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13 セッション1 お嬢さまレベル2



「ダンジョンマスターの名前はどうする?」


「では、カヨコ シジョウで。シジョウは母方の実家の名字なんでしょうね」


「どんどん設定増えるのな」

 初期設定で一番濃いのはヨウル、お前だぞ?

 性別男でお嬢さまで忍者のシノブの前では、所詮タツミやサユリは良いとこのお嬢さまなだけぞ?


「では、可愛い姪っ子の訪れにカヨコさんは大喜びです。

 カヨコさんは一代男爵の娘だったので、中堅のダンジョンマスターになり、爵位を授かった今も尚、気さくで庶民的な女性です。

「まあ、なんて素敵なお嬢さんになったのかしら。叔母さんのこと訪ねてくれて嬉しいわ」

 そう、お手製のオハギでもてなしてくれます」


「「お久し振りです、叔母さま。

 わたくし叔母さまのオハギ大好きなんです。こし餡がなめらかでしっとりしていて。ふふ、幾つでもいけちゃいそう」

 タツミの体力の数値からして良く食べる子でしょうし、親しい相手なのでパクパクいきます」


「サユリはやや緊張した面持ちでご相伴に預かっています」


「同上」


「カヨコさんは美人さんになってもまだまだ子どもね、と相変わらず良く食べる姪の姿ににこにこしていましたが、不意に顔を曇らせます。

「姉さんから詳しく話は聴いたわ。

 なにかあったら頼って頂戴ね。学校のことでも、それ以外でも」

 本当に詳しい話を聴いたのでしょう。

 カヨコさんはお供2人に目配せして、タツミ姫の力になると約束してくれました」


「サユリはほっと息をつきます。仲良くしてくれた叔母であると話だけは聴きましたがお会いするのは初めてでしたので」


「シノブはサユリの反応と合わせますが、こっそり警戒だけはしていると思います。忍者なので」


「「学校は…お勉強は難しいけど、頑張ります。

 その証拠に、口入れ屋さんで、初めてのクエストを紹介してもらいましたのよ。

 あのね、叔母さま。

 わたくしたち明日からダンジョンに行って参りますの。

 お土産はなにがいいかしら?」

 頭がふわふわしているタツミですが、お家騒動のことを軽々しく口に出さない程度の教育は叩き込まれているのでしょう。最近の学校の話を持ち出します」


「「そうね、なら…」と、雫石のお持ち帰りの注文を受けたな。

 雫石のレクチャーもここで受けたとする。

 これで事前準備はいいか?

 では翌日の朝8時だ。

 ニホン橋から伸びる五街道はお上の号令のもと整備されつつある道だ。

 そうそうトラブルもないだろう。

 そんなわけで道中イベントは1回だ。

 代表でヨウル、ダイスを2つ振れ」


「はあい。ラッキー7でした」


「そうか、ラッキー7か」

 おもむろにダイスを幾つも振りだすのやめて欲しいですGM。


「ニホン狼と山道で遭遇だ!

 相手は5匹、うち1匹は見るからに賢そうでリーダー格だ。さあ、どうする?」


「相手は魔物ですか。または襲って来そうですか?」

 エンフィの質問。


「両方とも答えはいいえだ」


「なら油断しないまま、場所を離れるってアリ?」


「魔物や人食い狼ならまだしも、ニホン狼と戦うのは心が痛む!」

 せやね。こちらのニホンでは絶滅しないといいね。

 TRPGの新人さんらの反応が目映い。

 ひとり戦闘態勢脳だったわー。


「そうだな。魔物は普通の動物より強いから、放っておくと生態系が崩壊する。魔物は討伐推奨だが、普通の動物は増えすぎたり人を襲ったりしなければ倒さなくても良い。特に狼は毛皮くらいしかとれんしな。

 では、狼とはお互い適切な距離をとって離れたことにする。

 野良ダンジョンに到着だ。入るか?」


「GM、今の時刻は?」


「11時になったとこだな。戦闘も剥ぎ取りもなしなら、ぴったり3時間だ」


「少し休憩でいいか?」


「ん、リュアルテ疲れた?」


「わたしじゃなくて、お嬢さん達だ。3時間も歩いたなら、疲れるだろう?」


「ああ。リュアルテが教官から剥ぎ取ったプレハブ」

 人聞きが悪い。


「だって気まずくないか。個室があれば、【休憩しました】だけで済むかと」


「りょ。きゃー、シノブさんのエッチー!そっち系の発生が防げるのか。危ないとこだった…!」

 誉めてくれてもいいぞ?


「ではGM。プレハブを出して休憩をしたいのですが、周りの環境はどうでしょうか!」


「ダンジョン前は下草も刈られて整えられているな。

 プレハブぐらいなら置けるだろう。鳥の鳴き声なんて聞こえて長閑なものだ。

 ダンジョン注意の看板と張り巡らされたロープがなければ、うっかり穴を見落としそうだ。

 休憩するなら説明だ。

 ゲーム中、1日6時間睡眠でHPMP全回復だ。逆に少ないとペナルティがつく。

 食事も1日3回以上とらないとペナルティだ。

 タツミは5マ分のオヤツを買っていたから5回分10MP、休憩時のMP回復を許可する」


「プレハブを出しました。前にきた冒険者さんが石で竈とか作ってませんか?」

 GMのダイスが転がる。


「竈はあるようだが、薪はなかった」


「じゃあシノブが木の枝拾ってきます。…乾いていそうなのでいいんすよね?」


「よかったな『探索』があるから薪拾いは自動成功だ。なければ知性で判定だった」


「もっててよかった『探索』さん!」

 シノブの知性はタツミよりは高いけど。……そうか、このチーム賢いのサユリだけだ。うわ、怖い。


「保存食を1消費して水はどうする?」


「タツミが『造水』で出しました。所持品の小鍋でお湯を沸かして、白湯を配りました。休憩し終わったら、プレハブ等は仕舞います」


「所持後はサユリが『洗浄』します!」


「あ、竈に火を着けたのはシノブの『点火』っす」


「生活スキルはバラけさせたんだな。それぞれMP-1だ。

 MPは精神×2の数字となる」


「スキルの所持枠がキツいですGM!」

 サユリは『ライト』も持っているから尚更だ。


「お前さんらが頑張ってスキル石を出荷するようになったらルールブックの改定があるかもな?」


「どれだけ未来のはなしっすか?!」

 

「さて、地図はこちらを用意した」

 教官は喉奥で笑ってスルーだ。


「双六?…の割には命令が書いてありませんが」


「マスのコマンドはこちらで管理しているから安心してくれ。

 双六をゴールしたら、キチンとダンジョン清掃の仕事は済ませたとする。ダイスを1度振るごとに30分経過だ。

 3人で順番にダイスを振ってくれ」


「んじゃまあ、1番手いっきまーす!って悪い、1だ」


「おっと、幸運イベントだな。


 シノブは地面にキラリと光る指輪を発見した!

 内側に M to J と刻印されている。

 ダイヤモンドの輝きにうっとりしてしまいそうだ。


 余所の世界の欠片が、野良ダンジョンではこうして見つかることがある」


「拾っていいものなの?!呪われない?!」


「ダンジョンドロップには、触れただけで呪われるケースもあるが、見るからに危険だぞ、その手のものは。気になるなら、知性判定してみるか。各々ダイスを2つ振ってくれ」


「7です!」「8でした」「6っす」


「知性+ダイス数だ。20越えてるのは…サユリだけか。

 ではサユリはその指輪から、魔力の気配を感じ取れなかった。

 石は小さいが、非常に高い技術で磨かれたものだとわかる。

 どんなに低く見積もっても1千5百マほどはするだろう。

 ということで換金アイテムだ。チーム資金の足しにしてくれ。

 次行くぞ」


「はい…4です!」


「ハズレだな。


 魔物の気配は此処にはない。


 次」


「4です」


「通路を曲がると小部屋がある。鍵は掛かっていない。どうする?」


「部屋の外から中の気配を伺う場合、どうしますか?」


「お前さんらのスキルなら『探索』。これは20+1ダイスの数字がある。

 それが失敗したなら、能力値で振れることもある。これはシナリオやその時のGM判断次第だな。

 専門の知識や技能がなくても、一般教養と持ち前のセンスでなんとかしようって試みだ。

 ただ技能もないのに挑戦してダイスで1、1を出したらファンブルだ。

 反面、6、6を出したらクリティカルになる。

 まだ出てないがその内出るだろうから今言っておく。

 ファンブルは大失敗、基本悪いことしか起きない。

 クリティカルは大成功。なにかいいことが起きる」

 知ってる。固定値は裏切らない。


「前の部屋に、シノブは『探索』します。…3」

「タツミはいつでもシノブを庇えるよう身構えます」

 待って待って、庇わせて。


「物音が聞こえる。1匹2匹…。おそらく2匹だ。

 気配からして、先ほど見かけた狼ぐらいの大きさだろうか。

 かすかな獣臭が、鼻をつく。

 ドアは僅かに開かれており、罠の類いはなさそうだ。

 さあ、どうする?」


「一番前はタツミ姫っしょ?

 その横がサユリちゃんで、シノブは後ろ?」


「盾の技能で1人までは庇えるから、シノブ嬢はタツミの傍にいて欲しい」


「先行を取れるスキルを発動したり、エンチャントをする時間のようだが、私たちにはないな」


「じゃあ扉はタツミ姫の傍でシノブが開ける。GMそういうことで」


「小部屋は下草が生い茂った草原ルームだった。

 2匹のウサギがのんびり草を食んでいる。

 思わず気が抜けそうになる牧歌的な光景だ。

 ただし、このウサギでかい、そして丸い。

 うす茶色の体毛は、フカフカしてまあるくて。そうだ、蒸したての饅頭にそっくりではないか?


 饅頭ウサギ2羽があらわれた!

 ウサギはノンアクティブだからプレイヤー先行だ。事前に情報収集していたので、システムデータを公開する。


 饅頭ウサギ

 HP45 MPスキルを使う報告なし。

 防御数20(毛皮)+45

 攻撃数3+1×(ダイス+ダイス)


 以上だ」


「「丸々として、美味しそうですわね」タツミはやる気満々です。

 タツミはふわふわした姫ですが、心に棚があります。

 魔物のウサギは愛でるものではなく、食べるものです」


「「タツミさま、大変です。わたくしたち解体用のお道具を忘れてしまいましたわ!」サユリは嘆きます」


「「仕留めたらすぐ『体内倉庫』に仕舞っておけばいいのではないでしょうか?」シノブはクールに指摘します」


「戦闘後半、タツミも盾で殴りにいってもいいか?」

「ああ!」

「りょ」


「行動順はサユリ、タツミ、シノブ、ウサギA、ウサギBの順だ。HPは体力×5、物理での攻撃力はまず体力÷4此処で小数点は切り捨てだからサユリは4だな。4+武器の数字で。(4+5)×(ダイス+ダイス)の計算になる」


「5、5でしたので90です」


「ウサギは毛皮に20ポイントの防御数がある。HPは9×5で45、これに足して65だ。オーバーキルだな。

 ウサギAはサユリ嬢の鮮やかな槍捌きになす術もなく星になった」


「タツミは盾術より『庇う』で指定はシノブ嬢です」


「シノブの攻撃は、(3+3)×(1+4)=30でした」


「防御数から20引いて合計10のダメージだ」


「しょぼっ」


「ウサギBの攻撃だ。対象は……シノブ嬢だな。

 タツミ姫が庇っているので、代わりに受ける。

 タツミ姫の防御数は10×(盾+3靴+2)=50これに23×5=115を足して165。レベル1の数字じゃねぇな。

 3+1×(5+2)=28の饅頭ウサギの攻撃を安定して受け止める。

 タツミ姫はダメージを受けていない。

 2ターン目だ、サユリ嬢」


「はい。9×(2、5)=63。2ポイント足りませんでした!」


「タツミは盾で殴ります(1、4)です」


「体力÷4=5。盾の攻撃数は2で5+2で7。7×5=35だ。35-20=15、よし、仕留めたな。

 初戦闘クリアだ。おめでとう。

 一応GMの方で戦闘時の計算はするが、自分たちでもチェックはしてくれ。

 うっかりミスは良くあるからな。とんでもないミスされて、全滅とかな、悲しいからな」





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