新しい人類のエントリーです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 幸さん、ランナーズハイになってない? 心身ともに少し休ませたほうが良いのでは…… [一言] 現地のお人にダンジョンマスターがいないなら、ダンマス組は正しくマレビトですね 共通する倫理観…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ